第九十話 修業!

「あいつから戦いに行くぞ、三号!」

「……」

 

 俺は今一人なので、スライム三号こと三号に話しかけて自我を保っている。

 この世界にきて一人きりで行動していた事が殆どない。 

 しかもこんな幽閉の辿りという廃墟の牢獄みたいな場所だ。

 心細くもなる。

 スライムは応えてくれないが、それでも構わない。


 ……目の前にいるのは一匹のコウモリのような奴だ。

 だが、コウモリより遥かに長いサーベルタイガーのような牙を持っている。

 あの牙でザックリいかれたら痛いじゃすまないだろう。

 相手の様子を伺いながらじりじりとにじみより隙を伺う。

 投擲武器が今はない……が、考えはある。

 崩れた壁に隠れている俺は、左側からコウモリに蛇籠手を放つ。

 

 籠手はみるみるうちに蛇に姿を変えて、コウモリに襲い掛かった。

 それに気づいたコウモリは蛇に攻撃をしようとするが、右側から

勢いよく飛び出した俺の右拳をまともにくらった。

 すると、三十メートル位吹き飛んでやつは消滅した。

 あれ……やりすぎたか? このあたりのモンスターはもしかしたらまだそんなに強くないらしい。

 ならばともう一匹同じ個体がいたので、そいつへ蛇籠手は使わず対峙する。


 コウモリは飛翔しながら襲いかかってくるが、相手の動きはよく見えるし、動きも遅く感じる。

 バックステップしてからブロードソードを奴にめがけて投げると、簡単に

突き刺さり消滅した。

 あれ? この方法でも一撃か。

 さらにもう一度同じ個体を探す。


 封印するために一度装着していた一つをアクリル板に戻し、封印穴を空けてある。

 後ろから軽めに蹴りを入れると、一撃封印で終わった。

 牙のあるコウモリだからキバットとでも呼んでおこう。

 次に見かけたのは打ち上げられた緑色のタコみたいなやつだった。


 青のりでゆでたような色だ。

 どう見ても打撃では不利なので、ブロードソードを構える。


 ――すると奴がいきなりスミらしきものを吐いてくる!  

 急いで回避。右に跳躍したが、飛びすぎた! そのまま右の

崩れかけた壁に手をつこうとして、マッドシールドというイメージが湧く。

 

 ……これマッドラココが使ってたやつだ。

 マッドシールドを使用すると、激突した壁の部分に泥ができて

ダメージが吸収された。

 

 防御面があまいので、この技は助かるな。疲れるけど。

 青のりタコの的にならないようジグザグに動き、蛇籠手をけしかける。

 蛇はぱくっと青のりタコを食べた。ちょっと美味しそうだな……それ。

 すると、徐々に体の疲労が癒えるような感覚がある。

 ダメージが回復するってのはこんな感じか。


 予想通り、青のりタコは蛇から逃れる術はないようだ。

 蛇佩楯の使い道は今のところ見出せないが、蛇籠手の方はかなり使える。

 捕縛網並みなのではないか? 

 いや、あの捕縛網はサラを捕らえた時にサラが死にかけていた。 

 リルよりは弱いだろうが、それでもサラも、相当な猛者なのだろう。

 単純に使用者のレベルに左右されるみたいだし、俺がまだまだ弱いってだけだな。

 引き続き敵を探す。先ほどの青ノリタコも勿論封印した。

 

 ――――しばらく歩いていると、瓦礫や廃屋が点在する場所にでる。

 出会いがしらに襲われると危険だ。

 三号をしまい……道なりに進んでくださいという様な道をそのまま

進む……ほど不用心ではない。


 ここでいよいよ蛇佩楯の出番だ。頼みますフェルドナージュ様。

 高く跳躍して廃屋の上に乗る。

 隙間から下を見るとうじゃうじゃと何かいるのがみえる。 

 持っててよかった跳躍力! 

 ジャンプして攻撃するだけが手段じゃないんだ。

 蛇佩楯の正しい使い方を駆使して少しずつ先へと進んだ。


 すると……「あれ、こんなところに? いやこんなところだからか」

 そこには久しぶりに見る紫電の宝箱があり、思わず独り言を呟いていた。

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