第三十六話 バウザーとカードの交換・ジョブコンバート

 師匠の技を伝授された後、俺たちは久しぶりにバウザーのいる幻魔神殿を訪れていた。


「いらっしゃいませ。ようこそ幻魔神殿へ。こちらのご利用は初めてですか?」

「いや、以前にも来たことがあるよ。バウザーさんはいるかい?」


 相変わらずのんびり話す受付嬢はミラという名前らしい。

 ミラにバウザーへの面会を求めた。


「はい、お名前は……ルイン様ですね。そちらの椅子で少々お待ちくださいー」


 頭を深く下げ、ミラはバウザーを呼びに行った。

 ――しばらくすると見覚えのある人物がこちらへ来る。


「お待たせした。私がこの幻魔神殿の神殿長を務める

バウザーである。ご用向きは何かな?」

「お久しぶりですバウザーさん。以前シーザー師匠を紹介して

頂いたルインです」


 バウザーは少し思案するような表情を浮かべポンと手を打つ。


「おお、君はあの時の! 強力な呪いの腕輪を持ち寄った青年か。

正直見違えたな。あやつに相当しごかれたのか?」

「はい、それはもう……とてつもなく」

「はっはっは、そうか! だが行った甲斐はあったようだね。

今の君なら闘技大会に参加しても問題なかろう。

支度には数日かかるが、手配をしておこう」

「ありがとうございます、バウザーさん」


 バウザーは頷くと、ミラにいくつか説明しているようだ。


「して、今日の用向きはそれだけか?」

「実はジョブカードを手に入れたのですが、俺たちじゃジョブが合わなくて。

もしよければ交換してもらえませんか?」

「ふむ、ジョブカードの交換だな。どういったジョブが欲しいか

わかるかね? 基本的にはカードの交換はそこのミラが担当しておる。

後のことはミラに聞くがよい。君たちのデイスペルへの行く注意なども含めてな」

「わかりました。ありがとうございます。バウザーさん」


 礼をすると、メルザも真似して礼をし、笑顔を見せる。

 受付嬢のミラはしばらくしてこちらへ話しかけてきた。


「お待たせいたしましたー。神殿長よりジョブカード交換の儀と

デイスペルへの注意事項説明を承っておりますー」

「よろしくお願いします」

「まず最初にカード交換の儀からですが、お持ちのカードを拝見してもよろしいでしょうか?」


 俺は入手した四枚のうち、トランスフォーマーを除く三枚のカードを渡す。


「拝見します……どれも上位中級ですね。

一枚あたりで金貨三十枚相当以上のものです。

そちらがお望みになるジョブカードはどちらになりますか?」

「俺が欲しいのはモンクと剣術士があわさったようなやつなんだが…あるか?」

「俺様はフラクタル幻士がいいな。中級になれるのかどーかはわからねーけどよ」

「かしこまりました。少々お待ちくださいー」


そういうとミラは少し調べ始める。

「お二人ともこちらに手をかざしてくださいー」


以前にも調べたやつで適性を調べ、ミラは少し思案する


「そうしますと、こちらの二枚になりますねー。

舞踏剣士の戦い方、中級とフラクタル士、中級

そちらのブラッディ騎士のカードは少し価値が高いので

そちら以外の二枚と交換させていただきますねー」


 よくわからないが詳しい事はまた訪れた時にでも聞こう。

 俺たちは了承してカードに火をつけてもらう。

 

 カードは燃え上がり、俺とメルザはジョブ適性を得たようだ。


「そのままジョブコンバートをなさいますかー?」

「あぁ、頼む。メルザもやっていくだろう?」

「おー、俺様もやるぞぉ!」

「中級へのコンバートは初めてになりますね。

初回は料金半額の金貨五枚になりますので、十枚頂きます」


 高っ! けどメルザからさっき運よく売れた純白のドレスの金がある。

 メルザ、助かったぞ。

 俺たちは祭壇に上がり、光が降り注ぐ円状の間へとあがっていった。


「あのー、お一人ずつになるんですがー」

「メルザ、ちょっと待っててくれ」


 メルザは少し残念そうに後ろに下がる。


「金の幻、銀の幻 祈りを持ってかの者の真髄を呼び覚まさん。

持つべき力を幻の形に」


 降り注ぐ力が強くなる。俺は二回目だが何度見ても不思議な光景だ。

 中級以降は金がかかるのがアレだが。

 

 同じようにメルザも祭壇での祈りを済ませ、俺たちはジョブコンバートを終えた。

 けどこれって戦わないと実感わかないんだよな。


 神殿をあとにし、領域へ戻るべく再びメルザをおぶって走るのだった。

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