第7戒 執行者の本領発揮

 陽炎達は海に来ていた。依頼は巨大イカの討伐だ。陽炎は少し気を張って警戒している。しかし、皆は違った。


「ヒャッホゥ!」


「楽しいね!」


 皆は海で遊んでいた。陽炎とガルフは2人揃って砂浜に座っている。ハル、ソルト、メロンは皆水着を着ている。それもビキニだ。


「あのなぁ〜、今日は遊びに来たんじゃないぞ」


 ガルフは困った顔で言っている。同じように陽炎も大丈夫なのかと思っていたが別のパーティに口出しするほどおこがましくは無い。


「ま、危なくなったらその時はその時でいいんじゃない?ガルフ」


「う〜ん・・・。まぁ、陽炎がそう言うなら・・・」


「ほらほらー、こっちに来なよ!」


 バシャッ!という音と共にガルフと、陽炎はずぶ濡れになった。


『・・・』


「なぁ、やっぱさっき言ったことなしな」


「そうだな。ここはひとつ厳しく言っておかないとな」


 2人が海の方に歩いてきたのを見た3人は何かを察したようにバラバラに海の中に逃げてしまった。


「あ、おい待て!」


 しかし、その言葉も虚しく3人には逃げられた。━━それから30分がたった。しかし、皆は帰ってこなかった。


「何かあったのかな?」


「分からねぇな・・・」


 そんなことを話していると、遠くからメロンの姿が見えた。遠目でよく見えないがどうやら泣いているらしい。少し待つとメロンがこっちに来た。よく見るとヌルヌルしている。


「おい待てよ!これはどういうことだ!?」


「さっき・・・イカが現れてね、・・・それでね・・・」


「わかった。陽炎、メロンを見ていてくれ。俺が言ってくる」


「了解した」


 ━━それから10分がたった。しかし、ガルフは帰って来ない。


「これは・・・異常事態だな・・・」


「あの、行って来て貰えませんか?」


「いいんだが、お前を1人にする訳には行かないんだよな」


「それなら、私もついて行きます!」


「マジ!?助かる!よし、行くぞ!」


 陽炎は何の躊躇いもなく走っていった。遠くから早くしろーと聞こえるので、メロンは走って陽炎の元まで行った。少し歩くと、開けた場所に出た。するとそこに3人が倒れている。


「おい、大丈夫か?」


「逃げ・・・ろ。やつは・・・普通じゃ・・・ない」


 そう言い残してガルフは気絶した。一瞬死んだかと思えたが脈があったので死んではいなかった。


「メロン!ガルフ達を守ってやってくれ!」


 そう言って3人の体を持ち上げるとメロンに向かって投げた。その瞬間、少し大きい湖のようなところから巨大なタコがでてきた。そして、その後ろから巨大なイカもでてきた。しかもその魔物達は尋常じゃないほどにでかい。


(いや、でかすぎだろ!)


 イカとタコはギョロギョロ言いながら足で攻撃してくる。陽炎は咄嗟にかわすとそれまでいた場所に大きなクレーターができていた。


「本当にやばいね・・・これは」


 それからしばらく激戦は続いた。激戦と言ってもイカとタコの攻撃をただかわすだけだがそれだけで今いる場所はボコボコになった。


(このままじゃいずれやられる!なにかないのか?)


 陽炎が必死に考えるとあることを思い出した。


(そうだ、この魔法想像ってのを使ってみよう)


「え、えーと・・・”魔法想像まほうそうぞう”」


 すると頭に火、水、風、土、雷の球体が浮かんできた。


(なんだこれ?くっつけるのか?)


 試しに火と水をくっつけた。すると、2つは混ざりあって溶岩のようなものが出来た。それは、色々な技となっていった。それと一緒に名前も浮かんでくるのかと思ったが浮かんで来なかった。


(名前は自分で作れってことね)


「これで決まりだ!”灼華しゃっか炎山火えんざんか”」


 すると、イカとタコの足元に山ができ、一瞬で噴火した。しかし、どちらも倒せなかった。それどころか、傷を回復しだした。


「くっ、まずいねこれは・・・。”拘束こうそく”」


 陽炎は鎖でイカとタコをしばる。しかし、すぐに鎖は砕け散った。


「ダメだな・・・。もう少し弱らせてからだな。そしたら、この技試してみるか・・・」


 そう言って陽炎は右手を前に突き出した。


「”生成せいせい”


 その掌には刀が作り出された。


「さてさて、どれだけやれるかな・・・。刀に魔力を集めるイメージで・・・”灼華しゃっか集熱しゅうねつ”」


 刀に魔力が集まりだした。すると、その魔力は発火し炎がまとわりついていく。


「”獄炎斬ごくえんざん零式ぜろしき”」


 ヒギャァァァ!


 イカとタコが叫びを上げた。しかし、その傷は再生してしまった。


「何ぃ〜!クソッ!”獄炎斬ごくえんざん八式はちしき”」


(これは獄炎斬の高速8連撃だ。流石に効いてくれよな)


 しかし、イカとタコは叫んだ後再生した。だが、よく見ると少し傷が残っている。さらに、再生スピードが落ちていた。・・・これなら行ける!


「”俺流おれりゅう灼壊凱王双頭龍しゃっかいがいおうそうとうりゅう飛翔ひしょう”」


 ヒギャァァァ!ウォロボロボロボロ!ギュァイアエゥア!


 そんなイカとタコの悲鳴が聞こえた。イカとタコは足を全て切り落とされている。再生も最初より格段に遅くなってる。・・・それにしても、うるさいな。こんなところで騒ぐなよ。


「そろそろだな!”拘束こうそく”」


 再び鎖はイカとタコを拘束した。今度は壊されないようだ。


(試す時が来たようだ!)


《邪悪なる闇を断罪する光よ・・・世界を超越せよ》


「”死刑デスペナルティ”」


 周りの空気が変わった。空には薄暗い雲がかかっている。すると空から黒い球が落ちてきた。


「なんだこれ?」


 陽炎はそれに触れたが何も起こらない。その黒い球はイカの周りを漂い始めた。それに触れたイカは突如悲鳴をあげ真っ黒に染まってしまった。黒く染ったイカはパラパラと塵になって消えていく。


「な!?え!?」


 自分で使っておいて自分で驚いてしまった。しかし、まだ、タコがいる。どうする?そんな考えはすぐに消えた。黒い球が1つ2集まりだした。それは静かにタコの体に当たった。すると、体の中に入っていった。


「え?やばっ、すり抜けたぞ・・・」


 黒い球はタコの体の中で大きくなるとタコを吸い込んでしまった。


「・・・終わったな・・・」


 ガルフ達が目を覚ました。


「勝った・・・のか?」


「うん。なんだったんだ、あれ?」


「あれは多分変異種だな。稀に出るんだ」


「そうなんだな・・・。大分時間がかかってしまったな」


「すまないな。俺がやられてしまったばかりにお前1人に任せることになってしまった」


「いや、大丈夫だ。さて、帰るか」


「そうだな」


 ━━それから、陽炎達はギルドに戻ってきた。出てきた時が昼だったが今はもう夜である。だが、ギルドの前が夜なのにやけに騒がしい。


「お前ら何してんだ?」


「おぅガルフ、今は中に入らない方がいいぜ」


「なんでだ?」


 陽炎は横から口を挟んだ。すると、その男は目を見開くと慌てて言ってきた。


「お、お前だけはマジで入るな。今は本当にやばいんだよ」


「何がだ?」


 その慌てた様子に陽炎は声を潜めて聞いた。男も同じく声を潜めて言ってきた。


「今、お前の仲間の女の子達が失敗しすぎて中は処刑場みたいになってんだ。それで受付のねーさんが、保護者であるお前を探してんだよ」


「・・・え?嘘だろ」


「こんなことになって嘘なんかつくと思うか?」


「い、いや、つかないな」


「とにかくだ。お前だけは近づかない方がいい」


「あぁ、そうするよ。逃げさせてもら・・・」


「逃がさないよ」


 突然後ろから声が聞こえてきて陽炎はすぐに飛び退いた。後ろには知っている顔が・・・顔が・・・いや知らない人だ。


「待ってください。逃げないでください」


「あれ?あなたは誰でしょうか?」


「とぼけないでください。陽炎さん」


「え?小生は陽炎などという名ではないですよ。小生はコウインと申し・・・」


「ふざけないでください。怒りますよ」


「はい・・・すみません・・・」


「あのですね、私はお話がしたいだけなんですよ」


 あ、これは死ぬやつだ。誰か助けてくれないかなぁ・・・

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