第2話
「最近はどうですか」
精神科医はこちらを見もせずに言った。
俺はうつむいたまま言った。「特に異常はないです」
「生活の方は?」精神科医が続けた。
「それって、毎回聞きますけど、話さなければならないんですか?」
「話してもらわなければ、治療できないんだけどね」
精神科医はパソコンの方を向き、相変わらずこちらを見ようともしない。
「じゃあ言いますけど、僕の読字障害の件はどうなっているんですか?」
「治療を続けていればそのうち治るでしょう。他には?」
「ピアノだって、どれだけ練習しても、上手くならないし、本も読めないし、毎日うずくまって過ごすしかないんです!どうしたらいいんですか?」
俺の悪い癖だ。こうやって誰彼かまわず自分の内情を吐き出してしまう。
そんな事を言っても、返ってくる答えは一つなのに。
「近況はそれだけ?それじゃあ、いつもの薬を出しておきますんで」
ほら見ろ。精神科医は、まともにこちらの悩みを解決するつもりなんてない。
ただ、機械みたいに薬を出すだけだ。
それでも、俺はすがるように精神科医に聞いた。「俺は、治るんですか」
精神科医は相変わらずこちらを見もせずに言った。「そんなの知りませんよ」
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