第4戒 魔物も痛いのには弱い

 陽炎は静かにたんたんと話を進めた。日本であったことの全てを。そして話が終わった。話し終えたあとドリューアスの方を見ると泣いていた。


「んむっ!んむっ!」


「おいおい、泣くなよ。泣いていると可愛い顔が、台無しだぞ」


 そう言って、ドリューアスの頭を撫でた。そして、再び質問した。


「さぁ、ドリューアスもう一度聞く。今との俺の話を聞いて考え直すのもよし。そうでなくてもよしだ。ドリューアス俺の仲間になってくれないか?」


「・・・むむむんむんむむむんんむ」


(は!?何言ってんのかまじわからん)


 陽炎が困っていると、ドリューアスは舌で少しボールをずらして話した。


「私を屈服させて、その道に誘い込めたらいいよ」


「え、何言ってんの?」


「それくらいの覚悟を見せて」


 ドリューアスはそういうと、再びボールを口にくわえた。


(めんどくさっ!まぁ、やらないと出られないけど、なんかめんどくさい!)


「まぁいい、本気でやってやる。”生成せいせい”」


 陽炎は鞭を作り出した。そして、強い力で叩いた。━━それから5分程度でおしおきは完了した。


「はぁ♡はぁ♡しゅ、しゅごい♡こんなに気持ちいいなんて♡」


「・・・弱っ!」


 陽炎は思わずそう言ってしまった。そして、考えた。今ならあれが流行るのでは?と。


「ふふふ・・・これが俺の力、ジャッチメント・フェイトだ!」


「・・・?」


(・・・これ日本で一時流行ったんだけどな・・・)


「まぁいい、それで仲間になる気はまだないのか?」


「・・・なる。なりたい!ならせてください!」


「お、おぅ・・・。いきなりどうした?」


「うふふ♡あなたの力に一目惚れしちゃった♡」


(・・・やっぱ、めんどくさいわ。もしかしてこの世界のやつら全員ドMなのか?)


「そ、そうか・・・。それは嬉しいぞ」


「んっ♡」


 陽炎は呆れながらもドリューアスの近くに行った。


「それじゃあ行こうか」


「ちょっと待って。私魔物だけど大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。先に言ってしまったあるから」


 ドリューアスは顔を明るくすると陽炎の、近くまで来た。陽炎は自分の領域テリトリーを解いて、2人でおりから出た。━━だか、その後がさらにめんどくさかった。魔物を服従させたことで有名になった。ランクはいきなり1番上だったけど、どうやったのか聞かれた。さらに、試験に合格したとテムがきたが、隣のドリューアスを見ていきなり殴られた。・・・そしてそれから10分がたった。


「はい。これでドリューアスさんが陽炎さんの仲間になりました。あとは、他の魔物と間違えられないように首輪をつけてください」


「その首輪は形はなんでもいいのか?」


「はい。どんな形でも首につけてれば問題ありません」


 陽炎は首輪を受け取るとスキルで加工した。


「こんなもんかな・・・。これだと、周りに見せても問題ないな」


 陽炎はドリューアスの首に首輪をつけた。


「最後はお互いの名前を言うことでこの関係が成立します」


「名前?ドリューアスじゃないのか?」


「それは種族名であって、個体名ではないのです」


「そうなのか、じゃあ俺から言うよ。俺は久遠陽炎くおんかげろうこれからもよろしく」


「私はツリー、ディバイン・ツリー。こちらこそよろしく」


 2人は握手をした。するとディバインの手の甲で謎の紋章が光だした。光が収まると自分のステータスに強制的にパーティ設定されてあった。


「出来ましたね。そのパーティー設定は絶対外せないので気をつけてください。あと、注意して欲しいのが魔物をパーティ設定した場合、もしパーティメンバーが問題を起こすとリーダーの責任となりますのでそこも気をつけてください」


「あ、わかりました・・・」


 そんな話をしているとテムが言ってきた。


「ねぇ、どういうことよ?どうなっているの?ちょっと教えてよ!」


「うるさいな。今の流れで察しろよ」


 テムがキャーキャー言って怒っているのを横目に陽炎は改めて自分のステータスを確認した。するとあることに気づいた。自分のステータスが全然違ったのだ。ステータスは大体こんなものだ。


 <執行者>━━━━━━━━━━━━━━━━

 ・あらゆることを執行する者

 <スキル>

 ・死刑・拷問

 ・尋問・おしおき

 ・生成・加工

 ・ランダム救済・天罰

 ・領域・捕縛

 ・拘束・魔法想像

 <ステータス>

【体力】1000

【魔力】100000

【筋力】1000

【走力】1000

【知力】100000

【防御】1000

【耐性】1000

 <特性>

 ・おしおき効果上昇・魔法全属性適性

 ・超速情報処理・隠蔽効果上昇

 ・素材能力上限解放

 <状態異常>

 ・厨二病・ナルシスト

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「なにみてるの?」


 テムが尋ねてきた。しかし、陽炎は答えられなかった。なぜなら、自分のステータスが前見た時と全然違ったからだ。陽炎が尋ねられても固まっているとテムが覗いてきた。


「なにこれ!?全然違うじゃない!どういうこと?」


「いや待て、俺もわからん。だがこのステータスを見てみろ!これ最強だろ!」


「うん・・・そうですね・・・」


「そう・・・だね・・・」


 2人はなにか歯切れが悪かった。気まづい様な気まづくないような感じで返事をしている。


「おい、何か言ったらどうだ。言いたいことがあるんだろ!」


「いやさ、ほら・・・。陽炎さんのスキルってこう・・・なんか・・・」


 ・・・なんとなく察したぞ。


「陽炎さん・・・最強って言うより最恐なんですよね・・・」


「陽炎くんは最強で最恐で最凶だよね」


 テムがオブラートに包みながら言っていると、ディバインがはっきり言った。普通なら怒ったり落ち込んだりするのだろうが、陽炎は違った。そう、陽炎は厨二病なのだ。当然最恐とか最凶とかいう言葉はかっこいいから好きなのだ。陽炎は思わず喜んでしまった。


「なんで喜んでるんですか!」


「バレた?」


「バレます、分かります!そんな顔されたら誰でも分かります!」


 するとギルドの中の空気が変わった。なんだか周りの人が気まづい顔をしている。中には顔を真っ赤にしている人もいる。


「あれ、どうしたの皆?」


 テムがわかってない様子で聞いている。陽炎もわかっていなかったが途中で察した。するとテムの上司らしき女性が耳打ちをしている。


「ね、ねぇテムちゃん。多分皆気づいてなかったよ。この意味分かる?」


 するとテムは顔を真っ赤にして下を向いた。少し覗き込むと涙を流して泣いている。


「な、なぁ・・・大丈夫か?」


 陽炎が聞くとテムはキリッと睨んできた。実際陽炎は鈍感系ではない。なので、なぜテムの顔が赤いのかも分かる。だが、かける言葉が無さすぎてそれしかいえなかった。


「わ、私は・・・」


「ん?どうした?」


「私は、決してあなたに一目惚れした訳じゃないから!好きになったわけじゃないから!」


 そう言い放ってテムは泣きながらギルドを出ていった。ギルドの中は静まりかえって、皆かおを赤く染めている。しかし、そんな中に1人だけ例外はいた。


「ねぇ、なんでテムちゃんは出ていったの?ねぇ、どうしてよ?教えてってば。ねぇ、ねぇってば」


 ディバインは鈍感系だった。そのため1人だけこの空気に気づいていなかった。


「・・・やっぱこいつ、めんどくさいわ・・・」


 陽炎は思わずそう呟いてしまった。

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