第百二話 メルザとルインの領域命名

 ――改めて新しく生まれ変わった領域を見てまわる。


 泉を最南として道は縦に広く真っすぐと北へ伸びている。

 枝分かれで順番に左右に道が分かれている。


 一本目の道、右手に牧場。左手に畑。

 二本目の道、右手に温泉。左手に宿舎。

 三本目の道、右手と左手に個室。


 そして奥中央に穴の空いた巨大な木があり、食事処となっている。

 さらに巨木の裏側にメルザの領域があったスペース。

 穴が幾つかと畑、そして泉がある。形はそのままだ。


「すっげーーーー広いな! ここが俺様たちの領域か」

「わー、こんなに広いなんて! なんか水場から湯気がでてるよ?」

「これだけ広いと、私たちだけじゃ持て余しちゃうわね」

「ここにも畑があるのは嬉しいのう」


 ファナが言うのもごもっともだ。

 まだここに入れる人物は少ないが、皆びっくりするだろうな。 

 領域を訪れたら丸替わりしてるわけだし。


「俺たちの領域の名前を決めよう。メルザ、決めてくれ」

「俺様が? 嫌だよ?」

「よし、たのん……え?」

「だって俺様の領域の方が小いせーしよー。ここはルインが決めるべきだろ?」

「メルザの名付けの才能を考えると、ちょっとね……」

「僕もお兄ちゃんが付けてくれた名前がかっこよくて好きだな。

メドレスとか、フラタニティとかさ!」


 ああ、ニーメの目がきらきらしている。わかったよ。うーん。


「じゃあ メルザとルインの領域。俺たちのルからとって」

「とって!?」

「ルーンの領域」

「ルーンの領域! かっこいい!」


 こいつはルーン文字のルーンじゃない。

 アビ属ハシグロアビの別名ルーン。

 燃えるような赤く鋭い眼を持っている鳥。

 俺たちにぴったりだ。みんなには赤い眼の鳥とだけ伝えた。


「ルインにぴったりだな。さすがは俺様の子分だ」

「いいんじゃない。男苦しいのより全然素敵よ」

「その鳥がどんな形なのか教えてほしいな。僕看板を造るよ!」

「ああ、ニーメ。後で詳しく教えるよ。ただし……三人とも。

いや、他の仲間も含めて一つ、やっておいた方がいい勉学があります、いいですかー皆さん」

「べんがく?喰えるのか、それ」

「久しぶりに聞いたな、それ……」


 俺はあまり見ないようにしていたが、みんな算術が出来ていない。

 最低限の算術ができないと、今後苦労するだろう。

 なので俺は算術を少し教えることにした。

 

 特にニーメは細かい数値の計算などが必要になる。

 年頃の子に算術は絶対必要だろう。

 字の読み書きと算術が出来れば、後は勉強なんて興味次第と思うのだが。


「勉学に関してはもう少し時間がかかるが、機会は必ず用意する。

さて、妖魔の国に俺が世話になった奴らに会いに行ってくるか。

誰か一緒に行くか?」

「勿論俺様は行く。けど俺様とルインだけの方がいいんじゃないか? 目立つだろ?」

「ああ、それもそうか。じゃあファナたちは少し休んでいてくれ。

カカシ。リンゴをもらっていくぞ」


 そう言うと、リンゴを幾つか拝借して、泉からフェルス皇国へメルザと向かう。


 ――泉から出ると、メルザは改めて辺りを見回す。遠目には青銀色の美しい城が見える。

 人々は不思議な恰好をしており、美男美女ばかりだ。

 見るもの全てが新しく、そして美しい。

 地上も美しいのだが、こんな幻想的な世界ではない。


「まずはリルの家に行こう。変わった家に住んでるんだ」

「わかった。連れてってくれ」


 俺たちはリルの家に向けて、直ぐに歩き始めた。

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