第百九話 五人洞窟 その三

 のっしのっしと歩いてくるメルザらしきもの。

 いやあれはメルザではない! マルザだ! 

 俺たちは全員フリーズして動けない。


「あ、あのーメルザさん。何がありましたの? その……随分と

変わられましたけれど」

「おー、うまいものーたくさーんあったーぞー」

「うまい物って、そんなの食べただけじゃそうはならないだろう……」

「そうね。よっぽど食べたところでそうはならないと思うわ……」

「あら。でもこのバカ弟子もちょっと愛嬌があって可愛いわね」


 確かにそうだが、できればいつものメルザがいいな……なんせこのままだと

マルザに改名しないといけない。

あ、着ているワンピースが悲鳴を上げているのが俺には聞こえる! 


「な、なぁマル……じゃなかったメルザ。それだと服がきついだろ? やっぱり

元の体系の方が……なぁ?」

「なーにー? ルインはー、瘦せてーなーいとー、だめかー?」

「いや、そうじゃなくてキャラがだな……ええい、走れー! メルザ! 喰った分

走れー!」


 メルザを走らせようとしたが、ノッシノッシと歩いていてしばらくして

横になってしまった。

 そしてメルザは眠ってしまう。

 お団子キャラ三鉄則みたいな行動じゃないか。


「これもトラップで発動したものなんじゃないでしょうか? 

そうであれば時間経過で戻ると思いますわ」

「そうかもな。少しここで休憩しよう。メルザも寝ちゃったし」

「そ、そうね。よ、よーしこの後も頑張るわよ!」

「ライラロさんはまだ何もしてないでしょう!」


 しゅるしゅると小さくなるライラロさん。

 トラブルメーカーは少し反省してなさい! 


「そういえばお宝はどうだった? 俺のトコは紫電の宝箱っていう

レア箱があったけど」

「こちらはいくつかありましたわ。ルーが欲しがったものだけ

ルーに身に着けましたが、それ以外は皆さんでわけましょうね」

「こっちで見つけたのはほとんど落っこちてったよ!」

「私の方は何もなかったわね。あ、厄介な気配がしたんだけど

ミミックだったからスルーした箱だけはあったわ。それ以外はスイッチだけね」


 そのルートにファナたちがいたら……いやレウスさんが近づいて

友達挨拶していたか。

 レウスさんをちらりと見ると、それに気づいてサムズアップしている。


「メルザのところは……あの感じだと何もなしか」

「ぱみゅ……」

「ああ、そう気を落とすなって。紫電が二個、赤雷が一、通常宝箱

が一ってとこだろう。十分だ」


 そんなにアイテムがあっても、パモがいないと持ちきれないし。

 しかし待っててもマルザ……いやメルザは起きない。

 時間もないし先に行くか。


「済まないけどファナ。俺の封印へ戻ってくれ。レウスさんはメルザを運べるか?」

「任せととけ。重そうだけどな。平気だ。な?」


 ファナはワーム化して俺の蛇籠手に入る。


「おーいメルザ。起きて進むぞー」

「うーん、アップルパイ……」

「あ、フェルドナージュ様だ」


 メルザが慌てて飛び起きて平伏する。

 こないだの謁見で余程恥ずかしかったのか、それともフェルドナージュ様への

憧れなのか。

 フェルドナージュ様の言葉を出すと、びくっとして面白い。


「あ、あぇ……失礼しました?」

「おーい先に進むぞメルザ」


 メルザは目をごしごしさせて自分の身体をまじまじとみる。


「俺様、こんなにでかかったっけー?」


 気付いてないのか。いや自分の身体って存外気付かないものか。


「さて、最奥はどうなってるかな」

「油断は禁物ですわね」

「まぁ、私がいるから大丈夫よ」

「俺様、戦えるかなぁ……」


 五人戦闘であれば結構な数の敵か、かなり強力な個体がいてもおかしくない。

 慎重に進むとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る