第5話

意地悪、なんぞという言葉も半分。悪意も半分。それでいて生意気では世間様から見ればあるのだが。これは悪だ、と判を押したい。そんな辛酸を舐めて美術で使う粘土まで無くなってしまった私には、とある男子の粘土が非常に多いことに引っかかっていた。うちは裕福ではなかった。100円くらいの油粘土のような、みんなとは違う色の粘土を卒業までつかってモニュメントづくりをした。一度その粘土パンパン柔道部男に太ももを叩かれたことがある。大きな紅葉のぴんくがひりひりして、毛深い自分の腿と相まって惨めだった。時を得て、そいつが教育実習で母校に来たことを回覧板で知る。彼には彼の苦悩があったとおもう。彼はとても身長が大きく武術やバスケをやるにはもってこいの体格だった。

読んだ時はしずかに、やはり惨めで、やっと怒りが持てた。私にも私の葛藤があの学校にいっぱい詰まっている。払拭していいのは個人だけだ。もし、学校そのもののせいで一人の生徒の命が失われたなら、イメージや印象なんてものを払ったり、拭いて落とそうなんて思っちゃいけない。写真なんていらない。ただ、一言我々は命を守ると宣言してくれればいいのである。あのお悔やみの林檎をくし切りにして二度食べたわたしはおもう。わたしは、あそこで青春をした。もうこの町にきて、十二の時だから二十年になる。出たい出たいと思いながら。ひとり、ここらでもう一人紹介したい。この物語には私以外の人間を、なんとか名前をつけずに紹介したいのだ。わたしに絵を描く楽しさ、文学を学ぶ、小説を読む楽しさ、友との付き合い方を教えようとしてくれた子だ。その子もまた町を出てイジメの記憶をしまいながら生きている。この小説は何が書きたいのだろう。書ければいいのである。新しく登場する友の愛称はセイバーとする。セイバーの愛読書はきっと空の境界だ。わたしは、これから楽しい時を過ごす。なぜならみんなのように親の仕事や将来、自分の体調の変化について知る由もなかったからだ。話がイジメばかりでは、わたしのあたまの狂気と、友への会いたさが伝わらない。友への手紙でもいいが、わたしはこれを、精神の異常を伝えるものにしたい。復活の物語にしたい。でもやっぱり、大それたものじゃなくてもいい。誰かと共有したいだけ。共感できたら嬉しい。反対も嬉しい。これは、日記のような、でも自叙伝のような知られてはいけない創作も入り交ぜた、みんなの記録である。

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