第二十六話 ルインの新装備と二回目のガラポン洞窟

 水面から浮上すると、銀と金が混ざったような色の洞窟だった。

 以前きたときとは全然違うな。

 前回は立札と木箱が……あれ、その二つはあるな。

 メルザもかかしも濡れたところを乾かしている。

 水中を経由するから毎回濡れるってのが困ったところだ。

 ある程度衣類を乾かして休憩し、改めて立札を見る。


 【当たりの洞窟。好きなように事を運べ】


 当たりの洞窟? そんなものもあるのか。

 木箱を開けてみると、幻薬(極小)が沢山詰まっていた。

 ここからしてもう当たり感があるな。


 そして木箱の下に相変わらず地図がある。

 メルザ達と一緒に地図を見てみると……「2つの金色の点と1つの

青色の点。奥に赤色のマークと四角いマークだな」

「金色? そりゃきっといいお宝なんだろうな! 楽しみだぜ、にはは」


 メルザはそう笑うと足でぴょんぴょんしている。

 その跳ね方はけろりんのソレだ。

 またけろりんがいると思っているのだろう。

 俺たちは一つ目の金色のマークへ向かう。


 今度は最初からモンスターの気配がするな。

 一応何が出てもいいように準備しておけよ。メルザ、カカシ」

 そういう前からメルザは準備万端のようだ。

 カカシは……よくわからない。

 少し奥へ行くと、金色の飛行するでかい虫のような奴が複数いた。

 手早くまずは分析する。


 俺が師匠から最初に言われた事。

 それが、アナライズの重要さだった。敵を知る手段があるなら

真っ先に調べろ。

 どんな工夫を凝らしても……だ。

 そしてアナライズした結果……。



 ゴールデンアキアカネ

 フライ科のモンスター

 素早い動きと得物を捉える目で相手に遅いかかる

 獰猛で見境なく攻撃する

 飛行能力はあるが高くまでは飛べない

 尾の攻撃に注意


 ゴールデンオオゴマダラ

 蝶科

 巨大な羽を2枚持ち上下左右スムーズに動き回る

 普段は大人しいが怒らせれば戦闘は避けられない

 鱗粉には毒性があり危険



 ……アナライズはやはり便利な能力だ。

 だが敵に気付かれていれば使用はほぼ不可能に近い。

 毒持ちがいるな。やはり事前に情報がわかると助かる。


「メルザ、カカシ。あのでかい蝶は毒持ちだ。あれから倒すぞ」


 俺は背中に取りつけていた盾……しかもただの盾じゃない。

 ニーメにつくってもらった試作品一号を取り出した。


 あれからニーメは鍛冶を覚え、かなりの物を製作できるようになっている。

 その盾からはレイピア状のような刺突剣がでている。


 本来のアームシールドは持ち手がついているだけだが、盾は弓を防げれば

十分で、軽装を使用したい俺としては、なるべく装備を小型化したかった。

 かといって火力を落とすわけにはいかない。


 どちらの手でも攻撃したいと思い、この形を説明して製作してもらたのだ。


 動き回りながら戦うのにはどうしても武器が二つ必要だった。

 そして右手には格闘術で使う武器で、籠手から伸びる突起が少し出る、パタという

武器にした。

 右手はかなり自由に動かせ、このまま飲み物も飲める。これもニーメ製だ。

 一応何かあってもいいように、シミターは持ってきているが、特訓でボロボロに

なったスクラマサクスは卒業した。


 防具こそ目新しくなっていないものの、武器二本新調できたのは

ニーメのおかげだ。 

 ここでいいアイテムを見つけて返さないと。

 ニーメの言葉が思い返される……。


「僕、お兄ちゃんの武器作るのすごく楽しいんだ!」なんて

あんなキラキラした

目で言われたら、思わず頭をわしゃわしゃしてしまう。


 俺の新装備が気になっていたメルザは、新しい装備を見て

横をぷいっと向いてしまう。 

 二人でとったシミターを装備してないからだろうか? 

 さすがにボロボロなんだよ……ゆるせ。


 メルザも今日は義手をつけてないし杖ももっていないようだった。

 メルザの師匠が幻術の底力を引き上げていくのに邪魔と言われたらしい。 

 相当スパルタのようだ。


「さて、俺が毒を使う方を速攻で倒す。二人は四枚羽のフライを頼む」


 そういうと、カカシを中衛、メルザを後衛にして敵に向かう。

 俺は双方の気を引くため、一直線に二匹の場所へ向かう。

 途中わざと気付かせるため、壁をパタで殴る。


 ドゴォ! という音を出し相手側もこちらに気づいて反応した。


 手前側にいる蝶の正面ではなく、右に跳躍する。

 その刹那、後方からデカい火球と雷が飛来する。

 雷はカカシのようだ。あんなこともできるのか。


 俺はそれにあわせて左腰から暗器を取り出して蝶に投げた。


 右手を自由に使う最大の要因は飛び道具だ。

 暗器は蝶に刺さるが、それを確認する前に走っていた。

 蝶の目の前にきてパタを食らわすと、蝶は吹っ飛んで壁に激突して動かなくなった。


 フライの方は雷と火球両方を食らい、かなりのダメージを負っている。

 少し距離をとり、裏手をとった。

 近くにいる俺を警戒してか、フライはこちら側をみる。


「やれやれ、それじゃ後ろから狙い撃ちにされるぜ」


 後ろからメルザが氷斗の尖った玉を、フライにうちこみ奴は動かなくなった。

 あっという間の、俺たちの勝利である。

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