第七十八話 妖魔下妖の一装備

 一通りの術の知識などを聞き、俺自身の使える術を尋ねたら、妖陽炎術が使えるらしい。

 目の力についても聞いたが、そちらは多分幻魔の力だろうとのことだった。

 術の使用方法などは戦闘で教えてくれるらしい。

 この世界にきて不思議な事だらけだったが、幻術とは違うような事をできるのか。


 そもそもなぜメルザと一緒にやった時出来るのか、単独で出来ないのが

疑問だったが、ここにきて初めて理解できた。


「その籠手には穴が一つ空いているだろう? その穴の数だけ

モンスターをそこへ封じておけるんだ。穴が二つ空いていれば、籠手に二種類の

モンスターを封印できる。君は下妖の一だから、封印できても一部位に各一つ

だけだけどね」


「封印したあとはどうなるんだ?」

「その悪妖種やモンスターと同等の技を得ることができる。

例えばだけど、ゴブリンをその穴に封印すればゴブリンの力を得ることができるよ。

ただ、注意しなければいけないのはマイナス面になることもある。

ゴブリンなら賢さが下がるとか……ね」


 それはちょっと嫌だな。オークを封印した日には、賢さがマイナスを振り切り

おかしな行動をとって、捕まって処刑されそうだ……。

 デメリットを考慮しながら使う術。

 けど、単独行動が多い俺向きではあるかな。


「それと下妖の装備はこの地底でしか売っていない。

今回はフェルドナージュ様が用立ててくれるので、好きな武器一つと

好きな防具を三つまで買っていいよ」

「そう言われても、あまりに今までとかけ離れていて、俺にどれが合うのかわからないな」

「そうだね……じゃあ僕らのお勧めで揃えようか」

「あたしが調べてあげるわ! 大人しくしててね」


 そういうとサラが俺の身体を入念に調べ始めた。

 その辺は触らないで頂けますでしょうか……。


「へー、結構たくましい……この辺なんかこんなに硬くて……」

「も、もういいだろ? そもそもそんなとこに装備しそうなの、目の前にないだろ!」

「えー、戦闘の基本は身体全身の動きでしょ? それなら入念に調べないと」

「いや、もういいよ。兄としては見てられないし」


 残念そうにサラが触るのを止める。

 助かった……。


「とりあえずこの武器と、この三つの装備だね」


 武器は振りやすそうな剣。

 格闘でもいいが、槍や矛は妖魔封印には合わないようだ。

 剣の形状は肉厚なブロードソードだろうか。

 これを片手か両手で使い分けて持つらしい。


 そして、防具一つ目は籠手。籠手でガードするようだ。

 そんな頑丈な籠手なのか? 

 防具二つ目は肩から心臓部を保護する軽装。

 防具三つ目は腰。 

 中央に穴が開いている形式だ。

 どれも特殊な形状をしているが、サイズは全部合う模様。


 武器と籠手、腰装備には穴が一つずつの合計三か所に

妖魔封印ができるらしい。


 つまり最低三匹のモンスターを入れておける。

 ただ、装備性能は妖魔装備の中で最低のもの。

 そこまで強い相手を封印は出来ないようだ。

 それにしても見た目がかなり妖しい。


 フェルドナージュ様のような美しいきらびやかな

感じの装備を想像していたが……さすがに上位装備でもないと無理か。


「装備はそれでいいとして、仕事を受けるっていうのは

どんな依頼があるんだ?」

「大まかには討伐、退治依頼かな。素材を取る

意味でもそうだけど、邪魔な存在がいるから。

あとは鉱石の採掘や薬の材料なんかもね。

ほら、君を回復させたあの薬だって、ここ地底で採取したものを

使ってるんだよ」

「ということは採掘や採集に適したエリアがあるんだな」

「あるね。その採掘エリアでも勿論僕らを邪魔してくる

怪物なんかがいるね」

「まずは装備になれたいんだけど、どこかいい訓練場所はないかな」

「下級向けの特訓場がある。まずその装備に封印しないといけないからね。

そこまで行こうか」

「ああ、頼む」


 初の装備封印と術の訓練を、リルとサラの協力を得て行なうことになったのだった。

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