第百三十話 VSビノータス 友を救え!

「貴様、どこの者だ。我が部下の者ではないな?」

「いえ、ここの兵士です。ビノータス様」

「そんなはずはない。この俺は部下の顔を全部覚えている。

一応な。それに定時連絡は十五分に一度だ。一応な。

それから俺を呼ぶときは

ビノータス様ではなく、崇高なるビノータス様と呼べと伝えてある。絶対にだ」

「ちっ、下らねえ。本当に無駄が多いな。見張りの統率も取れないなら、顔なんか

覚えても意味ねーだろ」

「そいつらにはわからんのだよ。俺の崇高さがね」


 崇高ねえ……そりゃ気高く尊いと思われる奴じゃなきゃそうは思ってもらえないだろ。

 こいつのやってることはただの不信用だ。

 矛盾してることに気づかないもんかね。


「まぁいいや。剣展開」


 そういうとビノータスに剣展開を放つ。

 奴は杖を構えて巨大な盾を地面から出現させて防いだ。


「アイアンクラッシャー」


 その盾に向けてアイアンクラッシャーを放つ。

 盾の強度を確かめる目的だが、貫通もしないし押し出しも出来ない。

 妖術の盾か。厄介だな。


「妖矢の必中・砕」

 

 俺に向けて四本の赤い矢が飛来する。


「妖楼!」

「妖斬の必中・爆」


 避けた側から妖術で斬撃を放ってくる……が、速度は遅い。

かわせ……なっ! 

 背中に四本の矢が刺さり、激痛が走る。

 続いた斬撃も受けてしまい、その斬撃が爆発して吹っ飛んだ。


「がっ……くそっ、誘導矢か」

「その程度の攻撃を食らうとは、雑魚め」


 急ぎ幻薬を使い回復する。威力は大した事なかったが、爆発で吹っ飛ばされた時

に、打ちどころが悪く肩が外れたのを治す。


 メルザがいないから目の力は使えない。大がかりな技を今使うべきではない。

 ここは敵地。時間もかけられない。

 一か八かだな。


「妖矢の必中・破」

「土潜り」


 奴が技を使用したタイミングで土潜りを発動。

 これはピーグシャークの技だ。土の中に少し潜り移動出来る。

 そのまま奴の裏手に回る。

 奴の矢は俺を追ってくるので居場所はばれるが……出たタイミングで

姿を消した。


「な!? いないだと?」


 追ってきた矢は正確に俺を追っている。奴にグリーンオクトパス

のスミを吹きかけた! 


「ぐあ、目が! おのれ!」


 そのタイミングで飛来した矢を奴にぶちあててやった。


「ぐああーーーーー」


 これで大分時間稼げるだろ。一目散に逃げて城塞から脱出する。

 どうにかなった。少し予定とは狂ったが、二人を連れ出す事に成功した。

 だが……城塞を出てしばらくすると、兵士に囲まれた。

 おおよそ五十。やはりあいつに見つかったのが致命的だったか。

 プラネットフューリーを使えば半数はやれる。

 だが意識を失う可能性もまだある。どうする……。

 囲まれた状態はまずい。とりあえずバネジャンプと蛇佩楯を

生かした跳躍で中央から脱出。

 着地と同時に幻薬を使えばどうにか逃げれる……といいな。


 ――だが、それらの心配は無駄に終わった。


「ベルローゼさん! 無事だったんですね!」

「今援護する。妖星双雷の術」


 そう言うと、ベルローゼさんは以前見せた扇範囲の術を

二つ分放って見せる。チートだわそれは。

 兵士が一気に吹き飛び、ほぼ散り散りになる。


「バカな! あいつは星黒のベルローゼ? なぜこんな場所に!」

「逃げろ! 俺達のかなう相手じゃねえ!」

「逃がすか。黒星の土手」


 地面から真っ黒い手が出てきて残った兵士を地中に引きずり込んだ。

 めっちゃ怖い。味方でよかった。

 着地とともに激痛が走ったが、急いで幻薬を使用してベルローゼさんの許へ向かう。


「リルとサラは助けました! 急いでここから離れましょう!」

「……よくやった。星黒影の流れ星」


 ベルローゼさんは俺をつかみ、影から流れ星が移動するかの如く、暗い地面を

瞬速で移動する。

 主人公が持つべき能力に、ため息をつきながら身を預けた。

 助かった……あのままならどうなっていたことか。

 ベルローゼさんも生きててくれて本当に良かった。

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