第七十九話 フェルス高地での特訓・装備封印編

「ここが狩場だよ」

「久しぶりにきたー!」

「……まさにファンタジーだな」


 俺たちはファルス皇国の妖兵エリアから、外へ出て近くにある

高地へと着いた。

 ゴブリンやオーク、スライムや凶悪そうな鳥など、不思議な生物

が遠目に見るとわんさかいる。


「まずはそこのスライム封印してみなよ。といっても攻撃しないと

封印できないけど。ダメージ与与えて封印値を高めて。封印値は

その穴を見てごらん。数値があるでしょ? 複数穴に空きがある

から、戦闘に入る前にどこに入れるかを決めておいてね」


 リルの言う事に頷いて応えると、所持している剣の穴の部分を

押して、封印場所を指定する。

 そのうえでスライムと対峙した。

 スライムは、昔読んでいた小説などで様々な形で書いてあった。

 

 だがここは妖魔の世界。どんな妖術を使ってくるのか。

 スライムは弱いというが、警戒しなければ。

 ……またすぐ死にかけたら、メルザに再会するどころではない。


 こいつ、まさかスライムの魔王種とかじゃないのか!? 

 奴はどう動くんだ。ずっとプルプルしているだけだ。

 まさかすでに攻撃を仕掛けてきたのか!? 

 

 身体が思うように動かない。

 あのプルプルしている動きはなんなんだ。妖術発動中か!? 

 そもそもが慎重な俺は、アナライズも使えないので少し

後ずさりした。

 決してビビっているわけではない。慎重なだけだ。


「……何してるのさ。スライムに敵として認識すらされてないよ」

「スライム相手に警戒しすぎ!」

「……あのー、なんか以前よりうまく身体が動かないんだけど」

「そりゃそうだよ。君は胴体を真っ二つにされた時に、殆どの

身体能力を一度失ったんだから。そうじゃなければもっと強い

相手でいいんだけどね」


 そういう大事な事は早く伝えてほしいな……と言っても助けて

もらって言えたぎりじゃないか。

 再度剣を構えて勢いよく……勢いがでていないが奴に切りかかる。

 スライムはぽよんと体を震わせているだけ。

 あれ? やっぱ弱いな俺……師匠との厳しい特訓を考えると悲しく

なったが、悲しんでいる場合じゃない。


 今まで装備に頼っていた部分もある。 

 一から鍛え直す気概でいこう。

 一応スライムに攻撃はあたる。どうにか封印値とやらが百になった。


「はい、目を閉じて穴にスライムを吸い込むイメージを持ってみて」


 言われた通り掃除機のようなイメージでスライムを剣の穴に吸い込ん

で見る。吸引! そうイメージは吸引だ。


「えっ、なんでそんな吸い込み方になるの?」


 リルからすると正しくはない吸い込み方のようだ。

 目を開けるとスライムがいない。

 剣の穴の部分を見ると、穴に透明な膜ができており、そこに先ほどの

スライムがプルプルしている。


 成功はしたようだ。これが妖魔封印……幻魔術とは全く違うな。


「吸い込み方は変だけど、まぁいいや。その剣で妖術操作を。パーツ

事にイメージが違うし、その封印した奴をイメージしないと何も起こ

らないよ。剣なら剣、腰なら腰みたいにイメージしないと使えないよ」


 剣の封印されてるスライムを今一度見て、イメージしてみる。

 あれ? 消化液……と思ったら、ばしゃっと目の前に何かでる。


「ほら、できた。スライムの技。消化液」

「……えっち」


 目の前のサラの服が少し溶けてしまった。悪気は、悪気はないんだ! 


「そんな風に各獲物の特徴を技として具現化できる。

例えばオークなら力が、マージなら知識がデビルホースとかなら素早さ

があがったりする。下がる場合もあるけど」


 つまりそれぞれの持ち味で上限するのか。イメージしやすい。


「今の君はまだまだ妖魔として未熟で弱いけど」

「はっきり言うよな、リルは……実際そうだけど」

「自分を受け入れることは大事だよ。受け入れた上で、ここで

あと二匹、自分の力でスライム以外を捕まえてみてね。僕はサラ

と上妖の一向けを封印しにいってくるから。戻ったら妖術の練習に

移るよ」

「なぁ……いや後でいいか。わかった、やってみよう」


 聞こうとしたことをやめ、今はこの力のことに集中する。

 リルとサラは「またあとで」と手を振って去っていく。


 今一度封印されたスライムを見てみる。

 これって中で生きてたりするのか? 


 この上に別のモンスターを封印すると上書きされるって

いってたけど。

 そういえばこれ、なんかアクリル板みたいだな。

 ぽろっととれたりして。

 そう思いながら指で触ると……コロンっと何かが落ちる。


 ……あれ、取れましたよ? 取り外し可能なのか? でも上書きが

どうのっていってたよな。

 スライムはアクリル板状の中でプルプルしている。

 触り心地もアクリル板そのものだ。アクリル板でいいだろこれ。

 もう一度剣にはめてみよう。思い切り剣を振っても下にはおちない。

 投げつけても何してもとれないな。

 だけど、手で押すととれる……なんなんだ。


 スライムアクリル板を再び付けて、消化液をだしてみたが、やっぱり出る。

 取り外し可能なモンスターメダルみたいなものか。

 案外コレクションしたら面白いかもな。

 メルザやファナが喜びそうだ……ああ、考えないようにしていたのに。


 どうしてもメルザの笑顔が脳裏に浮かぶ。

 ぶんぶんと頭を振り、浮かんだものを消す。

 アクリル板を剣から取り外して、プルプルしているスライム

を触ると少し喜んでいる感じがする。


 すると……あれ? なんかアクリル板から出てきたんだけど……

スライムさん。

 取り出しも可能なのか。もしかしてこいつ、一緒に戦ってくれたり

もするのか? 


 近くに獲物がいないか探してみよう。

 しばらくモンスターを探していると、大きいリスのような奴がいた。

 少しすばしっこそうな相手だし、ちょうどいい。 

 敏捷性……つまり素早さを確保しないと、相手の攻撃を避けるのも

あてるのも難しい。

 ターン制の戦闘とか、どれほど楽なことか……相手が攻撃を避ける

というより、攻撃をヒットさせる方が大変だ。

 いや、ターン制でも命中という概念はあるけど。


「よし、一緒に戦ってくれスライム。消化液だ!」


 命令するノリで指さしてやってみたが、スライムの行動はプルプル

している……だった。


 ひゅーんと冷たい風が俺の傍を横切る。

 スライムはプルプルがとどまるところを知らないほどプルプル

している。


「……」


 そうこうしていると、でかいリスが襲ってきたので剣で横薙ぎに攻撃する。

 俺の横薙ぎモーションが脳内より遅い! 

 するとスライムがやっと、でかいリスめがけて消化液を出してくれた。


 俺が攻撃した相手にだけ攻撃してくれるようだ。

 しかもスライムで攻撃をヒットさせたらちゃんと腰に指定した穴の数値

が五十七まで上がっている。

 そのまま剣を振るい攻撃するが、横薙ぎが遅くて当たらない。

 あ、スライムがめちゃくちゃ狙われて攻撃されて消えた……しかもさっき

の封印値五十七が二十五まで下がってる。


 ……おまえの仇は必ず俺がとる! 

 ブロードソードを構えてでかいリスに何度も切りつけた。

 でかいリスも種を飛ばしてきたり、前歯で嚙みついてきたりする。

 カウンターのタイミングで攻撃を合わせたりするが、リス一匹で息が

あがる……やっと封印値百になり封印出来た。


 スライムの時と同様、腰に封印された封印穴の中で、でかいリスだった

そいつは動いている。

 そして取り外しが可能。

 その場に座り込み胡坐をかいて、腕を組みながらリルの言っていた

内容との食い違いを整理することにした。

 

 封印値を百にすると指定した穴に封印できる。 

 封印したモンスターの技をそのモンスターをイメージして使える。

 封印したモンスターを付け替え可能。

 取り外せるアクリル板モンスターをその場に再出現可能。

 モンスターが与えたダメージでも封印値があがる。

 モンスターが倒されると稼いだ封印値がなくなりモンスターも

消滅する。


 ここまでは把握した。 

 しかしこれはリルとの認識違いが多すぎて、本人に確認

しないといけないな。

 そのように考えていたら、近くに再びスライムがいたので、倒し

て剣に封印した。


 取り外しが可能なら、いいお土産になる。

 出来る限りモンスターを集めてみよう。

 そう考え、モンスターを次々にアクリル板にして封印した。

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