第7話

山中を黙々と歩いてどれくらいになっただろうか?ペースを少し落としたから疲れは感じるけど、慣れてきた気がする。


舗装された場所に出ないということは俺が歩いている山はかなり大きいのか人の手がそこまで入ってないのか、または俺がとんでも方向に進んでるか。


というか、この山。動物の気配すらないな。普通、離れた場所から何だかよく分からない鳥の鳴き声とか聞こえると思っていたがこんなに聞こえないもんか?


たまに、何の骨か分からない骨が転がっている。人間のじゃないとは思うが多い気がする。おおよそ15歩進むと転がっているのが目につく。あと、白い粉の小山とか。両手で掬って4、5杯くらいの白い粉がこんもりと小山になってるのが骨の代わりに目につく時もある。


何なんだこの山。


ん?線香の匂い?が何処からかする。んん?こっちか?


俺は線香の匂いがする方向へ歩いていく。予想としては慰霊碑とかに辿り着きそう。…流石にお供え物を食べる度胸はないけどあてもなく歩くよりマシだろう。


…骨の数と白い粉の小山が増えてきたな。このまま進んで本当に大丈夫か俺。


0感だから心霊現象とか感じない俺でも何かあるかな?いや、こういう時ってよく"呼ばれてる"って言うんだっけ?…縁があるって思って進むしかないよな。


しばらく、うだうだ考えながら匂いだけを頼りに歩き続けてると線香の匂いに甘い匂いが混ざったような気がする。


なんの匂いだこれ?線香の匂いに近付くと甘い匂いが強くなる。嫌な感じの甘い匂いだ。


…これ、腐敗臭だ。動物とかとは違う。前世の小学校のウサギ小屋とはまったく違う。吐き気を催す嫌な臭い。嫌だな嫌だな。


鼻をつまみ、口呼吸で臭いを意識しないように進むと拓けた場所に出た。


地面には砂利が敷き均されていて、山の斜面を背に3mくらいの無骨な何の石か分からない慰霊碑みたいなのが建っている。


慰霊碑?に近付いてみるが表面に文字の類いは皆無。裏の方を見ても同じ。


今気がついたが、線香の匂いや腐敗臭の元が見当たらない。なんでだ?


慰霊碑?の周りには何も無い。周囲を見渡すと簀子が砂利に埋まっているのを発見。アレの下か?


なんの警戒もせずに近付いて、しゃがんで簀子の周りの砂利を手で掻き分ける。


簀子の全体が見えたから俺はヒョイっと簀子を退かした。


?????


簀子を退かした、その下には梅干しとかぬか漬けが入っているような少し大きめな壺が出てきた。蓋は布を被せて紐で縛っただけ。


これから匂いがしていたとは考えにくいが、とりあえず開けてみるか。


蓋の布を引っペがしてみる。んん?壺の中に入っていたのは不思議な色をした液体だった。アルコール度数が高い酒に火を着けたようにゆらゆらと七色の色が揺らめいている。試しに液体を手で触れてみるが熱くないし冷たくもない。不思議だ。少し手についた液体を舐めてみる。む!?なんだこの前世も含めて今まで口にしたこともない旨味は!舐めれば舐めるほど旨味が口に広がる。


もっと!もっと口にしたい!俺は両手で壺を持ち上げて零しながら液体を口にした。


徐々に壺の中身を浴びるようにしながらゴクゴクと一心不乱に飲む。


そして、あんなにあった液体を全て飲み干してしまった。身体についた液体も舐め取ろうとしたが既に乾いていた。おかしい。口も首も胸も腕も液体でびちゃびちゃだったはず。それに無風なのにもう乾いた?何故?


と考えていると頭が痛くなってきた。いや、頭だけじゃない全身が痛い。


立っていることも出来ないくらい全身の痛みに耐えきれなくなった俺は歯を食いしばって声を押し殺した。


痛いと言うのが前世から嫌いだった。それは今世でも同じで、よく痛いと言うまで鞭打ちされたな。今の痛みよりも鞭打ちの方がまだ優しかったのだと今、俺は思った。


どうでもいいことを考えてないと痛みに支配されそうでそれが更に嫌だった。


だけど、全力でのたうち回るぜ!あっ


のたうち回っていたら下り斜面へダイブしてしまった。やっちまったー!うわあああ


こんな時に限って、木々がない斜面を下るとか運が無さすぎなんですけど!!ああああああああぁぁぁ!!


だ、誰か止めてくれ〜!目が回る!


というか、意識失いそう…起きた時に無事でありますように、ガクッ

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