第六章 強くなる

第百一話 領域拡張と妖魔の国

 俺たちはついに! ……メルザの領域へ帰ってこなかった。


「ぱみゅ?」

「あれ? なんでここに?」

「どこだ、ここ? 泉に飛び込んだよな。チューしながらじゃいけないのか? 

もっかいしながら入れば戻るか?」

「おいメルザ。そのセリフだとライラロさんを思い出す」

「あ……」


 メルザはぼんっと赤くなる……やれやれ。

 俺たちがいるのは妖魔の国の領域への泉前だ。

 あっちからこっちは繋がらないって聞いていたのに何故だ? 

 ……時計の影響か!? 

 あれは領域と領域を結ぶものなんじゃないのか? 

 泉と泉を結んじゃったけど。


「ごめんメルザ。もっかい同じのやっぱやるわ」

「え? えーーっ!」


 俺はもう一度メルザを連れてキスをしながらダイブした。

 大切なシチュエーションを粉々に打ち砕いた。

 そうすると、やはりジャンカの森の泉に出る。


「メルザ、もっかい!」


 メルザパンチが飛んできたので自粛することにした。


「もしかしたらだが、メルザを連れて入ると俺の方の領域に行くんじゃないかな。

メルザ、今度はメルザが俺を連れて飛び込んでみてくれ」

「やってみる」


 そう言うとメルザは俺の手をむんずとつかんで泉に飛び込んだ。

 乱暴です。我が主は乱暴です! 

 水中で「にははっ」と笑うメルザが見えた。わざとだ! 

 ――すると、やはりメルザの領域へと辿り着いた。


 俺の方の領域に直接行けなかったのは、妖魔の泉からメルザがまだ一度も

行った事がないからだろうか? 

 

 けれど、さっきキスしながら飛び込んだよな。俺がイメージしてないからか。

 さて……「みんな! ただいま! 心配かけてごめん!」

 そう言うと、ファナ、ニーメ、そしてカカシもやってきた。


「ファナ、足はどうだ? 大丈夫か? すまない、気を失ってる間に

いなくなってしまって」

「ううん、よかった……ルイン、よかったよ。ずっとお礼が言いたくて。

助けてくれてありがとう。私一生かけて恩返しするから」

「何言ってんだ。ファナはもう、俺たちの家族だろ」

「そうだよお姉ちゃん。僕らは親分の家族なんだから!」


 嬉しそうに話すニーメを撫でる。

 相変わらずいい子だな。


「主よ。アップルなる実がなったようじゃ。食べるかの」


 おお、忘れていた! リンゴ! 夢にまで見たリンゴ! 

 畑に行くとささっと上ってリンゴをみんなに渡した。

 直ぐにかぶりつく我が主。果物には目がないんだろうな。


「へー、スッパムより甘いな。うまいぞこれ!」

「ああ、いい味だ。最高だな」

「そうね。こんなにおいしい果物があるなんて」

「うん。いくらでも食べれるね!」


 みんなで美味しく食べると、管理してくれているカカシも満足そうだった。


「さて、大事な話がある。このメルザの領域は手狭だ。

人もこれからいっぱいくるかもしれない。なので、拡張しまーす」

「え? そんなこと出来るの?」

「出来るけど、一つ言っとかないといけないな。

俺たちのアジトの領域は、森じゃなくて妖魔の住む地城周辺の

一角となる。さっき確認したが、こちらの世界にもちゃんと

戻ってこれる。つまり俺たちは……」

「地上と、その地底って場所をいつでも行き来できるってこと?」


 続けようとしたが、ファナに先読みされる。

 やるな! 宇宙を戦い抜いた英雄と同じ能力か!?  


「その通り。これは今後絶対メリットになるはずだ。

どちらでも仕事ができて情報も得られる」


 特に情報入手はしないといけない。常闇のカイナや

ギルドーガなどの情報も得ないといけない。

 メルザの故郷も探さないとな。


「それと二名ほど、ここに呼びたい奴がいる。地底で世話になった妖魔がいるんだ。

これ以降のことはその後に話そう」


 そう告げると、全員了承してくれた。

 メルザの領域と俺の領域を拡張する作業に入る。


 イメージが大事だ。あの巨木の裏側のスペースに

メルザの領域を丸ごともってくるイメージだ。

 時計の時間調整部をイメージしながらひたすら回す……だったな。

 配置をイメージしながらゆっくりと時計のつまみを回していった。


「わ、わわわわわーーーっすごい!」


 ニーメが声をもらす。


「驚きね。こんなことができるアイテムがあるなんてね」

「わしもびっくりじゃわい」

「俺様たちの領域が、でっかくなったー! これがルインの領域か、すげーなルイン!」


 ふっふっふ。ちゃんと考えて作ったからな。

 まずは領域をじっくりと確認するとしますか。

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