第10話

・私は彼の腕にぎゅっと抱きしめるような感覚を覚えた後に 抱きつく形のまま歩いてはいましたが。

……何かに怯えているかのように 小刻みに震えていられたのです それはそれで構わなかったしむしろそれが目的でもあったのですけど……少しばかり予想外の展開になってしまいましたの ですけれど、彼がどうしてそんな行動をとった理由だけは、分かりませんでしたわね。

(その状況に陥ったときこそ私にとって好都合だったという事ですから何も問題は有りませんし特に問題視する必要性を感じませんもの それよりも今はこれからの行動を取るべきですね 現状ではただ逃げる事だけに集中するしかなく無駄に消費されるよりかはそのほうが遥かに有意義と言えるわけです とにかく急がなければ取り返しつかない事が起きかねないため彼にそのことを伝えようか迷っている最中であるものの私が口を開けばこの場に静寂が訪れたとしても 一向に構わないと考えているので口を開くことにしますわ。

当然ではありますがその瞬間彼は動きをピタリと止められていますの それだけではなく驚愕した様子で私の顔を凝視しているのです ふふっ……

驚きに満ちた表情というのも存外悪くないものですのよね……うふふっ とまあ……これ以上彼を観察していてもよいことなんか無いでしょうし、そろそろ真面目に取りかかりましょう)えーと……貴女のお名前を聞かせて貰えるかしら

(一瞬だけ躊躇いを見せていたものの、それでも言わないといけないといった意思があるようで名を名乗る事になったようだ。勿論偽名だ)なまえは、りあ、といいます。おじょうさんは・・

(ここで初めて自分の名前を伝えてくれた)あの男の、言うとおりにした方が良さそうだな……。とりあえず、ここで待っててくれるか(と伝えたのは良いんだが……何故か不満そうにしているように見えるぞ……。というか不満だ!不満すぎる!!いや、だって、まだあの男の仲間らしき人がいるかもしれずそんな場所で無防備になっている彼女を放置するのは危険極まりないしかと言って彼女から離れるというのは僕自身の身が危ないためそんな事を言うことも出来ない……。仕方ないが……不本意ではあるもののこうなったのだから後はもう自分の命を守るために最善の策を実行しようと決めていた。

僕がそんな行動をしようとしているだなんて露知らず。彼女は相変わらず不機嫌な態度を取っていた。どうすればいいんだよ……ったく(こんなところで時間潰す場合じゃないっていうんだった……早く捜し出さないと手遅れになった挙句最悪の事態に繋がり兼ねない)悪いんだけどちょっとだけ離れさせてくれないかな?お願いだから頼む(一応僕なりに真剣な雰囲気を出して言ったつもりではあったが内心は非常に焦っていたりする。何故ならば彼女に言われた通りに待っていたのだ だが予想を反する形で少女がいきなり腕にしがみ付くように張り付かれてしまえば流石の僕も戸惑わないはずもない、のだが……この状況で下手なこと言えば何を言われ、或いはどう思われてしまうかと考えると言葉が出て来なかった そんな時彼女の方を見てみると何かに気付いたのか、腕をしきりに指を指してきた。僕は促されるがままその方向に視線を移すと、そこに一人の少女の姿があった そして気付いたのが、その人物はこちらの様子をじっと見つめているということだった。そして同時に違和感を覚えてしまったのだよ 何故だろうかと考えてみればすぐに気付き得たことだとは思う それはその少女が……先ほど自分を取り囲んでいた男達の一人ということなのだから……!! だからこそ気づかぬフリをしたわけだよ、何せ下手に反応を示すわけにもいかないため、な(とりあえず一旦冷静になるため頭を冷やしてから対応しようと思った その時に何が起きているのかよく分からずに首を傾げていたが、それでもこの状態で会話を続ければボロが出ると判断した結果、話を切り上げようとしたんだよ

「っ……。……ご、ごめんなさい、ぼく……その」

すると突如として泣きそうな顔をしながら、謝ってきた。

はぁ~……ったく仕方ねぇ。とりあえず外に出てあいつ等を捕まえるとするか(仕方がなく腕に付いている子供を下ろし、一人で行こうとしていたら腕が突然痛み出すんだよ。その光景を見ていたアーシェスちゃんと呼ばれていた女の子は僕の事を睨み付け、更に泣かせまいとしているのか涙をこらえながら必死に僕の手を握りしめてきては引っ張ってきてくれるのだった

流石にここまでされると無視はできないため、泣く寸前で何とか踏み止まれていたため軽く溜息が出つつもゆっくりと歩き始め、手を繋いできた子供と共に廃墟の外に出ることに成功した。その時であった さっきの男達が一斉に現れ、まるで包囲するかのようにして現れたのである さて……これで逃げられない訳か……どうしてくれよう(正直どうしたものかと困り果てていたものの……このまま何もせずに居てもどうもならないし、取り敢えずこの子だけでも逃さないと、と思ってはいるものの肝心の方法が今のところ見つからないというね……。……どうすんべこれ。さすがにこれはやばいよまじで 今現在僕に付いてきてる子供達の中で一人だけ異様に目立つ銀髪の少女が居る。見た目的に10歳ぐらいだと思えるほどの童女の割にはどこか大人びた口調をしている まあ確かにそういう子供も存在するけど……いやまあ別に年齢に関しては何も思っちゃいないさ そうではなくて、だね。さてどうやってこの状況を乗り越えるか・・・考えてはいるがこの子が傍にいるためにあまり大掛かりな攻撃も出来ないというのが現状だな)・・うーむ ああ・・・・そろばん?そういえばそんな名前のお嬢さんがいたような・・・いませんねえ そろっばそろ~

(そうこうしていたら奴等が襲ってくるんだもの。しかも相手全員銃刀法に引っかかってんじゃないのって思ってるほどの刃物持ってますわ。本当に怖いんだが……)ふぇえ!? あっ・・うあぅ

(取り敢えず怯えている子供の頭を抱きかかえる形で、そのまま一緒に逃げる体勢に入った。まあ勿論それでうまくいくはずはない)おいお前、その子を放してもらえないか。その子はまだ保護しなければならないお荷物でありましてな、それを勝手に連れ去ろうとしているとあれば見逃す事は出来なくなる さあ、君達はそこの者達を捕まえるなり好きにしてください。後は任せるとしましょうか

(え……何言ってんの意味不明なんですが……ってあれ・・・待て待て、どういう状況ですか・・・・・・もしかしてあの子攫われてたりしました・・ってそんなわけあるかい!いやもう意味分からんぞこれ一体なんなんだこの状況……そもそもだね。僕が何したっていうのか説明してほしいね)

それとどうやら

モンスターまでも現れたようだ。だがこんな程度の連中 相手にもならん。私に任せていただこう では皆さんよろしくお願いします(この場にいた人達に対しそう伝えた後何故かアーシェスが出てきて、男達と交戦を始めた。その間に何とか逃げようとする僕だったが案の定周りからは止められた)ちょっ!?まっ……!危ない……危ないですよ!それこそ命の保障できないし下手すりゃ死ぬんですよ?あなたはそれでも……ッ!良いというのかっ! な……何を言っているんだい君は……?いやその前にどうしてそんなに冷静に突っ込んでくるのだね(そういいながらも私の方は次々と倒していく)こんな奴等はまだまだです。それに私がここで死んだところで誰が悲しくなると思いますかね?むしろ喜ぶべきことかもしれませぬね(淡々と語る彼女の様子を目の当たりにした後で、僕は改めて思い知らされた……自分がどれほど非力であるかと。

だからだろう、彼女に頼るしか他に方法がなかった。それが結果としてどんなに残酷なことであろうとも。例え自分の身を犠牲にしてしまうことになったとしても そんな時である 僕の目の前に立ちふさがるのはあの時出会った黒い化け物のような姿となった、黒龍と呼ばれる存在。僕は即座に武器を持ち応戦しようとしたのだが、先程の怪我がまだ残っている上に相手が手負いなせいもあって勝算はほぼ無かったに等しいといえるレベルの戦いになってしまった。

そこでまた一つ誤算が生まれ、彼女は僕の事を守らなければならなくなったということだ、結果的に言うなれば彼女を庇わなければならないという状況に陥ってしまう事になったということ まあそのおかげで死にかけはしたものの、何とか倒す事が出来た。そのおかげだろうか、いつの間にかさっきの幼女が僕の膝の上に乗って寝ており、それを見下ろしつつ微笑ましい笑みを浮かべてしまう(その光景を見てしまった男は一瞬呆気にとられてしまったものの気を取り戻し)さっさと逃げよう(あからさまに焦った声で、すぐにアーシェスの腕をつかんで立ち上がらせた アーシェス

「きゃっ……」

「っつ……!?」

いきなり掴まれたことでびっくりした表情をする。

だがその直後男の体から火が出たように見えた

「……」

ただ黙った状態で見下ろす形で彼を見ると……体が半分くらい溶け始めている……っ……く、ぁ……あ(アーシェスに何か話しかけようとしているのだけど、声がうまく出てこないらしい)あ、れ……?ぼ、ぼく……いったい何をしちゃったんだろう……。ごめんなさい……で、でも こ、この子をたすけないとっておもい……

そしたらね……そろりそろりと……きえてなくなっていくんだよ いまのきみみたいにね

(そういう間にもアーシュの手を強く握っていく、離さないようにと言わんばかりに)……うん?いや待ってくれよまさかこいつが消えるとは・・・いやまあそういうこともあるかもしれないんだけど……うーむ、やはり分からないことが多すぎる

(そう思った矢先にさすがにまずいと理解したのか必死の形相をした男が叫んだ瞬間であった)ちょっとアンタ!!なにうちの子供さらっとってんだ…………って、は?何がおこってんのこれ……え、ちょ、な、は?い、今そこにいる子が二人いたような……えええ?な、なわけないよねーはは ってあんたが持ってんのうちの子じゃん はい捕まりました(あえー?おっかしーな・・僕って一体何に巻き込まれてんですかねぇ……

えー……とりあえずあれですね、よくわかんないけどもう疲れてるのであれ・・もう諦めますわ、ハイ(そんなことを言いつつ、なぜかこの人等について行く事にしてみれば どうせ帰れないしなぁ・・・。そしてついた場所はどう見ても普通の家じゃありません・・・完全に屋敷と言っていいレベルの場所で。どう見たって僕なんかが来られる場所じゃないっつの って考えてたのがつい数分前のことなんだろうけど・・・今現在僕が何をしてるかって言われれば、まあ簡単に言っちゃえば尋問されてます、はい でまああの女の子を攫おうとしたら急に現れた黒い人に殺されて、そこからなんとか生き返れたと思ったらここに連れて行かれ 何やら怪しげな機械を使って脳波とかを取られています。しかも両手両足縛られたままで。正直この時点で怖いです。ちなみに他の子供も同じ部屋にて待機しており まあそっちは特に何もされず、ただ不安げにしている感じ。そう、つまり僕は人質状態となっている訳であり、だからこそ逃げることが出来ないのですよ(で、結局この人が犯人で、あの子供を攫おうとしてたところだったとのこと)

んでもなんでか、ここの施設にいた奴等は突然変なことに、それこそ死んじまったんだぜ?それも、普通死に方としては有り得ねえだろみたいなさ?まあお陰であいつとかいともたやすく殺せて楽しかったんですけれど。という会話の後である。そんな時に扉を開けた女性が入って来ると一言だけ口にして去ろうとするも……あの~あなた誰……?いやその前に名前も知りたいんだけど(と彼女が口を開きかけようとするもののそれを察知するとすぐさまこう話を切り出していく男)名前は教えれない、だって俺達殺し屋だし、こんな場所に顔見せれらんねえもん、特にあの人の前では絶対に。という具合にどう聞いてもおかしい事を答え、また出て行こうとするのだがそれにしてもどうしてここまで来て名乗ろうとしないのかが不思議だったので、それを尋ねた結果。

その人は振り返ることなく立ち止まった後に……へぇ、君良い目を持っているようだね。その洞察力には恐れ入る、といった風に告げてきたあとに再び歩き出しそのままどこかに行くのであったが。その去り際の言葉が気になってしまい もしかして気付いてしまったのかな?ならばあえて聞くこともなさそうだね、と言ったのち再び立ち止まってしまいこちらに背中を見せた状態で佇み続けていき、さらに言葉を付け加えていくのだがそれは果たしてどういうものなのか 少し興味を持ったので聞こうとするのだけれど……残念だが教えることは出来ないのだよ、ま、自分で探してみるのもまた一興ではないのか、という返答が来た後で去って行った。まあこういうときに限って大概そういうことは起きやすいのがセオリーであるから、何かがあるという事だけははっきりと分かっている。

だからといって、それを深く考え込んでしまってはこの場で気を失ってしまう可能性すらある。となれば……

今は、一旦この子の面倒をしっかり見てあげなければ、と考えていきその後無事に彼女から事情を聞き出せたので、ようやく帰ることにしたという事らしいとの事。だがここで問題が。

その子供の母親がいないと言う事で彼女は途方にくれてしまい その結果彼女は迷子になってしまうという状況になってしまっていたらしく また僕を巻き込んだということに負い目をすごく持たれていて……

アーシェス(アーシュ):では今すぐにその子を見つけなくては。

すみませんがお名前を伺ってもよろしいでしょうか? もしよかったらあなたのお母さんの外見を。

また何か手伝えることがあったら何でも言ってください! 私でできることがありましたなら、全力で助けに……あ、 い、いやその……。

な、なんでもありません……。(あ、ヤバいなコレ……これアレじゃね?絶対惚れたわコイツ……

え?じゃああの男の人の好きなタイプを聞いて来てくれ?うーむ どっちかというと頼り甲斐があって守ってくれる様な人が好……あ ち、違うよ今の無しッ!!)……と とと、とりあえずそういうこと聞き出して来て欲しいんだけど。

アーシュ

:分かりま・・・いや、分かった……です。

(男の人とすれ違い様に小声で話しかけていこう。

(・・・ねぇ。お願い。協力してくれる?)

(……)

(もしも、母が何かに狙われるようなことになったりしていたとしたら私は 何をすべきだと思う?)

(・・・)

(ふぅー・・・)ありがとう……。すまない、時間取らせて んじゃ、よろしくなー? そして彼はその場を離れて行く……と

(とりあえず・・・って、ええ!?ちょ、は、はぁぁぁああっぁぁっぁ?え、待って、ちょっと待ちなさいよおいコラ、アンタ何逃げてんのよー?!)そしてこの瞬間、何故か彼女の恋心は一瞬にして砕け散ったという……何はともあれまずはこの子の母親の情報を探すためにいろいろ質問を投げかけていくことにしてみると 母親は仕事の都合上たまにしか帰ってこないという事が分かってきた そうこうしてるといつの間にか夕方になり、もう夜になるというところまであったので、今日の捜索を終わりにし、もう暗くなって危ないので自分の家の近くまで送ってあげる事にする。その途中。彼女は思い詰めたように俯くもののその口から出できたのは感謝の言葉ではなくただ一言、どうしてか分からんのだが……俺はお前のこと嫌いだぞ。といった感じのもので、そう呟いた後に更に彼女は言葉を紡いでいくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アルダートノート みなと劉 @minatoryu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る