第十九話 初めてのお買い物

 朝食を終えた俺たちは、部屋へと戻る。

 すると、カカシがパモを乗せてまだ寝ていた。

 パモは俺たちが来ると、寝坊していたことに気づいてか、朝食をとれずにしょげていた。


「ほら、パモの分」


俺は持っていたパンをパモに渡すと、すり寄って喜ばれた。

本当に可愛もふもふだ。


「んで、今日はどうするんだ? ルインは行きたい場所があるっていってたよな」


 メルザはベッドに足をぷらぷらさせて尋ねてくる。


「今日はブルザの鍛冶屋、ガンツの道具屋

それと幻魔の神殿に行こうと思う」

「俺様も行こうかな。買い物なんてした事ねーしよ」

「僕も鍛冶屋に行きたいな。好きなんだ、道具作ったりするの」

「私は道具屋に行きたいわ。勿論盗んだりはしないわよ!」

「わしはここでパモと寝て居ようかの」


 どんだけ寝るんだよ! まぁいいけど。パモも気を遣ってかカカシと一緒にいるようだ。


「じゃあ行ってくるよ。留守番頼むぞ」


 そういって俺たちは町に出る。相変わらずこの町は、夜のままだ。

 まずはブルザの鍛冶屋からだな。ここからは近い。

 少し歩いたとこにある、ブルザの鍛冶屋に着く。


「よぅ若いの。初顔だな。いらっしゃい。好きに見ていってくれ」


 店内は所せましと様々な物が並べられている。主人は人間のように見える。

 骨じゃなくてよかった……別に骨が嫌いなわけじゃないんだけど。

 ニーメを見ると、目をきらきらさせて店主と会話し始めた。

 鍛冶製作に興味津々て感じだな。


 俺はというと、鍋や、具材を切るための包丁のようなものを探す。

 早速手頃なナイフを見つけた。鍋に包丁、それからフライパンのような物も欲しいな。

 武器や防具のような物はやっぱり見当たらないか。これは後日別の店で調べる

必要があるか……おや? これは何だろう。アナライズしてみるか。




 願いのロケット 【マジックアイテム】


 イメージを内にためておくマジックアイテム

 保存したイメージをいつでも見ることができる

 いれられるイメージは一枚だけで、上書きされる





 ……面白いアイテムだな。これも買っていくか。

 一通り見終わったので、店主に欲しいものを頼む。


「全部で金貨一枚と銀貨三枚だ」

「はい。これ全部セサミの宿屋に持って行ってくれないか?」

「あぁ、あそこに泊まってるのか。構わないぞ。名前を教えてくれるか?」

「ルインだ。そういえば女将にも通じるはずだ」


 荷物の宅配を頼むと、快諾してくれた。

 ニーメは名残惜しそうだったが、あまり時間をかけていられない。 

 次はガンツの道具屋に向かった。この場所からは、そんなに離れていない。


「よう、らっしゃい! おいおい良さそうな籠手持ってるじゃねえか。

うちに売ってくれりゃ高く買い取るぜ! 

そっちの嬢ちゃんも随分と上物の服着てるなぁ……おっといけねえ

俺ぁガンツってんだ。ひいきにしてくれよ!」


 さすが鍛冶職人とは違い商売上手そうだな。

 うちに売ってくれってことは買い取りもしてるのか。

 換金所があったからそこだけかと思ってた。


「ちなみになんだがこの籠手いくら位になる?」

「そうだなぁ、ぱっと見で金貨十五枚ってとこだな」

「そ、そうか。考えておくよ」


 ファナが滅茶苦茶籠手を見ている……やらんぞ! これは! 


 店内はかなり広く、色々な物が置いてある。特にアクセサリー類が多いか。

 流石に女の子なだけあって、ファナもメルザも楽しんで見ているようだ。

 あの二人、こうしてみると結構仲が良いな。


 ……おっと。俺は女子の買い物を見にきたんじゃなかった。

 まず食器……六人分か? いや十人分ほど用意しておこう。

 さじも十個、箸みたいなのもあれば欲しいんだが見当たらないな。

 飲み水を入れるグラスも欲しい。それから布団も足りないが売ってないな。

 商品を見ていると、メルザとファナは商品を手に取ってこちらへ来る。


「なぁ、ルイン。これ買ってもいいか? 二人で話して今後役に立つと思ったんだ。なぁ? ファナ」

「そうね。私とメルザが両方身に着ければ、きっと役に立つはずよ」


 そういうと二人はそれぞれの手に持ったものを見せる。

 よくわからないので俺はアナライズしてみた。


 紫花の髪飾り(防毒IV耐寒性I) 【マジックアイテム】

 シャーマンアイリスを象った美しい髪飾り

 身に着けた者は毒への抵抗が強まり

 わずかに耐寒性もあがる

 扱いが悪いと壊れることがある


 藍色(メコノブシス)の髪留め(毒付与II) 【ノーマルアイテム】

 メコノプシスをあしらった藍色の髪留め

 世界で一番美しい青花の名の通り非常に美しい色合いだが

 毒の作用を高める効果がある

 扱いが悪いと壊れることがある



 これは確かに二人にうってつけだ。

 おっちょこちょいなメルザに毒は危険だし、ファナは毒をとばせる。

 今後の事を考えれば買っておいた方がいいかもしれないな。


「なぁガンツさん。これら合わせて全部で幾らになる?」

「そうだな、全部合わせて金貨十三枚ってとこだな」


 やはり所持金じゃ買えないか……けど女子二人にあんな目をされたら

男として食い下がるわけにはいかない。


「……この籠手を高く買ってくれたらこれら全部買おうと思うんだが」

「おう、兄ちゃん商売上手だねぇ。んじゃちっと見せてもらうぜ……ほう、こいつぁ

思ってた以上の上物だな。わかった。それじゃこいつを金貨二十枚で

買い取ってやろう。差し引き金貨七枚だがそれでいいか?」


「あぁ、無理を言って済まないな」

「なーに、両手に花で大変そうだが、こっちも良い物を仕入れられて助かるよ。

またいつでも来てくんな!」


 俺は金を受け取って髪飾りと髪留め以外を宿屋に送ってもらうよう頼む。

 二人にそれぞれのアクセサリーを渡すと、二人とも最高の笑顔を向けてくれた。

 

 女性のこの笑顔を見る喜びは、前世でも現世でも同じなんだろうな。

 一通り買い物を終えた俺たちは、幻魔神殿へと向かうのだった。

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