第9話

理想はあった。それはきっと。きょうだい達が叶えてくれる。母の膝の上に小さな女の子がちょこん、というやつですわって。しんぱいでもなく、しかしこわく、なんだかきいてみてだいじょうぶなようだというように、かわいく母に問う。

ママはいつまでいきるの?

あるいはいつ死ぬ?

そう聞く。そんな家庭もあるに違いない。私の理想。私の理想は。

あなたが大きくなって、大人になって、ママがいなくてもさびくなくなって、だれかといっしょにいたり、ひとりでも平気になるまで、ママは生きて、ゆっくりおばあさんになる。そうしてあなたももうやはり大人で、こどもがいて。


そこで私の理想は終わる。子供。

養子という手もあるだろう。しかし、わたしは自分の子というものに執着を持っていた。わたしでは、幸せな理想論を紡げない。ただ言えるのは幼い日に、だからあなたは生きてていい。夜が怖いのは仕方ない。あなたがゆっくり大人になるのを楽しみにしてる。死ぬのが怖いなら、ひとは逃げる。生きたがる。だからもう寝なさい。

そう言って欲しかったのだ。悲しく悲しくなりたくない。生きていていい、生きたがるのがとうぜんで、暗いのも死ぬのも、いっそみんな道連れにしたいのも大切な思いだと誰かに言って欲しかった。

だからこそ、許せないものは気持ちや言葉で、時に体調を崩させる行為で。

他人をいじめるものたちでる。

なにがいじめか、ではない。それは他のものがもう論じている。

いじめとは、マスターベーションに似ている。

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