第11戒 つかの間の休息のトラブル
それからどれくらいたっただろう。2人が泣き止むのを待っていると既に日は落ちて夜になっていた。テムとディリーは泣き疲れたのか眠ってしまっている。陽炎は前と後ろに抱き抱えると街に向かって歩き出した。
「ふふっ、なんか微笑ましいな。こういうのは初めてだ。日本ではこんなこと無かったしな」
だが、流石に陽炎も疲れている。何とかして帰れないか考えた。
(風魔法で飛んでいくか?いや、それより転移魔法の方が良い)
「”
するとやはり前と同じものが現れた。
(で、どうやって転移魔法にするの?確実に転移関係ないよね)
そこでふと思った。そういえばディリーが木の中を移動していたなと。そこで風と水と土を適度に合わせて見た。すると植物魔法ができた。それで何となくやり方がわかった。それから30分間考え続けた。そしてついに出来た。風を少量、水と土を同じ量、そして高火力でプラズマ化させるように大量の火を混ぜた。そして最後にドラゴンの一部を使った。ドラゴンの一部の魔力を出来た魔法に流し込んだら完成だ。
「出来た・・・これはすごいぞ!」
陽炎は1人で喜んだ。すると頭の中に技名が浮かんできた。
「
そして試しに使うことにしたが、流石に2人を抱えたままたと使いにくいので下ろすことにした。
「よし・・・”グロウアップ・エンシェントツリー”」
陽炎は地面に手を付きそう唱えた。すると地面が割れ独特な色の木が生えてきた。それは瞬く間に大樹へと成長した。その木には謎の紋様が書かれてあり発行している。
「すごいな・・・転移系の技とかないのか?」
そう思って探すと本当にあった。
「マジかよ・・・あるのか。”コネクトツリー”」
すると古代樹の紋様が光出した。そこに触れると中に入れた。中に入るといくつかの揺らぎがあった。その揺らぎのひとつに街が見えた。そこに入ると街の目の前まで来ていた。
「やった・・・あと少しだ・・・」
陽炎は街に向かってまた、歩き出した。
━━━━━━━━━━━━━━━夜間ギルドの前にはいつも人がたっている。なぜなら、夜間には冒険者があまり出入りすることはなく犯罪行為が増えるからだ。その門番がある人影を捉えた。
「ん?誰かいるな。こんな夜間に依頼を受けるなんて頑張ってるな」
しかし、その人影は普通の人より向かってくるのが遅かった。さらに何かおかしい。するとその人影は倒れてしまった。
「おい!大丈夫か!誰かいねぇか!人が倒れた!治癒師、僧侶、回復系の魔法が使える冒険者や魔法使いは今すぐ来てくれ!」
門番の叫びで人が集まってきた。皆はすぐに病院へと運んだ。
━━━━━━━━━━━━━━━陽炎は目を覚ました。どうやら意識を失っていたらしい。目を開けるとそこは部屋の中だった。当たりを見渡すと、隣にテムとディリーが寝ている。それで理解した。ここが病院だということを。すると横から突然声をかけられた。
「目、覚めたか?」
「・・・ここは・・・?」
「ここは病院だ。ギルドの隣にあっただろ」
そういえば隣にあった気がする・・・。声をかけた人の顔を見るとガルフだった。
「なぁ陽炎・・・一体全体何があったんだ?」
「ドラゴン・・・と、戦った」
「ドラゴンだと!勝ったのか!?」
「まぁな・・・。勝たないと全滅してたしな」
「そうか・・・だがなぜドラゴンが出てくる?誰かが見た人影っていうのがドラゴンだったのか?」
「いや、そうじゃない。その人影っていうのは女の子だ。そいつがドラゴンを召喚した。その女の子は空間が揺らいだかと思うとその中に吸い込まれていった」
「なんだよそれ?嘘なんかつくなよ。こんな時に・・・」
「俺が嘘をついてるふうに見えるか?」
「いや、すまない。どうしても信じられん。どういう魔法なんだ?」
「・・・恐らくだが・・・あの子の魔法は・・・」
「陽炎さん!」
突然大きな声とともにドアが開かれた。中に入ってきたのはヴィオラだった。
「陽炎さんが倒れたって聞いて飛んで来ましたよ!」
そう言って陽炎に抱きついた。
「痛い痛い、ちょっと強すぎ・・・」
「あっ!すみません!すごく心配したもので・・・」
「モテる男はいいねぇ」
ガルフはおちょくるような顔でおっちを見ている。
「知ってるか?その嬢ちゃん、毎日お前のとこに来てたんだぜ」
「っ!?それ言わないでって言ったじゃん!」
2人は陽炎の前で口喧嘩を始めた。陽炎は2人を止めることにした。
「やめろよな。それより俺何日寝てたんだ?」
「お前か?お前なら1週間は寝てたぞ。隣の2人は次の日に起きたがな」
「そうだったのか」
「ま、あんま心配かけんなよ」
そう言ってガルフは部屋を出ていった。
「それじゃぁ私も仕事に戻ります。3人の時間を楽しんでください」
ヴィオラはおちょくるような顔で出ていった。
「はぁ・・・もうちょっと寝るか」
陽炎が布団に入ると突然上に衝撃が来た。
「ぐぇ!なんだよ?」
前を見るとテムが上から飛び乗っていた。しかしディリーが、いない。そんなことを考えていると足元がモゾモゾ動いた。中を見るとなんとディリーが体に抱きついていた。
「お前ら・・・なんで泣いてんだよ」
「なんでって・・・かーくんのバカァァァァ!」
テムは襟元を掴んで叫んできた。さらに揺さぶってくる。2連コンボで陽炎は何も言うことが出来なくなった。
「バカバカバカァァァ!心配したんだからぁぁぁ!」
「わかったわかった。ちょっと落ち着けって」
陽炎は宥めるように言った。するとすんなりテムはベットから降りた。陽炎が起き上がろうとするとディリーが飛びついてきた。
「ディ、ディリー!?」
ディリーは陽炎の胸に顔を埋めて表情が分からない。横から覗き込んでみるとムッとしていた。どうやら怒っているみたいだ。・・・理由はなんとなくわかる。でも、・・・
「どうしようもないとか言わないで」
まるで心を読んだかのように言ってきた。陽炎は思わず驚いて声も出なくなった。
「前もそうじゃん。違うパーティと依頼を受けたら1人で戦ってるし・・・どうして一緒に戦おうとしないの?どうして全部1人で解決しようとするの?どうして皆を頼らないの?」
そう言われて初めて気づいた。みんなの中に自分がいるのに自分の中には皆しかいなかったか事を。自分の中に自分のことはなく人のために戦っていたことを。
「私もテムちゃんと同じで心配してるの。私たちだけじゃなくてギルドの人達も心配してるの。だから自分のことも考えてよ!」
「・・・はい」
あまりの気迫にそれしかいえなかった。陽炎は少し考えると2人にどいてもらうように頼んだ。2人は受け入れてどいた。陽炎ご起き上がると話を始めた。
「なぁ、これからのことなんだけどなこのままこの街に拠点を置くか違う町に旅するかどっちがいい?」
「なんで?」
「この街、ステイトの街って言うらしいけどなここは駆け出し冒険者の街らしい。ある程度強くなったら出ていくのが普通なんだ」
「そう言われたの?」
「あぁ、だから皆はどうしたい?」
その言葉を聞いてテムは考えたがディリーは考える素振りもない。
「おいディリー。今は考える時間だぞ。何か考えろよ」
「別に考える必要ないよ。だってこの街に拠点を置いて違う町に行けばいいじゃない。それで旅がある程度済んだらこの街に戻ってくるでいいんじゃない?」
「なるほどな。その手があったか。それに、もし違う街が良かったら引っ越せばいいからな」
陽炎が感心してうなづいているとディリーが満面の笑みでこっちを見ている。陽炎はその頭を優しくポンと叩いて撫でた。
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