第5話
これから俺は何もない状態でも稼がなきゃいけない。身体さえ傷がなければ男娼かAV男優としてなんとか食いつないでいけたが、これではすぐにダメになる廃棄向けに回されかねない。
考えて考えた末
仙人になったろ!
と地元で有名な通称"竿捨山"という世間から必要とされなくなった男を捨てた山がある。多分、姥捨山のことをこっちでは竿捨山と言うんだろう。
何故そんな曰く付きの山になど行こうとしているのか?それは捨てに来る女は居ても拾う女は呪われるからいないらしい。何故かは知らん。淫行教師はそこまで知らなかったし。
それにしても、くっそ寒い!元ご主人様も酷いよな。こんな真冬に上半身裸で下半身はブーメランパンツ一丁で外に締め出すんだもんな。初めての男に思い入れもないんだろうな。はぁ、嫌になってくる。
山へ向かってるんだが、性欲に忠順な女達が襲いかかって来ないな?何でだ?…何でだじゃないな。全身傷だらけの男なんて気味が悪くて発情も出来んか。男としても人間としても俺はもう終わってんな。はっははは!
俺に近付くタッタッタッという足音。年下の女の子かな?何の用だろう?
「ねぇ、お兄さん。」
「ん?」
「そんな格好して寒くないの?」
「寒いよ。けど、仕方ないよね。捨てられちゃったもん。」
「ふーん、お兄さん傷だらけだし汚いもん仕方ないよね。」
「そうそう、だからこれから"竿捨山"に行くんだよ。」
「死んじゃうの?」
「どうだろうね?」
「??」
「男を大切にしないと俺みたいになっちゃうから傷をつけてもほどほどにするんだよ?お嬢ちゃん。」
「あ、お兄さん。」
「ん?なんだ?」
「お名前教えて」
「ごめん、無いんだ。名前」
「え?」
そう、俺は五島健司だが、戸籍上の鈴々木司くんは死亡扱い。11年間俺を飼っていた女達は俺のことを"犬"と呼ぶだけ。それは名前だけでなく人間という種の否定。それ故に、今の俺に名前はない。いつ死んでも良いということだろう。俺は愛していたつもりだったが、どうやらこの世界には愛という概念はほぼない。あるのは欲だけ。素晴らしいね。反吐が出るね。
女の子がまだ何かを言おうとしていたが俺は止めていた歩みを再開させた。さぁ、仙人への1歩2歩♪
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