第8戒 恐怖、再び
周りに助けを求めると皆目をそらす。逃げようとしても逃げられない。これが絶望か・・・。
「そんな死刑宣告を受けた人みたいな顔しないでください」
そう、まさに今陽炎は絶体絶命だった。ヴィオラに捕まってからずっとこんなやり取りを繰り返している。
「嫌ですよ!絶対死ぬよりきついことされるから!」
「しませんよ!ちょっと、あの2人の責任をとってもらおうと思っだけですから!」
「ほら!今言ったじゃん!責任は死ですとかいうんだろ!」
「そんなこと言いませんよ!」
「いいや言うね!絶対に!って、手を離せよ!」
「いいやもう話しません!肩が外れるくらい握ります!」
(・・・え?今なんて言った!?肩が外れるくらいってやばい!逃げないと・・・)
だが、ヴィオラは離してくれない。そんなことを考えていると窓からギルドの中が見えた。そこには手枷足枷で繋がれて体中傷だらけで泣いているテムとディリーがいた。
「ギャァァァァ!あれはやばいだろ!」
「・・・・・・・・・見ちゃいましたか?」
(あ、これ本当に死ぬやつだ。昔話で見ちゃいけないやつ見たやつだ)
「くっ、俺は逃げさせてもらう」
「だ・か・ら、逃がしませんよ♡」
陽炎は逃げようとしたが手首を捕まれ逃げられなかった。そして、そのままヴィオラと手枷で繋がれてしまった。そして、そのままギルドの中に連れ込まれてしまった。皆は助けてくれなかったが、泣きながら”あばよ”とか”忘れないよ”と言っている。・・・そんな事言わないで助けてよ・・・そんな思いは皆には届かなかった。中に入ると2人が泣いていた。
「あの・・・俺に何をするんですか?やっぱ死ですか?死ぬんですか?」
「死にませんよ!陽炎さんには討伐依頼を出したいんです!」
「討伐依頼?嘘ですね」
「嘘じゃないです!もう、全然話を聞いてくれないからこんなことしたんですよ!」
「え?じゃあ責任を取らせるって言うのは?」
「だからあれは、この2人の責任をとって依頼を受けて欲しかったんです!」
「なんだ・・・。それで、どんな依頼なんだ?」
「依頼内容は3つです。1つ目は巨大なイカの討伐。2つ目は巨大なタコの討伐。3つ目は謎の女性の捕縛です。最初の2つは変異種なので1部を少し取ってきて欲しいです。最後は、捕縛ですが、出来なければ殺してもらって結構です」
「イカとタコ・・・。俺そいつ倒したぞ」
「本当ですか!?」
「ほら」
そう言って陽炎は最近覚えた収納魔法で収納したイカとタコを出した。
「これです!もう倒したんですか!?」
「ここに来る前にな」
「それなら残りはあと1つですね」
「あ、もう受けるのは決定なんですね」
するとヴィオラは何言ってるんですかと言わんばかりにこっちを見ている。
「はぁ・・・まぁ、行くけど捕縛できるかわかんねぇよ」
「できるところで大丈夫です。違約金とかは発生しないので」
「それなら良いよ」
(はぁ、なんか心配しただけ損したな・・・)
陽炎は荒れたギルドの中で少しだけ気を落とした。その後ろではテムもディリーがヴィオラによってむち打ちされて泣いていた。
━━それから20分がたった。陽炎はテムとディリーを引き取ると宿に泊まった・・・
「うぇぇぇぇぇん!うぇぇぇぇぇん!」
「わぁぁぁぁぁ!わぁぁぁぁぁ!」
陽炎は今とてつもなく困っている。なぜなら、テムとディリーが泣いているからだ。うるさいと言いたいところだが、言ってしまうともっと泣いてしまうので言うことが出来ない。そのため、今は慰めることに徹底した。
「ほら、もう泣くなよ」
「うぇぇぇぇぇん!だって!だって!痛いんだもん!」
「はぁ〜・・・」
「うわぁぁぁぁぁん!なんでそんなかおするの!」
2人は一向に泣き止まない。するとドアをノックする音が聞こえた。迷惑だというクレームかなんかだと思ってドアを開けると、男性と女性が笑顔でたっていた。どうやら2人は夫婦らしい。2人は笑顔でこちらをむくと意外なことを言ってきた。
「ありがとうございます!あなた達のおかげでうちの子供がやっと言うことを聞きました!」
「は?」
「いや〜、うちの子供は全く言うことを聞かないんですけど、今日のあなた達の様子を見たうちの子が急に言うことを聞くようになったんです。今も泣き声を聞いて自分から手伝いをするようになったんですよ」
「はぁ、そうですか・・・」
2人はウキウキしながら戻って行った。陽炎はどうしたらいいか分からなくなりとりあえずテム達の元に戻った。
「お前ら〜、なんか感謝されたぞ」
「え?本当?」
一瞬テムが笑顔になったが立ち上がるとすぐに痛みを思い出したかのように倒れ込んだ。
「いだぁい!わぁぁぁぁぁ!」
さらに泣き出してしまった。ディリーの方に目をやると、ディリーはおしりに氷を当てて突っ伏している。
(ヴィオラのやろ〜!後でぶっ飛ばしてやる!)
そう心に決めるのとテムがおもらしをするのは同時だった。・・・え?おもらし?何となく言ったが不思議に思ってテムの方を見るとおしりに氷を当てながら泣いている。よく見ると床が濡れている。・・・まさか!?
「ご、ごめんね〜・・・」
陽炎は無言でテムに近づくと思いっきりおしりを叩いた。
「いぎぃ!わぁぁぁぁぁ!陽炎さんに叩かれたぁぁぁぁ!」
そんなやり取りをしていると再びノック音が聞こえた。陽炎はテムを無視してドアの元へ行くとガルフがたっていた。
「ガルフ、どうしたんだ?」
「いや、陽炎にちょっとプレゼントを私に来たんだけど・・・」
ガルフは後ろの光景を見て無言になってしまった。
「あぁ、後ろのやつは無視してくれ」
「あ、あぁ、そうするよ。それでなんだけどな、ソルト達が会いたいって言ってるんだけどなちょっと会ってくれ・・・ない・・・か?」
「おい、どうしたんだよ?言葉がたどたどしいぞ」
「後ろを見てみろ」
ガルフが冷や汗を垂らしながら言ってきた。後ろをむくと、涙を流しながらこちらを睨むテムとディリーがいた。
「無視しろ」
「いや、でも、視線が痛いぞ」
「火が出る訳でもないんだ一緒に行こう」
そう言って陽炎は部屋から出てきた。テムとディリーは陽炎にしがみついている。何事もないと言った様子で出てきた陽炎を見てガルフは気圧されながもソルト達の元へ案内を始めた。
「あ!陽炎く〜ん!こっちこっち!」
外に出るとソルトが呼んでいる。その隣にはハルとメロンがいる。
「じゃあ行こ!」
陽炎は言われるがままついて行った。言った場所はなんとキルドの前だった。・・・と、ふとテムとディリーの掴む力が強くなった。
「痛い痛い、力込めすぎだよ」
そんな2人に構いながらギルドの前まで来た。そこにはたくさんの人がいてバーベキューをしている。
「なんでバーベキューなんてしてんだ?」
「何言ってんの?陽炎くんがイカとタコ倒したからでしょ」
「この焼いてるのあのイカとタコなの?」
「うん。それと、他の冒険者達が倒した魔物とかだよ」
「へぇ〜」
「もう何?全然興味なさそうじゃん!」
「いや、興味無いことはないんだが・・・」
後ろでテムが陽炎の首を絞めている。ギリギリ決まってないのであまり閉まってはいないが・・・その時、ハル達のイタズラ心に火がついた。
「ねぇ陽炎くん♡あ〜んして♡」
「&#%#☆〜〜〜!」
ハルの言ったことにディリーが声にならない叫びをあげ寝技を決めようとしてきた。頑張って抵抗して何とかした。
「暴れるなよ!」
「ねぇねぇ陽炎くん♡ウィーナー焼けたよ。食べさせてよ♡」
「は?ウィーナー?・・・あ、ウィンナーか」
陽炎がそのウィーナーに手を伸ばすと横からテムが奪って食べてしまった。
「おい、それソルトが食べたかったやつだろ」
「ん〜〜〜!」
テムは何故か怒っている。すると、メロンが手を握ってきた。
「ねぇねぇ、こっちに面白いのがあるよ。行こ!」
「面白いの?」
言われるがまま陽炎はついて行った。そこには噴水があった。・・・これはもしや?と思ったが、テムが暴れだしたのでその場に倒れてしまった。
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