第八十九話 入念な確認

 幽閉の辿りの入り口に着いてまもなく……。 

 ところどころに鉄格子があり、その中を目にしたことがないモンスターが

横行しているのが見える。


 最奥に聳え立つ大きな建物に向かわなければいけないが、そこへ辿り着くのに

多くの戦闘は避けられないだろう。

 まずは自分の装備をしっかりと確認しよう。

 これも師匠によく言われたな……あのあと師匠は大丈夫だったのだろうか? 

 雑念が入ったので、ブンブンと顔を振る。

 今はそれどころではなかった。


 「この俺を心配するなんざ百年はええ」って言われそうだ。


 師匠……師匠か。そうだ! あの技、今の俺ならできるんじゃないか? 

 この青銀蛇佩楯、すねあてだと思っていたら佩楯はいだてだった。

 これがあれば……いやまだ無理か。

 おっと、まずは装備確認が先だ。

 

 右手 レヤック ボルデキマイラ、フィリスドラゴン、パオーム、ギルティランサー

 左手 ランダ ピクシーキャット、ブラッディヘル

 胴体 下妖の一軽鎧 妖魔ラビット

 右腕 青銀蛇籠手 封印穴五

 左腕 下妖の一籠手 アリマジロ

 腰 下妖の一腰 フラウリス

 脚 青銀蛇佩楯 封印穴三

 足 妖魔用靴 封印穴なし

 予備武器 下妖の一ブロードソード スライム



 現状の装備はやはり防御面に難ありか。ステータス補正も

わからないし、アナライズも今は使えない。

 レヤックとランダは俺のじゃないから封印部分はいじれない。


 出来るかなと思って取り外そうとしたけど、そもそもアクリル板じゃなく、氷で

押し固めたようにコチコチで中のモンスターも動かない。

 改めて見てみると自分に封印したモンスターが異常であることがよくわかる。

 スライムとか滅茶苦茶プルプル動いてるし。

 現在の封印穴には、フェルス高地で十枚ほどアクリル板にした奴らを適当に

装着している。

 その時に捕まえたモンスターの名前は、リルから聞いた。 

 フラウリスとアリマジロはどちらも素早い敵だ。

 他のモンスターはというと……。

 

ヘッパーホップ(ばねみたいなモンスター)

フットレフト(片足妖怪みたいなモンスター)

トードギラ(けろりんみたいなモンスターの怖い版)

マッドラココ(泥からラッコがでてきてドン引きした)

マッドサハギン(泥から半魚人でさらにドン引きした)

ダイナモクラッシュ(盛大に爆発した)

トレントウルフ(木に見える狼だった)


 ここから先、倒すモンスターは名前がわからない。

 リルから受け取ったフェルドナージュ様の賜り品を確認してびっくりした

のだが、フェルドナージュ様の籠手と佩楯には封印穴が多く空いている。


 セットできる数が多いのはありがたい。

 多くセットすればその分強くなるってことだし。

 やばい装備だな。


 リルが羨ましがるのは別の意味だろうけど。

 戻ったらフェルドナージュ様にお願いしてどちらか譲っていいか

聞いてみるか。

 暫くはこの装備に頼らないといけないけど。 

 さて……ここからが普通の妖魔と違う戦い方ができるところだ。


「出でよ、妖魔招来! フラウリス! アリマジロ!」……と言いながら

アクリル板をこするが、出てこない。


 なんでだ? そっぽ向いているぞ!? まさかの好感度が足りないって

やつなのか。

 どうしたら出てくれるかわからないが、とりあえずセットして使おう。

 スライムだけを出して入口のあたりの敵を倒してみることにした。

 お前だけが頼りだよスライム二号……いや三号! 


 まずは身体の動きを確認してみることにした。

 自分の感覚を数値化してみた方が早いと思い、一度

全ての装備を外して飛んだり跳ねたり走ったり、地面を殴ったりしてみる。


 次に何もない状態を一としたときの、全ての装備をつけた上で体感でどの程度

動きやすくなったかを計算してみる。

 ざっくりしかわからない。

 鑑定というような能力者が、いかにチートか改めてよくわかるな。


 攻撃力が一から七十倍。

 防御力が一から四十倍? 

 知力が一から不明。

 素早さが一から三十倍。

 跳躍力が一から四倍。

 器用さが一から十倍? 


 体感でこれくらいは補正されてる。

 すごく能力が上がってるように感じるが、多分二人の装備に封印されてる

モンスターの影響だ。


 これだけ強くなっていたとしても危険ってことは、ここに封印されている

以上のモンスターがいるってことだろう。


 闘技大会の時より明らかに今なら動けるんだがな。

 何かしらの作戦とかは必要だ。

 ついでに妖陽炎術も使ってみる。

 俺の身体がむにゅーと伸びる。

 ……違う、こっちじゃない! 

 危ない! この名前だから間違えるんだ。


 名前変えても問題なくイメージできればいいんだよな。

 妖蜃気楼術? いや、妖楼術でいいだろ。

 この妖楼術、今の俺には三秒くらいしか使えないっていってたな。

 ……ちゃんと考えがある。

 この術を攻撃を食らうタイミングだけで使えれば、攻撃回避のみとして

三回、いや二回は余裕をもって使えるってことだ。

 ただ直線的にのびる攻撃には弱いから、注意しないと。

 準備が整ったので、リルに持たされた食事をとり、この辺りの

モンスターを倒してみることにした。

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