第九十一話 日頃の行いは大事

 紫電の宝箱は確かレジェンダリー以上確定の箱のはず。

 罠はなく当たりつきの超レア宝箱。

 しかもここは地底の妖魔のやばいエリア。

 さらに、隠されたように廃屋の上の片隅にある。

 いいのか。

この宝箱、開けていいんだな!? 

 いいものがあれば攻略は楽になるだろう。

 最低でもレジェンダリー。

 ごくりと息をのみ、紫電の宝箱に手をかける。


 開ける手が少し震える。なにせ今はアナライズ出来ない。

 中身がどういうものかもわからないのだ。

 もしパモが付けたような呪いの腕輪だったら困るしな。

 まずは開けて中身を確かめよう。  

 意を決してふたを開けてみた! 






 ――するとその中には王冠のようなものがはいっていた。

 ……それと骨だ。



「よう」

「え? よう?」

「挨拶してんだよ、よう!」

「よ、よう。それじゃ失礼する」

「待てよ。開けたんだろ。貰ってけよ」

「えっとあの。すみません。間違えました。出直してきます」

「開けたんだろ? もうお前のもんだって。よっこらしょ」

「あ、あの本当ごめんなさい。あなたの家とは知らなくて」

「いや家じゃないって。お宝だぞ。間違いなく」

「どう見ても骨なんですが。骨ですよね?」

「ああ、オストーだ。バシレウス・オストー。 

レウスでもオストーでもおすっちでも好きに呼べ」

「あの、じゃあレウスさんで。レウスさんはなぜ箱の中に?」

「そりゃお前、当たりだからだよ」

「え、じゃあマジックアイテムですか?」

「お前は俺がマジックアイテムに見えるのか?」

「骨にみえます」

「そうだろ? だからアイテムじゃないよな」

「……もう行っていいですか?」

「待てって話聞けって。お前は俺を当てたんだから

連れてかなきゃいけない。そうだろ?」


 やべぇ、呪いのアイテムだろこれ! 


 やっちまった。こんな場所の箱だ。

 間違いなくトラップだったんだ。


「あの、レウスさん。いいにくいのですが先を急いでいるもので」

「いやー、日ごろの行いってやつかね。こんなとこにある宝箱見つける

のってすごいよ? 見つからないよここ? 三千年は開かないと思ってたよ?」


 らちがあかないのでゆっくりと先に進もうとしたら、がっと骨で肩をつかまれる。

 よく見ると王冠は頭についてるんだな。節穴の目には赤い炎が宿っている。怖いよ。


「待てって。連れてけって。滅茶苦茶当たりだから。

強いよ? 俺はとてつもなく強いよ? いいの? いっちゃって」

「え? じゃあこの奥から地上に行きたいんだけど余裕ですか?」

「え? 地上? 不浄なる俺が地上に? バカ言っちゃいけない。一瞬で浄化されるよ?」

「じゃあ浄化されてもいいならついて来てください」

「いやー、あれだ。じゃあ途中まで、途中までな? 

せっかく当てられたのに何もせず行かせられないわ。

それは無理だわー」


 そういうと骨はちょっと後ずさりした。


 けれど、現地まで行けばおさらばできるならありがたい。


「じゃあはりきって行きましょう! レウスさん!」

「待てって。これ、おまけの方な。箱の中のやつ。はずれだわ、まじではずれだわー」


 そういうとレウスさんは俺に九面キューブのようなものと

指輪、それから綺麗な装飾ナイフとハンカチのようなものと幻薬のようなものを渡す。


 あるんじゃん! お宝! あんたがもってたのかい! 

 どっと疲れたが、レウスさんは元気いっぱいだった。


「レウスさんはどうやって移動するんですか?」

「俺か? 俺浮くから。骨だぞ? 中身ないし」


 ふわーっと浮き上がりついてくるレウスさん。

 はたから見たら骨に憑りつかれた人だよ俺は。

 地上までは我慢するしかないか。


 ……再び廃屋の上を飛び越え、先に進むのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る