第百四話 旅のための支度を

 俺たちは皇国ベレッタへ向かう。リルとサラに会うために。

 フェルドナージュ様より輸送隊としての任務を拝命した。

 その配下、ベルローゼと共に向かう予定だ。


 準備期間はたったの二日。

 早速武器防具屋の、フォモルコデックスへと舞い戻った。


「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。リル様とサラ様には

お会いできましたので?」

「いえ。これから輸送の任務でベレッタまでベルローゼさんと向かう事になりました。

そこで二人にどうにか落ち合いたくて」

「ひぇ!? 妖貴戦の……黒星ベルローゼ様ですと!?」


 やっぱりやばい妖魔さんだよね、あの方って。


「それで、お金を頂戴したので装備を変えたいのですが……

妖魔の装備以外もあったりしますか?」

「うちは妖魔装備専門なんで、それ以外はちょっと。

妖兵用の装備以外で購入されるってことであってますかい?」

「ええと、特に投擲系、遠距離武器か遠距離攻撃できるような

物とかないですか?」


 店主フォモルは思案する。


「本来はダメなんですがね。リル様とサラ様に会いに行くってことは

お二人共良くない状態ってことですよね。

あのお二人には世話になってるんで、こいつを使ってくだせぇ」

「これは?」


小さい剣が六本装飾でついている腕輪だ。


「あのわら人形に向けて 手をかざして剣展開と。攻撃するイメージを持って

みてくだせぇ」


 言われた通りにわらに向けて唱えた。


「剣展開」


 すると……腕輪の剣が脱却されて藁人形に突き刺さった! 

 まさに俺が求めるような装備だ。だがこれは……かなりいいものだ。


「本当にいいんですか、これ」

「ええ、使ってやってくだせぇ。リル様とサラ様の元気なお姿が見れなければ、フェル

ドナージュ様も気を落としてしまわれる。俺らにとって出来る事は、陰ながら

支えるだけでさぁ。あとはそちらのお金で装備を一新しときやす」

「ありがとうございます。とても助かります」


 装備を一新してひとまずルーンの領域へ戻ることにした。

 リルとサラに渡す予定だったリンゴが無駄になってしまったな。

 フォモルさんに渡しておくことにした。


「二人共ただいま。」

「おかえり。話していた二人には会えたのかしら?」


 俺は町で何があったのかを説明した。

 ファナが驚いた表情を浮かべている。


「まさか、妖魔の国で戦争が? 地上も地底も大変なのね」

「ああ、それで俺たちはリルとサラに会うために、補給係として

敵国まで行く予定だ。潜入もすると思う。かなり……危険だ」

「俺様は絶対行く。もう二度とルインと離れたくねぇ」

「あら、お熱いわね。私もそうしたいんだけどなぁ……」


 メルザからボンっと湯気があがる。

 自爆体質な我が主だ。


「べ、別に違、ちがわねぇけどよ。もう嫌なんだよ。あんな苦しいのは」

「ああ、分かってる。この二日で念入りに準備しよう。

それとファナの足だが、ちょっと試してみたいことがある」

「えっ? この義足でもかなり凄いのに何かあるの?」

「ファナは変身できるよな。もしかしたらファナもこの籠手に封印できないか

……って思ってさ」

「そうすると、もしかして私でも役に立てる……?」

「ああ。この封印に関してもいろいろ試してみたいんだ」

「わかった。先にお風呂? に入ってもいいかしら」

「あ、ああ。メルザも連れて行ってくれ」


 そう言うと、二人とも温泉に向かっていった。俺も後で入ろう。

 その前に……「ニーメ、これが妖魔鉄鉱。こっちがフェルス霊銀。それから

これがナージ鉱石だ。扱い方の本はこれだが、読めるか?」

「うん、ありがとう。研究してみるね。落ち着いたらち着いたらこの辺りの

採取場所にも行ってみたいな」

「勿論だ。一緒に行こう。ごめんな、外に出してやれなくて」

「ううん。ここにはカカシもマーナもいるから」

「そうだったな。さぁ俺たちも風呂へ入りに行くぞ!」


ああ……ついに念願の温泉が俺を待っている! 

 ――しかし、温泉場についた俺は膝から崩れ落ちた。


「なんで湯舟が一つなんですかね」

「最初からこうだったわよ。ちゃんと布を巻いているから気にしないで」

「ちょっと恥ずかしいけど、みんなでこうして入るのも楽しーな!」

「あーー! なんで混浴しかないんだーー!」


 仕方なく混浴風呂に入り、俺たちは全身を温めた。

 風呂がある……ただそれだけで、感じる世界が活気に満ち溢れるようだ。

 ……と大げさに思うのは置いておき、ここからは入手したアイテムの確認をしないと

な……妖魔装備はとりあえずいいとして、レウスさんに渡されたものをアナライズしてみる。



 冷気凝縮キューブ【アーティファクト】


 物体を凍結して保管するためのアイテム

 特定のものを九つまで凍らせて保管ができる

 入れた物は劣化しないうえ、時間も経過しない

 アーティファクトのため壊れることがない


 スカーサハのナイフ(武芸の心得付与、豊富な経験付与、指導付与)

【レジェンダリーウェポン】


 伝説の武芸者が身に着けていたとされるナイフ

 切れ味としては申し分ないが指導目的で使用されたとされる

 扱いが悪いと壊れる可能性がある



 プロセフィーリング(祈りの癒し付与、知識上昇付与)【モアユニークアイテム】


 神への祈りを成就させるためにつくられたとされる指輪

 内側は綺麗に装飾されており職人の腕が光る

 扱いが悪いと壊れることがある


 メインズの腰布(燃斗付与II、燃臥斗付与I幻水耐性付与II)

【マジックアイテム】


 腰からぶらさげる短い腰布

 使用者は細身のものにかぎられるが

 火の扱いが上手になると伝わっている

 扱いが悪いと壊れる


 ……以上の物がレウスさんから渡された物だった。


 レウスさん、全然はずれじゃありませんけど? 

 

 特に冷気凝縮キューブなんて、師匠がパモを動かす時に

貸してくれたものの上位互換っぽいものじゃないか。

 しかも回復出来そうな指輪まであるし。

 分配はあとにしてファナを牧場で待つとしよう。

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