第3話
俺は、処方箋を受付の女にもらい、薬局に寄って薬をもらった後、帰路についた。
俺が病院の駐車場から自転車をこいで出ようとすると、女子高生の群れが下校しているのが見えた。俺はこそこそとネズミのように彼女らに気づかれないよう隅の方を走って帰ろうとしたが、無駄だった。談笑していた彼女らは、俺の方を見やるとピタリと会話を止め、
不審者でも見るような目つきになって俺からあからさまに距離を取った。
俺は、気を紛らわすように、首に掛けていたヘッドホンを耳につけ、音楽を聴き始めた。
後ろの方から、「あんなキモオタに、音楽とか似合わないよねー」などと女子高生達が言っているのを聞いたが、聞こえないふりをした。
そうだ。そんなことはわかりきっている。音楽なんて俺には似合わない。そんなものは、女にモテるイケメンのやるものだ。しかし、俺には音楽しかなかった。スポーツもできない。
頭も悪い。読字障害で、人並みに勉強することすらかなわない。消去法で残ったのが音楽だった。音楽だけが、子供の頃からずっとやり続けてきたものだった。向いていないとわかっていても、障害支援員や医者からバカにされまくっても、やり続けてきたものだった。
俺にはそれしかなかった。
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