第百八話 五人専用洞窟 その二

 ニーメとファナ、レウスさんパート――――


「……思ってたより全然危ない洞窟ね。

突然床が抜けたり壁からモンスターが透過してきたり」

「けど、宝箱も結構あったよ。最初の一箱以外罠だったのか全部落っこちていったけど」

「拾いに行こうとしたけど無かったわ。無理だったわー! 

きっとはずれだわ、あれ、な?」


 レウスさんが話していると、天井からヒューんと青いスライムが降ってくる。


「なんなの、もう!」


 ファナはニーメを庇うようにして、二本のナイフでスライムと戦い始めた。




 ミリルとルーパート――――


「足場が脆かったですが、崩れてしまいましたね」

「るぴぃー」

「あら、こちらにも宝箱が。素敵な装飾ですわね。

中身の確認は後にして、全部持ってもらえるかしら、ルー」


「ルイ、ルイー!」


 ミリルはルーに宝箱から入手した物を預けて先を急いだ。

 しばらく進むと出口らしき場所に着いた。


「あら? もう着いてしまいましたわ。モンスターなどは会いませんでしたわね。

せっかくルーの修行になると思ったのですが」

「ルイー……」

「皆さんはまだのようです。ここでお待ちしましょう」




 メルザとパモパート――――


「いやー、うまかったな。さっきの肉! いいのかパモ、喰わなくて」

「ぱ、ぱみゅー! ぱみゅ!」

「え、先を急ぐぞって? だいじょぶだ、結構時間かかりそうだしよ。

おっと次の肉は……あいつも美味そうだ! しかも一、二、三……わんさか

いるぞ! 燃刃斗!」


 メルザとパモはひたすら肉を焼き切り、メルザはそれを平らげていた。




 ライラロパート――――


「何なのよここ。箱なんてどこにもないじゃないの。

結局あったスイッチ全部押してるだけで、奥まで来ちゃったじゃない。

つまんないの。まぁいいわ。他のところに沢山あったのかもしれないわね」


 ライラロも奥の扉を開けた。ミリルがすでに到着していた。


「あら、早いわね」

「ええ、私の道は敵がいなかったので。途中道が崩れましたけどそれ以外は特には」

「私の部屋はスイッチだらけだったわ。全部踏んだけど」



 二人がそういった話をしている頃。


 ルインパート――――


「うおおおおおおおおお、まじでなんなんだこの洞窟! 

最難関にも程があるだろ!」


 どうにか天井の壁に引っ付いて下の水が引くのを待つルイン。

 しかも水に合わせて岩やらモンスターやらがすいすい流れていく。

 どうみてもモンスターは押し流されている。


「あぶねぇ。どんな仕掛けだよ。モンスター倒すと発動する

ブービートラップタイプか?」


 そのまましばらく張り付いていると、今度は無数の矢が地面いっぱいに

飛び交っている。

 まともに食らえば死ねる。更にまた水攻めがきた。


 だいぶ時間をおいて、ぴたりとそれらが止まったので地上に降りた。


 後ろを振り返ると、モンスターたちがあられもない姿で倒れている。

 両手を重ねて冥福を祈っておいた。

 ついでに流されてきた宝箱が紫電の宝箱でちょっと驚く。


 中身だけがさっと取って、先を急ぐことにした。

 こんなモンスターごと巻き込んで攻撃してくる洞窟、冗談じゃない。

 メルザたちも心配だし、さっさと進もう。



 ニーメとファナ、レウスさんパート――――


「いやー、まじ危なかったな。なぁ?」

「本当よ。何なのこの洞窟。これ以上危険なら引き返そう、ニーメ」

「けどお姉ちゃん。もうちょっとみたい。ヘンテコな鉱石が手に入ったのは

運が良かったけど」


 ニーメはふわふわと浮かぶ鉱石を見せる。 

 手に持たずともちょっと浮いている意味のわからない鉱石だった。

 浮力と重力双方を発しているような感じだ。


「ニーメの足下が崩れて落ちた時は、冷や汗がでたわ。ありがとうおじさん」

「いいってことよ。べっぴんさん。あんたらは俺の友達だ。な? な?」

「え、ええそうね。私ももうルインの妖獣のようなものだしね……うふ」

「え? おねえちゃん何か言った?」

「何でもないわ。先へ急ぎましょう」


 しばらく歩き、ファナたちもようやく奥の扉までたどり着いた。

 時を同じくしてルインも息切れしながら辿り着く。


「はぁ……はぁ……しんどかった。皆、大丈夫か? 凶悪な洞窟だな」

「ええ、本当に。罠だらけだったわね」

「わたくしの道は当たりだったのかしら? 宝箱しかありませんでしたわ」

「あら、私の道はスイッチだけよ。全部片っ端から押してやったわよ。

何も起こらないけど。ゴーとかドバーとか言う音だけ。かかって来いってなものよね」


 それを聞いて俺とファナの動きがピタリと止まった。

 そしてガルドラ山脈の嫌な思い出が走馬灯のようによぎる。

 この話は語られていない秘話である。


「ライラロさん。そのボタンのトラップ……多分全部俺たちの部屋に来たぞ」

「だから突然あんなに連続で罠が発動したのね。あれ完全にトラウマものよ」

「楽しかったけど、怖かったなー。宝箱、みんな落っこちてったよ!」

「えーっと、そのー。私、用事思い出しちゃったからー……」


 むんずとライラロさんの首根っこを抑える。


「どうしてもうちょっと思慮深く行動できないんですか! あなたは!」

「えーんごめんなさーーーーーーーーい」


 そうこうしているうちに、メルザが到着予定の扉が開いた。


「みーんなーーーぁ、おーまたせーーーー」

「ぱ、ぱみゅ……」


 パモが申し訳なさそうにしている。

 そこにはまるっとマルキャラになったメルザがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る