第16戒 緊急会議
陽炎は静かに話し出した・・・
「俺が戦ったのは1週間前だ。ルーシャを助けた際にある敵と戦うことになった。そいつは殺したが、その後例の男が現れた」
冒険者達は静かになった。
「それからどうなったのですか?」
ヴィオラの純粋な質問が飛んできた。
「それからは一瞬だったよ。気づいた時には右肩から左の脇腹にかけて切られていた。その後距離をとる時に俺が持つ最速の技を叩き込んだが剣を破壊するしかできなかった」
「え!?剣を破壊したんですか?・・・あ、本当です。剣は真ん中から半分になっていたそうです」
「そんなとこだ」
冒険者達は黙ってしまった。長い間沈黙が続いた。
「わかりました。これからはその男にあった場合は逃亡を優先してください。決して戦おうと思ってはダメです。では、これで会議は終了です!解散!」
━━陽炎達は再び病院へと戻った。怪我は酷いが安静にすることを条件に退院したのだ。
「ねぇ、これからどうするの?」
「私達で倒しに行く?」
「いや、無理だな。俺の攻撃を弾いたんだから通用しないだろう」
街の中を歩いていると目の前に誰かがいるのに気づいた。よく見るとルーシャだった。
「ルーシャ、こんなとこで何しているんだ?」
「待ってたよ。かげくんのこと」
「ちょっと待て、さっちから気になっていたがかげくんってなんだ?」
「陽炎くんのこと。あだ名みたいなやつよ。てか、それよりかげくんに頼みたいことがあるのよ」
「頼みたいこと?」
「そう。・・・私を仲間にして」
「良いよ」
陽炎は即答だった。しかし、ルーシャは聞いてないかのように話を続ける。
「分かるわ、私を連れていたら戦いにくいって。でも、ダメって言われてもついて行くから!」
「いや、だから良いって」
「良いの!?」
「良いよ。俺も丁度今仲間を増やそうと思っていたしね。それで、どんな特技があるんだ?」
「言いたくない・・・」
「いや、言いたくないって言ってもらわないと困るんだよ」
「嫌だ!言ったらまた捨てられるもん!」
ルーシャは頑固として言わない。それほどまでに無駄な能力なのか。それとも、そもそも持ってないのか。必死になって口を塞ぐ。陽炎はルーシャの目を見て優しく言った。
「ルーシャ、俺は捨てたりしないって。どんな能力でもずっと一緒にいるから」
「本当?」
「本当だって。ほら約束。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲〜ます。指切った」
そう言って指切りをした。ルーシャを見ると顔が青ざめていた。
「嘘ついただけで針千本も飲まされるの?やだ!死にたくない!痛いのやだぁ!」
「飲ませねぇよ!言葉の綾だ!真に受けんな!」
その後も色々な誤解があったので正すことに時間をかけてしまった。しばらく言い合ってやっとルーシャが話し出した。
「私の能力なんだけどね・・・実はね・・・治癒魔法なんだ」
存外普通だった。治癒魔法は今の陽炎にとって最も必要としている魔法だった。
「それのどこが必要ないんだ?」
「治癒魔法はポーションで代用できるから・・・いらないって」
「いや、いるだろ。ポーションで回復できないくらいの傷はどうするんだよ」
「ポーションで回復できなかったら治癒魔法でも回復できないの。精密な調整が必要で失敗したら回復しすぎで体が壊れるの」
どうやら治癒魔法は意外と危険が多いらしい。それでも今の陽炎にとって必要なことに変わりはない。喜んで受け入れることにした。
「なんだっていいさ。俺の仲間になってくれるか?」
陽炎はそう言って頭を撫でた。ルーシャは少し驚いたが顔を明るくして答えた。
「うん!」
━━場所は変わって王都では・・・瓦礫の山となった王城の真ん中に人がたっていた。αと呼ばれていた男だ。その隣には、女の子が立っている。
「よくやったねα。これでこの国はもう私達のものだね」
「そうだな。こんなことより、まだ集まらないのか?」
「そろそろくるはずだよ。ほら来た」
そう言うと虚空の中に9つのゲートが開いた。
「久しぶりだね。β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、μ、ν。ずっと皆を待ってたよ」
そう言うとゲートから1人ずつ出てきた。
「この10人が集まるのを見る時が来るとはね・・・。さぁ、始めよう!これが終焉への1歩目だ!」
━━陽炎達は作戦をねっていた。
「・・・という感じで━━というふうにしてくれればいい」
「ねぇ、本当にこの国から出るの?ここにいてもいいんじゃないの?」
「ここにいてもいいだろうが、まずは強くならないといけない。そのためには違う街や国に行って技を極めないといけない」
「でも、ここにいた方が安全なんじゃないの?」
「確かに安全かもしれないが、俺らを狙ってくる可能性もある。そしたらこの街も危険な場所となる」
「なんで狙ってくるのよ?」
「恐らくだが、王都を潰したのは例の女の子の仲間だ。そして俺は女の子に合っていて、その仲間を1人殺した。更には、王都を潰した奴に出会っている。いち早く殺しにくるだろうな」
「確かにそうね・・・でも、街を出たらどこに行くの?」
「前に国境付近に行っただろ。あの近くに国境検問所があるらしい。そこを通ってエンブレイズ王国に行く」
「そこってもしかして・・・」
「そうだ。炎と氷の国だ」
3人は驚いて声も出なくなった。それにはきちんとした理由がある。エンブレイズ王国は炎と氷の融合実が盛んに行われている国で人体実験なども多く行われている。
「人体実験が行われているが決定的な証拠がなく廃止させるのが難しいらしい。だから、奴隷なども多く見られるそうだ」
「よく知ってるわね。かーくんどこで知ったの?」
「さっきギルドでな」
テムとルーシャは話を聞いて、決意を固めたようにうなづいた。しかし、ただ1人を除いて・・・
「ちょっと待ってよ!なんで行くみたいな雰囲気になってるのよ!」
ディリーがそう言った。そう、ディリーだけが嫌がって行こうとしないのだ。だが、その気持ちもわかる。ディリーはドリューアスなのだ。当然火に弱い。それなのに火があるとこに近づくバカはいない。でも・・・
「ごめんな、ディリー・・・。でもな、これはお前のためでもあるんだ」
「え?どういうこと?」
「俺が行こうと言った理由はいくつかある。1つは向こうで有名になることだ。向こうで有名になれば当然的も向こうに行く。だから、この街は1時的に安全となる・・・」
ディリーは少し驚いた。どうやら陽炎が何も考えずに行こうとしていたと思っているらしい。
「2つ目は、炎と氷の合成することだ。向こうでは実験してるらしいからな・・・戦力増強にはもってこいだ。3つ目は炎と氷の耐性をつけることだ。ディリーは強いと言っても木の精霊だから火に弱い。さらに、俺の古代樹も火に弱い。だから火の耐性はつけるべきだと思わないか?」
そう言うと皆は納得したようにうなづいた。ディリーも納得したようだ。だが、陽炎は話を続けた。
「・・・それと、最後はアーティファクトを探すことだ」
3人はそれを聞いて目を見開いた。テムは顔を青ざめさせ慌てている。ディリーは咄嗟に木を生やし自分を覆った。ルーシャはうずくまって頭を手で抑えている。しばらくの沈黙の後陽炎は口を開いた。
「・・・冗談だよ。今のは聞かなかったことにしてくれ」
そう言うと3人は安堵の息をもらした。陽炎はその様子を見て思った。
(不思議な世界だ。人を殺しても良いのに、伝説の武器の名前を言ってはいけない。この世界についてもっと知らないといけないな)
陽炎は静かに決意を固めた。
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