第7話
俺の唯一の仕事は、障害者のための事業所に通うことだった。
灰色の建物の二階に、その施設はある。僕はその監獄のような狭い場所へ続く階段を、ゆっくりと登る。
その施設はまだ空いてはいなかった。扉の前に施設の利用者がたむろしている。ゴミだめのような空間であるにもかかわらず、皆和気藹々と話をしていて、楽しそうだった。しかし、俺が近くによっていって挨拶をしても、誰一人として返事をする者はいなかった。
俺は諦め、彼らから少し離れた廊下の隅で、いつものようにヘッドホンをして音楽を聴き始めた。
ガチャリと、施設の扉の鍵が開く音がする。
施設の女の職員が開いた扉の中から顔を出した。
「みなさん、おはようございまーす」
すると、利用者達は一斉に施設の中になだれ込んだ。みな生き生きとしていた。自分の置かれている立場もわかっていないのだろう。知らぬが仏というやつか。彼らは世間でどのように思われているのかわかっていない。わかる必要もないのだろう。なぜなら、障害者の世界は、世間とは断絶しているからだ。支援員にただ、生かされるだけの存在。何の目標もなくただ死にたくないから生きるだけの存在。俺はそんな奴らから頭一つ抜けたかった。だが、そんな志を持っているものだから、俺は利用者からも支援者からも煙たがられた。
皆、施設の職員に順番に挨拶をする。職員はにこやかに挨拶を返す。だが、俺に対しては職員はひきつった笑顔を見せるだけで、挨拶すらかえさない。この閉鎖的な障害者の世界でも、
キモオタである俺はのけ者であり害悪であり、病原菌だった。
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