第9話

後・・・)はい……私、は……ラクスティナ・アルフォード、です(途切れがちな喋り方であったがはっきりとそう言われた……その時には何故か先程までは感じられなかったはずなのだが強烈な威圧感のようなものが襲ってきたことで冷や汗をかいて焦っている状態だったため深く追求するような真似をする余裕もなかった)。その、こんな姿見られて・・・ちょっとショック・・・です、はい。

(僕としては全く予想していなかったことだった為か酷く驚いた様子を見せていた。それもそうだ、初めて聞いた名ではあったが名からして普通とは違うという事が既に分かるようなものであって、少なくとも僕と同じ世界の住人であることだけは明白になってしまっている以上彼女が何らかの異能持ちだと考えるのはそこまで不思議な話ではなくなっている。しかしながら彼女の様子を見る限りではまだ自分の身に何が起こっているという事は分かっていないように思えるくらいには感情というものが完全に抜け落ちていた感じが否めないほどに反応を見せない状態ではあったわけだから……。

ちなみにここまでの経緯については、まだお互いの素性がよく分からない状態であった為にどうしてそうなってしまったかという事情の説明を行う必要性があると判断できてしまうほどでした。だからこそ、その点を踏まえて話を切り替えるようにしないと駄目だという風に考えるとまずはこちらの話を伝えることにしましたよ……っとと、さっきから何をやってんだ自分)……僕の自己紹介の方はこれで終わりだけど、君はどうしてここに来たんだい……それにどうして僕の名前を知っていたんだ……そ、それより怪我しているけど大丈夫なの、どこか具合が悪いところでもあったりするならちゃんと言ってくれないかな。

(色々と気になっていたことを全部聞いてみようと思った途端、緊張からか妙なタイミングの良さが出てきて内心戸惑っていた。それでも今は質問をぶつけることが重要だと思いながら、じっとその答えを待つかのように相手を見続けていたのだけれど……彼女は小さく笑っていった)あの……わたし、です……名前教えた……ますたー、名前知って……てもおかしい、です??

(……えっとぉ……名前がおかしくて戸惑ったり、それどころか会話自体がおかしいとは思っていますけれどね…………マスターさん……マスターかぁ。そういえばこの子ラティクスっていうんだよねぇ……そうするとラティなのかな?)う……ぅん。僕の名前は確かに伝えた覚えがあったから……。でも名前を訊かれたなんて記憶はないよ?

(少し考える仕草をしてみせると相手が悲しげな雰囲気を放っていることに気が付いて困惑する事になるのだが、そんなこちらの様子を気にすること無く言葉を返してきたのであった。)……名前……教えてもらったんです……。さっきみたく名前呼べなかった時に代わりに……言ってくれたのを覚えてる……。(……そういえば最初に名前を呼んだときは全然まともに応答できても居ないし反応もしてもらえなかったという事もあった気がする……。あの時って確か名前だけ伝えれて僕の名前を教える事しかできなかったような気がするんですよねぇ。その後何度も呼びかけている内に僕の名前を呼ぶようになりましたっけ)あ……。その時かな……。

じゃああの後だったのかな……。君と出会った時の事はよくわからないけれど、多分僕は君の言うその名前を教えてくれた人と違うような気がする。悪い事を言っちゃったかも……。

(とりあえず、彼女にとって大切な存在の名前が間違って認識されていたらしいということでひと安心する事に決めていました……)ごめんね……私が忘れちゃったのかも。あの時は……何も知らない場所で凄く怖かった……。(やっぱりこっちもラティクスって名前のようだし……あ~。そう考えた瞬間、何かに気づいた様子を見せると共に思わず声を出してしまった……やばい)そ、そうなんだ……ってことはあの時も大変だったんだよね……。

(しかしすぐに我に戻る)いやあの別になんでも……。たださっきの言葉ってあの洞窟での一件と関係あるんじゃないかと思ってさ(そう。実は僕達があの後どうなったのかといえば、あの場所はこの子が元々いた世界ではなくどうやら他の何処かに召喚されてしまったのではないかと推測することができたからだ。もっとも確証はまるでないうえ状況証拠での判断になるわけではありますが、僕達だけが呼ばれたにしては他の人物が全くいないことがあまりにも不自然だと思いますからね……とはいえ現状ではまだなんとも言えないわけでありまして、今の時点での結論を言うとすればまず間違いなく彼女は僕とは異なる世界に居るであろう存在であると断言ができるくらいの状況になりつつあります)……ひょっとして迷子になったりとか、何か変なものに襲われそうになったりしたことを思い出したりしてしまったのですか……?

(彼女は先程までとは違う声音の変化から、やはり僕が違う世界の住人だという事に薄々気づいていたように思えたんだけど、それよりも何よりも彼女がいきなり抱きついてきたことの方がかなり問題だと思う)ちょっ……ど、どうしたんだ……!?(僕が慌ててしまった事も無理は無いでしょう。いきなり初対面の少女にこんな風なことされた経験がある人であれば誰しもその異常さを理解できると自分は思いたいですね……しかも目の前にいる子は無邪気に笑うという可愛らしさを見せてくれるもんなら尚更ですよ……と、自分に言い聞かせながらも突然すぎる彼女の奇行ともいえる行動を頭の中で理解しようとしていたせいか動揺を隠せていなかった)……もう一人じゃない。大丈夫……です、はい。だから、ずっと……守ってくれるから。

(途切れがちな言葉から不安を拭い去ろうと必死であるということを感じたのです……何故そこまでして必死になっているのかということを考えていくうちにある予想が出来たので問いかけることにした。)大丈夫だよ、そんな怯えることなんてきっと起こらないと思うしさ。ほ、本当だよ……! たださっき会ったばかりの人に何を信用すれば良いか困るのは分かるけど、その話を聞いてもらえるような人は近くに居たりするかな?(焦ってしまう自分がちょっとだけ情けない感じになってしまいましたよ・汗;)……居ます、お父様とお母様にいつも一緒にいてもらうんです。でも……貴方のことだって本当は信じているんです。さ、さっきの事でびっくりしたのは分かっていますから……だからもう離したりしません、絶対に……します。それに私にもできることいっぱいあります。戦うこととかもできるし……。

(さて。ようやく落ち着いてきたみたいでしたので改めて状況を確認していくとしましょうか。彼女が落ち着きを見せた後に一旦お互いは座るという体勢になった上で、何気なく疑問に思っていたことについて確かめていくことにしましょうかね……。と、思ったのだけれど、その前にひとつ試しておくことにしたのであった。まぁ何気ない確認でしかないけれど一応は、という訳なのですが。とりあえず先に名前について聞いてみることにしました)それで……君はどうして僕の名前をさっきは呼べていたんだろう?僕の名前は、君には伝えられなかったはずだった筈なんだけれど……。(これは実際にあった出来事からの確認でもありました)……?……?……ええっと。わ、分かりますけど。それが……どう、しました?(首を傾げる彼女に少しの間呆然と見惚れてしまいました)

え? あっはい、もちろん名前ぐらい知っていますよ(微笑む彼女をみて何故かほっとしている自分に気づいていたようでした……と、ここで彼女も僕の様子がおかしいことに気づく事になったらしい……あれ?そうなのか?)なにかおかしなことをいったつもりじゃありませんが……。名前教えてもらったの覚えてる、といいました。(うーん、やはりまだこの状況に慣れるまでもう少し時間がかかりそうな予感を覚えるのであった……)……そっか……。あの、良かったらもっと君の事を教えてくれないか?ああいや君の名前と家族関係って事は知っているから、それ以外の話をね……。

・彼女の近況がアルダートノートに記載された

・マルガーリの町へ行く事になった

(僕がそう言うと、彼女はまたも笑顔を浮かべながら口を開いた……ただしこの時ばかりはその笑みが何処と無く歪んでいるように見えたような気がしていたわけで、それは多分僕の勝手な勘違いだと思いたかったりする)……。わたしの名前……です。…………アシェ……。それから家……いえ、家はもうありませ、ある……かも。……家族。……いない……。ひとりぼっちで、ここへ来ました……。……名前は、アーシェス……。……ラティクスって呼ばれています。あの、これから……よろしくお願いします……。(ぎこちなさはあるもののそれでも丁寧に話す子だったらしく素直に感心してしまったりしながら会話を続けていました)

(しかしそれもすぐに終わったかのように思える程短い間だけだったのかもしれませんね……)……ねえ……どうしたらいいの……かな……やっぱりこんなこと迷惑だよきっと……。ごめんなさい……助けて貰っているのに……。駄目なのに……私はここに居てはいけない……それくらい自分でも分かるんです……だけど……ごめん、ごめ、さ、ごめんね……ごめんなさい……っ(先ほどよりも強い感情を宿した声音から涙目で訴えてくる様子が見えてしまっていた僕は流石に見過ごせなかった様子ですぐに言葉を返してしまうことになった……)泣くなってば……ああ全く。謝らなくて平気だよ、だから落ち着くまで泣けば良いよ(とはいえ泣いている女の子の扱いなんてまったく分からずで困惑しつつ慰める事しかできない自分の未熟さに腹立たしいものを覚えつつも結局は同じ事をしてしまっているんですよこれが。ただその時ふと思ったことが、僕に対しての依存度が非常に高く感じる部分があり、そのせいかもしれないと考えていたりしたわけで、まさかこの事が今後の厄介事に発展していくことになろうとはこの時の僕はまったく考えてなどいなかったのだが……。……ちなみにですがこれでもまだまだ優しい言葉をかけ続けているつもりだったんだよね)とにかくここは危ない。安全な場所へ移動するぞ……ついてきてくれ(と言い終わった直後には目の前の少女の手を引きそのまま抱き寄せている自分自身に一瞬驚いてしまいました)……(何故だろうね。こうしてみると妙に落ち着いている自分が不思議でしょうがなかったわけですよ……本当に。と、思ったりして。今こうしていることが一番大事なことだと思っているようだからこのまま黙っていてくれよと願いながらもその気持ちを隠さずに言葉を口にすることにしていた)大丈夫だ、守ってやる。今はただ従っていればよい!わかったな?(何やってるんだろう自分は……と思いつつ腕の中にすっぽりと収まってしまった少女を見やりながら、何故か離してはならないようなそんな気分になってしまうのでその感覚に従って行動していく事になりました……とりあえずそのあとは歩き出せば、今度は彼女も抵抗を見せないようにおとなしく着いて歩いてきてはくれて一安心していたのである……と。……これから始まる冒険を思ってか。無意識に浮かべてしまった頬釣り顔から意識を逸らすようにして頭を切り替えようとしていた……)……あ、あのっ(そんなとき、小さな声で話しかけられて思わず反応してしまった自分がいたんだけど……)どうした?何かあったのか?

(……い、いえ何も、ない、はずなんですけど……。貴方の事知りたくなっちゃったからとか、言ったり、なんか……。でも、それは私にとって必要なことでも貴方にとっては余計なことかもだし。それになんだか怖いような変な気配を感じるの……なんでかわからないのに……。

そしてまた唐突に思い出してしまい恐怖に飲まれかけていた私は震えが止まらず、それを心配してくれた彼は優しく接してくれているのが分かりますが私の不安はまだ消えそうにはありません……なので彼に、助けを求めていたのです。……そう。それが何を意味しているかを知っていたとしても、今の私を助ける事が出来る唯一の方だったみたいでした)あの、私を守ってくださり、嬉しい。私を助けてくれたのは貴……あなたが二人目の人。初めてお会いしたの。けど、さっきとは違うような感じが……。

(そう言って、彼女はじっと俺の目を見るなり急に押し倒す勢いで抱きついてきては胸元へ顔を近づけてきているんだがこれは一体……しかもこの状況だとお互いの位置が上下逆になってるせいでちょっと見えてしまいそうになったものだから咄嵯に視線を動かしながら考え込んでいる間に彼女の身体を押し返すことに成功していく……。いやそもそもの体勢の問題もあって力が入りにくかったこともあると思うけれどね……。それから暫くの間はお互いに無言のまま向かい合っていたわけなのだが……ようやく彼女も我に返っていたようで真っ赤になった顔で見上げてきた

・僕は彼女を優しく抱き寄た。

…………はい?えっと、いきなりどうしたんですかねー……。うおっ!痛っ(突然の出来事に対応できず慌てるばかりだったが不意打ちにあい脇腹へと肘鉄を叩き込まれそのまま倒れこんではしまったが……それでも彼女に危害を与えるようなことはせずに痛みに耐えながら立ち上がることだけに徹した自分に対し、少しばかり安堵してしまう)。お前ね……。うん……まぁ(溜め息混じりの反応だったが、この時既にアーシェスと名乗る彼女は笑顔を見せていたので文句の一つも口に出すことはしなかったのだが……)さっきと違う感じってのはよくわかんないが……それで気が紛れてるなら好きにすればいいさ

(彼女が嬉しそうにしている様子だったのは言うまでもなく……って、まだ僕の事を睨んではいるがそこまで警戒されていないようだったので問題は無いとしておこう。

とりあえずこの場から離れることが先決でありそれを促すと二人同時に足を踏み出してはこの部屋から出ていこうとしていたのだ)

(そういえば、アーシェスは僕と会う前に男と遭遇しているはずだったな、と思っては振り返るように室内を一望するがそれらしき姿はなかった)……?どうかしました、(さっさとしろという意図も含まれていたのかもしれませんが僕はあえて無視をしておいたわけです。とはいえここで会話を止めることもなかったので再び彼女の話へ耳を傾けていました)あの男は、もう逃げていったみたい、ですよ?(先程の男を気にしていたようだから説明をしているだけであって僕はそのことに関しては関与していないから、これ以上話すことはなかった)

(一応確認するように聞いてみることにしようかな。あの男がこの城の中にいるとしたら僕たちの事を放っておいて逃げたままって事は絶対に無い、はずだ。もし仮にそんな真似をしたらあの人は終わりだからな)そうか。ありがとう、僕はあいつを捜しに行くとするよ(言い終わってから改めて外へと出る為に一歩踏み出しかけた時だ、背後から声を掛けられることになるのだから当然その動作は中断させられていた)あの……貴方の名前を……教えてください……っ(名前か。考えてみれば今までずっと自分の事だけを考えて動いていたなと思い返しながら、自分の事を簡単に紹介することにした。勿論嘘の自己紹介でだ)名前は……セージ、です……あっちでは。(僕自身が異世界召喚されてからというものの記憶しか持っておらずここ最近は記憶を失っていて名前が思い出せない事にしているからだ……。

とりあえず適当に思いついた言葉を並べて伝えておいたが、どう思ったのかまでは分からない、だがこれで信じてくれれば良いがと思っていたものの……予想とは反する答えが帰ってきたんだ)……セ、…….セーjふぐぅ!?

(思わず声を出してしまうほどの一撃。何が起きたかというと背中を思い切り叩かれており、勢い余った結果だろうね・。前のめりに倒れ込んでしまいそうになる身体を支えるために慌てて地面に膝を着いている状態になってしまったわけだよ)ちょ!何するの君……。いってぇ(苦笑いをしながら後ろに居る筈の少女を見てみると案の定不満そうな顔でこちらを見つめている少女がいた。その様子を見やりながらも立ち上がると少女の顔色に変化が見られていたことに気づき疑問を覚えるしかない)えっ?(あれ……顔色が変わっているような……って)ああぁ~!!!なんなんだよこいつ(つい先程会ったばかりでまともに喋れる訳もない幼女のことを忘れていて思いっきり指を指して叫んじまった俺であったのだけど仕方ない)ご、こめん……でもまさか忘れてるなんて思わないじゃない。普通あんなのがいれば誰でも気にはなるってもんだよ とりあえず……外に出ないと危険だって事が分かったから急いでいくぞ そう言って腕を引っ張ると無理矢理走らせてみた。

・しかし、やはり子供。歩幅の違いも有ってか、歩くだけでやっとの感じになっていく(ちなみにアーシェスと名乗った女の子は、体力の限界に来ていたのかフラフラになっていたんだけど・・それに気が付かない振りしてる自分は、なんとも言えない表情を浮かべつつ走っていた。流石にこれはまずいと自分でも理解していたため後ろをついてきてるかどうかを確認する余裕もなかったわけなので いきなり引っ張ってしまったこともあり驚いた様子を見せたがすぐに僕の手を握り返すように繋げばそのまま歩き出した 正直いってしまうなら 俺は、今こうして自分が生きてこれたことすら不思議だった(突然の出来事が目の前に起きたせいもあって 思考停止してしまうのもしょうがないかもしれないがね)そしてまた唐突に現実へと戻り考え始める このまま行けば殺される未来が見えているため それをどうにかするために俺の考えを皆に伝えた後どうするかを考えなくちゃならないな)そういえば・・・さっきの子、一体誰だったんだろうか。僕も・・・この世界に来たときにも、さっきの男みたいな連中に襲われかけてた・・・というかも、襲われた・・・が正しい言い方・・なのかな

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