第5戒 乙女心が理解出来ない
「おーい。どこにいるんだー」
陽炎は街を歩いていた。後ろからはディバインが着いてきている。
「いるなら出てきてくれー」
陽炎が呼びかけるも返事は無い。今陽炎はテムを探している。ギルドにいた時急に逃げ出してしまったからだ。
「ディバインはどこにいるかわかるか?」
「・・・」
何故かこっちからも返事は無い。
「おい、なんか言えよな」
そう言って振り返った。しかし、ディバインは何も言わない。しばらく考え込むとディバインが口を開いた。
「私の事ディバインじゃなくてディリーって呼んで」
「は?」
陽炎は突拍子もないディバイン・・・じゃなくてディリーの発言に言葉も出なかった。
「だから、私のことは・・・」
「いや、今言う!?今じゃねぇよ!後にしてくれ!」
「後ってなによ!今言わなかったら忘れるかもしれないでしょ!」
「じゃあ覚えとけよ!今大変なんだからテムのこと考えさせてくれよ!」
陽炎が怒るとディリーが泣いてしまった。
(あ、これ言いすぎたやつだ)
「知らない・・・もう、陽炎くんのことなんて知らない!うぇぇぇぇん!」
「あ、おい待て!」
なんとディリーまで逃げ出してしまった。陽炎は止めようとしたが、行ってしまった。
(やっぱめんどくさい。はぁ、探して謝るか・・・)
━━それから3時間程度探したが見つからなかった。民家の中、ギルドの中、森、全て探したが見つからなかった。陽炎は諦めてギルドに戻ってきた。
「陽炎さん。テムは見つかりましたか?」
「いや、全然見つからん。しかもディリーまでいなくなってしまった」
「そうですか・・・」
「しばらくここで休ませてもらうよ」
「そうしてください。もしかしたら戻ってくるかもしれませんよ」
ギルドの受付の女性はそう言って戻って行った。陽炎は改めてなにかないのか探してみることにした。するとステータスに面白いものが書かれていた。
(パーティ集合?なんだこれ?使ってみるか)
すると、陽炎の横に白い光の柱ができた。光の中にはテムとディリーが立っていた。
「え、なんで?どうしてここに・・・」
「おかえり。遅かったね。凄く探したよ」
「か、陽炎さん!?こ、こ、こ、これには深〜い訳がありましてね・・・」
「ごめんね。2人とも」
『え?』
「さっきは言いすぎたね。許してくれるかい?」
陽炎はいつもの調子で謝った。2人は顔を見合わせると陽炎に飛びついてきた。
「私もごめんね!ちょっと恥ずかしかったから逃げたらなかなか戻る勇気が出なかったの!」
「私の方もごめんね!空気読めないのはわかっていたけど、指摘されてつい怒っちゃったの!」
「うんうん、いいよいいよ」
2人は陽炎から離れると陽炎の両隣に座った。陽炎は2人の頭を無意識のうちに撫でた。
「っ!?」
すると頭の中になにかが入ってきた。急いでステータスを確認すると状態異常の所に〈ジゴロ〉が増えていた。
「どうしたの?」
「いや、なんか状態異常が増えたんだけど・・・」
「あ、ほんとだ!」
『・・・』
「ま、いっか」
陽炎がそう言うと2人はうなづいた。怒るでも突っ込むでもなく、楽しそうにうなづいたのだった。
「よし、クエストに行くか」
「ちょっと待って、私まだ受付の仕事があるの。休暇を取るって言わないと」
「大丈夫よ。もう言ってあるから。”冒険者をするなら喜んで取らせてあげよう!”だってよ。でも、給料は出ないから気をつけてね」
「ありがとうございます!」
「さて行くか」
そう言って3人はクエストを受注した。━━それから20分が経って、3人は平原に来ていた。討伐依頼なのだが、出現場所がここらしい。
「何もいないな。本当にここなのか?それに、普通に来たけどディリーは試験受けなくて良かったのか?」
「ここであってますよ。あとディリーは魔物だから持ち主である陽炎さんが試験に合格していたらいいですよ」
「へぇ〜。そうなんだな」
「あ、さっき聞いたけど陽炎さんもう1番上のランクらしいですよ。ギルドカードがアダマンタイトになってます」
「アダマンタイト?」
「知らないんですか?アダマンタイトとはこの世界で最も硬いと言われる鉱石のことです」
「へぇ〜。じゃあこのギルドカードはその鉱石と同じ強度ってことか?」
「そうなりますね」
「ねぇ、魔物もうそこまで来てるよ」
気がつけば魔物はもう目の前まで来ていた。しかし、陽炎は微動だにせず待ち構えていた。
「陽炎さん凄い!こんな状況でも冷静にたっていられるなんて!」
「陽炎くんから凄いオーラが見えるよ!」
テムとディリーは羨望の眼差しで見ている。しかし、現実は違った。
「お前ら何を言っている?俺は戦えないぞ」
「え?ちょっと何言ってるの?」
「何って・・・俺のスキルはほぼ対人だから魔物とは相性が悪いぞ」
『・・・』
その場の空気が凍った。2人は陽炎を見つめ唖然としている。
「さ、お前ら早く戦え」
『自分で戦え!』
「は?お前ら今俺が言ったこと覚えて言ってんのか?俺のスキルは魔物と相性悪いんだぞ」
「うるさい!そんなの知らないわ!もう私帰ります!」
テムは怒ってそっぽ向いてしまった。ディリーは、
「あ、やっぱり陽炎くんからは凄いオーラなんて見えなかった・・・」
とか言って立ち尽くしている。しかし、魔物はそんなこともお構い無しにこっちに向かってきている。
「はぁ、もういい。お前らにその気がないならそれなりの対応はさせてもらう」
「え!?何言って・・・」
「”おしお・・・”」
『待ってぇぇぇぇぇ!やります!やります!やらせてください!』
2人は光の速さで魔物に向かって走っていった。陽炎はその場に座ると、応援を始めた。目の前ではてむとディリーが戦っている。耳を済ませて聞いてみるとなにか聞こえる。
「もう!陽炎さんのバカぁ!許さないんだから!」
「陽炎くん、戦えないなら先に言ってよ!」
・・・よし!後で謝ろう!そんなことを考えていると2人の戦いに決着が着いた。
「お疲れ様!凄かったよ!うん、ほら、なんか、凄かったよ!」
「褒めるならちゃんと褒めてくださいよ!」
「ごめんごめん。本当に・・・」
しかし、陽炎の言葉は最後まで聞けなかった。なぜなら、突然後ろにガァァァァという咆哮が聞こえたからだ。陽炎は急いで振り返るともうすぐそこまで来ていた。
「な、何あれ?ちょっとやばくない?」
「ちょっとどころじゃないよ!災害級だよ!」
「あの魔物だと私よりしたですよ」
「そうなのか。じゃあ倒しといてくれ」
「無理だよ。あんな魔物怖くて戦えないよ」
ディリーはさも当然のように言ってのけた。
「そうだ、陽炎さん。さっき戦わなかったから戦ってください」
「いやいや、俺戦闘向きじゃないだろ」
「大丈夫ですって。いいからやってください」
「はぁ、仕方ないな。あんまり期待はするなよ」
陽炎は言われるがまま魔物の前に立った。すると魔物は加速をつけて狙って突進してきた。
(どうするかな・・・。本当に攻撃がないんだよな。仕方がない、1番倒せそうな方法でいく)
「”
すると鎖が地面から伸びてきた。それは魔物に巻き付くと魔物の動きを封じた。
(案外いけるな)
「”
陽炎はスキルで刀を作り出した。そしてすぐに構えた。
「いくぜ!”俺流おれりゅう・紅蓮斬ぐれんざん”」
そしてそのまま魔物は真っ二つになった。
「どうだ!これが俺の力だ!くくく・・・また俺の封印を解いてしまったよ」
そう言って陽炎は不敵に笑った。
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