第五章 求むるは何を欲するものなり

第八十七話 パモの応援

 ――パモは呪いから解呪されたが、解呪後ずっとメルザを見ていた。

 呪いによる後遺症などはなく、すっかりと元に戻ったパモ。

 そのパモをメルザは片時も放そうとしなかった。


「なぁパモ。今日な、ルインがスッパムを取ってきてくれたんだ。

甘くてよ。美味しかった」

「ぱみゅ……ぱみゅ!」

「パモもスッパム好きだよな。一緒にくおーぜ。ルインがとってきてくれたスッパム」

「ぱ、ぱみゅ……」


 メルザはパモを抱えて撫でている。


「それでな。ルインは凄いんだぜ。俺様よりずーっと高いところのスッパムをよ。

こう、ぽいって投げてよこすんだ。なぁ聞いてるか、パモ」

「ぱみゅ! ぱみゅー!」

「どうしたんだパモ? そんなに怒って」

「ぱみゅ、ぱみゅ! ぱみゅ!」

「なんだよ、せっかく美味しいスッパム分けてやろうと思ったのに。

なぁルイン。なぁ」


 だが、誰からも返事はない。


「……なぁ。どこだよ。どうしてだよ。死なないって、俺は死なないって

いったのに」


 ぱさっ。ぱさぱさっ。

 パモが羽でメルザの顔をはたいていた。


「ぱみゅ、ぱみゅ!」

「なんだよ。お前まで俺様を見放すのか?」

「ぱみゅ! ぱみゅ!」

「だって、しょうがないじゃないか! 俺様は片腕で、体力もなくて! ルインが

いなければ何もできなくて! 役ただずで! でもあいつは……あ……」


 メルザは自分で口に出した言葉で思い出してしまった。


「誰だか知らないが、俺を元の場所に帰してくれ。

俺に構わないでくれ。俺は役立たずなんだ」


 それはまるで幻聴のようだった。ルインの声が聞こえたような気がした。

 あのセリフはもしかしたら、自分が同じことを言いたかったのかも知れない。 

 自分は役立たずで、元の場所にも帰れない。誰にも構ってもらえず一人きりの自分。


「……パモ、ありがとな。俺様駄目な主だなぁ」

「ぱみゅ!」

「こいつ、そうだなって言ってるな。俺様、何してたんだろうな。

みんなに心配かけまくってよ。これじゃルインに会った時に、合わせる顔がないぜ」

「ぱーみゅ!」

「俺様、ベッツェンに行くよ。パモもきてくれ。それにミリルにルーも来てもらおう。

ファナは足がまだ辛いだろうしここにいてもらおう。ニーメも。ゴサクもここに

残していく」

「ぱみゅ! ぱーみゅぱーみゅ!」

「よし! 行こう! 今すぐに!」


 メルザは立ち上がった。どのくらいそうしていたのだろう。

 起き上がったメルザに気付いて、ファナもニーメも心配で駆け寄る。


「二人ともごめん。もうだいじょぶだ。俺様、行ってくるよ。

ルインがどうなっていても受け止める。そして必ずルインに会う!」

「よかった。メルザ……大丈夫よ。ルインならきっと大丈夫」

「お兄ちゃん強いからね! きっと今頃どこかで修行でもしてるよ! 

そうだ、親分これ。ライラロさんの乗り物を真似して作ってみたんだ。

あんなに速くは移動できないけど。危ないし……でも親分が歩いていくより

よっぽどいいと思うよ!」

「これは、風斗で動く車ってやつか? ありがとなニーメ! これがあれば

早く辿り着ける」

「ミリルは三夜の町にいると思うわ。探してみてね。私も一緒に行きたかった

のだけれど……」

「いや、この領域を頼む。行ってくる!」


 こうしてメルザは再びたちあがり、彼を探す旅に出る。

 ルインが生きていると信じて。

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