第二十話 幻魔の神殿

 買い物を済ませた俺たち一行。

 懐が温かくなり腕周りが少し寂しくなったが、喜ぶメルザとファナを見て、俺も満足する。

 

 ニーメにも何か買ってやろうと思ったが、ニーメが欲しい物は

あの店にはないようだ。

 金槌と打つスペース。それから鍛冶作業場所が欲しいらしい。

 鍛冶スペースはメルザの領域の一角、未使用の洞穴が使えるかもしれないな。

 問題はあの領域のスペースが狭い事か。


 ――しばらく考えて歩いている間に、夜の町に佇む神殿らしきものが見えてきた。

 神殿内は不思議な構造なのか、とても明るく人族でない方々が何人もいた。

 受付のような場所があり、そちらへ向かう。


「ようこそ幻魔の神殿へー。こちらのご利用は初めてでしょうかー?」

「はい、実は呪いを解くような方法がないか確認したいのですが」

「残念ながらこちらではそのような内容のものは御座いませーん。

こちらでは主にジョビリティーの付与や、ジョブ適性を調べたり

ジョブをコンバートして闘いをより有利にするための場所ですー」

「すみません何を言っているのかよくわらないのですが……」


 知っている単語がほとんどない。まずジョビリティーってなんだ。

 ジョブ適性を調べる? 闘いを有利にできるための特訓でもできる場所か? 


「説明するよりそうですねぇ……お兄さんお一人だけ無料で

見てあげますからこちらに手をあてて下さいー」


 そう言うと、受付の人は四角い紫のオーラのような物が漂う物体を指し示す。

 受付の人に言われた通り、それに手をあてた。謎の四角い物体に文字と文様が浮かぶ。


「へぇ、剣闘士さんですねー。この紋様は何でしょう。

私も初めて見ますー。赤い眼のマークにこっちは意志の印ですねー。

ジョブ適性は読心士、ソードアイ、剣士などなどですね。才能、あると思いますよー」


 受付の人はゆったりとした口調でそう告げる。


「それからジョブコンバートは経験が足りな過ぎて

出来ないって表示されましたー」


 経験が足りないってそりゃずっと戦ってた訳じゃないからなぁ。

 前世では戦闘なんて無縁の場所だったし。

 そもそもここには呪いを解くために来たんだが……それよりもこの話に、メルザも

ファナもニーメも興味津々だった。

 これならカカシも連れてきた方がよかったのかな? 今度連れてこよう。


「他の方も調べますかー? お一人調べるのに、銀貨一枚ですー」

「わかった、せっかくなら調べてもらおうか」


 俺は銀貨三枚渡して他の三人の適性を調べてもらった」

 すると以下の事がわかった。


 メルザ・ラインバウト


 ジョブ 幻魔士

 ジョビリティー 燃斗 氷斗 風斗 土斗

 ジョブ適性 幻魔士 遊幻士 連幻士 フラクタル幻士

 ジョブコンバート 経験が低すぎて不可


 ファーフナー


 ジョブ トランスフォーマー

 ジョビリティー 変身(ワーム) 変身(バット) 

 ジョブ適性 トランスフォーマー メタモルフォーチュン トランスバンディト エネカイザー

 ジョブコンバート 経験が低すぎて不可能


 ニーメ

 

 ジョブ 修理士

 ジョビリティー なし

 ジョブ適性 ブラックスミサー アーチャー エングレイヴァー

 ジョブコンバート 経験が低すぎて不可能



 結局全員ジョブコンバートは無理か。

 しかしこれはかなり有力な情報じゃないだろうか。

 ファナが変身を二種類できるのは知らなかったし

 ニーメが修理士なんて……きっと苦労して育ったんだな。


「さすが俺様だな! にはは」

「バットに変身出来るなんて自分でも知らなかったよ?」

「ちゃんと将来鍛冶屋になれそうだ、やったー!」


 三人とも喜んでいるが、今は特別変わったわけじゃないぞ! と心の中でだけ囁いておく。


「以上になりますー。ご利用ありがとう御座いましたー」

「ちょっと聞きたいんだが、この呪い解く方法を知っている人に心当たりはないか?」

「それでしたら、神殿長にお見せしてはいかがでしょうー。

呼んで参りますので少々お待ちいただけますかー」


 受付の人が神殿長を呼びに行く。

 しばらくして、髭を蓄えた、いかにも! な神殿長がやってきた。


「お待たせした。私がこの幻魔神殿の神殿長を務める

バウザーである。ご用向きは呪いの解呪であったが相違ないか?」

「あぁ、俺はルイン。こっちがメルザにファナ、ニーメだ。

この腕輪をニーメに貰ったんだが、かなり強い呪いがかかっているみたいなんだ。解呪できそうか?」

「ふむ、拝見させて頂こう……ふーむこれは! こんな強い呪い、とてもではないが

私には無理だ。そもそもこれを人為的に解ける方法などない。

あるとすれば……デイスペル国は知っているか?」

「いや、俺たちはあまり別の国事情は知らなくて」


 この国の事だってよく知らないのに、他国の事までは知るはずもない。


「デイスペル国は大きな闘技場のある町だ。

二年に一度、大きな闘技大会があってな。その闘技大会の景品に

絶:解呪の書というのがあるそうだ。それを持ってくれば或いは解呪出来るかもしれぬ」


 闘技大会か。興味はあるが今の俺たちでは無理だな。

 ただ、一応確認しておこう。


「大会に参加するにはどうすれば?」

「今は大会が終わって半年。参加期間外だ。しばらくは修練を積むとよいの

ではないか? 十分な実力がついたと判断したら再度ここを訪れるがよい。ただ強くなる

といってもどうすればいいかよくわかるまい」


 そういうとバウザーは三枚カードを出す。


「先ほど調べたジョブ適性に合ったカードを安く売ってやろう」


 俺たちはバウザーからそれぞれ幻魔士初級、トランスフォーマー初級、剣闘士初級II、修理士

初級のカードを受け取った。代金として金貨一枚を支払う。

 

それぞれにバウザーが火をつける。


「もし修行を積むなら装備をもう少し整えてから行くがよい。

そのシミター一つでは危険だろう。レジンの快鉄屋に行き、私の名前を出せば

知り合いが其方らにあった装備を提供してくれるだろう」


 そう告げると、バウザーは祈るようなポーズをとり、俺たちを見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る