藤壺にて、姉妹のささめごと
出仕
「宮仕え、ですか」
「ああ。関白様から、是非にと頼まれてしまってね」
お父様が、困ったように眉を下げました。
お父様は名を
ただ、世渡り下手で、少々抜けているところがありました。良くも悪くも野心がなく、周囲から慕われはしても富や栄華とは無縁なのです。そこで、厄介事を押しつけられることはしょっちゅうありました。その度に、
それにしても、宮仕えとは。人づきあいが苦手な
「
「お父様のせいではありませんよ」
関白様の命ともなれば、逆らうすべなど最初からありません。逆らったりすれば、
「そのお話、お受けしましょう」
上手くやれる自信はありません。生まれてこのかた、お父様や家人以外の者と関わった経験など数えるほどしかないのです。恋の駆け引きも不得手で、そろそろ婚期を逃してしまいます。
こんな歳まで面倒を見てくださったお父さまに、そろそろ報いなくては。
✿ ❀ ✿ ❀ ✿ ❀
それからの日々は、慌ただしく過ぎ去りました。
たしかに、お父様から教わったので和歌や漢詩の知識はあります。特に、和歌の腕はかなりのものだと褒められたことがありました。
とは言っても、
お父様と共に、邸にある歌集を掘り返しては片っ端から読んでいきます。
同時に、装束などの準備も進めなくてはなりません。我が一族は才が著しく文学に偏っているため、こういったことは不得手です。ただ、財力に乏しく家人も少ないため、自らやるしかありません。
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