第3戒 試験は必ず準備が必要
陽炎は朝早くギルドに来ていた。ギルドは夜の依頼などもあるため年中無休で空いているようだ。
「今日が試験の日。絶対合格しないとな・・・」
「いやいや、陽炎さん。来るの早すぎですよ。普通試験開始2時間前のとかなのに、なんで6時間前に来るんですか?今朝の4時ですよ」
「仕方ないだろ。夜は眠れないんだ」
「はぁ・・・せっかく今日陽炎さんにいいこと教えようと思ったのに・・・」
「なんだ?」
「え?それはですね・・・」
「待て!当てる」
(なにかいいことといったな。俺にとっていいこととは試験の合格だ。だが、試験を無条件合格なんて絶対無理だ。だとしたら・・・)
「テム、お前も受けるのか?試験を」
「え〜?なんでわかったの?」
「考えたらなんかこの答えになった」
「普通ならないよ」
━━それから4時間待った。ギルドの中は人がたくさん出入りをして受付の女の子達は昨日より忙しそうだった。そして、ついに試験の時間が来た。試験会場に行くと10人くらいの人がいた。すると試験監督らしき人が喋りだした。
「今から試験を開始する。まずは魔法からだ。右から順に打っていってくれ」
そういうと1番右の人が魔法を打ち出した。ちなみに自分は1番最後だ。しかし魔法か、やっぱ昨日修行しといて良かったな。魔法はなんでもいいのかな?なんでも良くなかったら終わりだな。・・・それにしても遅いな。何してんだよ。
「次の人!」
「あ、俺だ」
「では、魔法をあの岩に打ってもらう」
「質問があるんだが、魔法はなんでもいいのか?」
「まぁ、使えるならなんでもいいが・・・」
「わかった。”
岩に雷が落ちた。岩は綺麗に真っ二つになった。他の人に目をやると皆目を丸くしている。ここは決めゼリフがないとな。
「ふははは!俺の右目が疼く!まだ力を出てないというのに!」
再び他の人を見ると驚きの反応だった。日本だと痛い人だと思われ、白い目で見られた。しかし、今みんなは体中震えている。中にはおもらしをする人もいた。・・・ふふふ女の子のおもらしか・・・なんか良いな。
「お、お、お、おいお前・・・なんだ今のは?」
「ただの魔法だが、もしかしてダメだったか?」
「あばばばばば」
なんと試験監督は泡を吹いて倒れてしまった。━━それから新しい試験監督が来た。
「次は剣術だ!」
そして、次々に進んでいって自分の番がすぐに来た。
「魔法は凄かったが、剣術はどうかな」
試験監督は一気に距離を詰めてきた。普通ならこのまま終わりだろう。だが、厨二病を舐めるなよ!
「何!?」
陽炎は全ての攻撃を弾いた。試験監督は本気を出したのか、さらに早い攻撃を繰り出してきた。しかし、その攻撃も全て弾き試験監督に、質問した。
「なぁ、ちょっとした技とか使っていいのか?」
「魔法でなければいいぞ」
「それなら使わせてもらう!」
陽炎は一瞬で距離を詰めた。そしてそのまま剣を両手で握り繰り出した。
「”
陽炎は前に横向きに一閃した。しかし、その攻撃は弾かれそれと同時に試験監督は気を失った。
「そ、そこまで!」
「何が起こったんだ?」
「全く見えなかったぞ?」
他の受験者は口々に呟いている。すると、もう1人の試験監督が聞いてきた。
「い、一体何をしたんだ?」
「これか?これは、5回攻撃したんだ。解説するとな、最初の1回目は普通の攻撃で相手の注意を引きつける。その後、超高速の5連撃を相手にぶつける。それがこの技だ」
(この技は、たまたまテレビで見たアニメの技がかっこよかったから真似したらできたやつだ。成功してよかった)
「あ・・・が・・・」
「ん?何を言っている?これくらい普通だろ」
『普通じゃない!』
━━それからはある意味でカオスだった。防御力テストでは、ダメかと思ったが何故かいけた。どうやらステータスの数字を全て見間違えていたようだった。そのため、思っていたより防御力が強かった。精神力テストでは、厨二病のメンタルは強すぎて話にならなかった。その他も難なくクリアしていった。気がつけば周りのみんなは疲労の様子が見られた。
「あ〜、これで最後だ。このテストで魔物討伐に行っていいか、また最初のランクが決まる。1発で最高ランクもありうるからな。それでは、最終試験の内容を発表する!」
そして、説明が始まった。その内容は、好きな魔物を選んで退治するというものだった。魔物は、事前に捕まえていたものを使うらしい。他の受験者は皆弱い魔物を選んでいる。
(そうだな、なんか俺のスキルが通用しそうな、人が他のやつがいいな・・・。あ、こいついいじゃん!)
「ん?おい、まさかそいつを選ぶのか?」
「そうだが、ダメなのか?」
「いや、そいつはS級の魔物で討伐できたものはいない」
「そうなのか・・・」
「本当にいいのか?確かにそいつを倒せればいきなり最高ランクも有りうるが、倒せないとダメなんだぞ」
「倒さなくても、服従させたり、自分の仲間にしたりしてもいいんだよな?」
「そういうスキルがあるならいいが・・・まぁ、お前がやりたいならやっていいが」
「それじゃあやらせてもらう」
「お、おぅ・・・」
陽炎は檻の中に入っていった。その中には魔物がいた。その魔物とは・・・いや、魔物では無い。こいつは精霊だ。・・・気の精霊、ドリューアス。恐らくだが、ギリシャ神話のドリュアスと同じだろう。どうやらこの世界と日本は近いものがあるらしい。ま、テンプレだね。
「・・・誰?」
ドリューアスは話しかけてきた。檻の中に木で椅子を作って座っている。
「俺は陽炎。君と話がしたい」
「そう、あなたも私を・・・」
「あなたも?」
陽炎が疑問に思っているとドリューアスは手を前に突き出した。すると、地面から複数の木が生え陽炎に向かって伸びてきた。陽炎は生成スキルで空気の壁を作り防いだ。
「いきなり危ないね。話をしたいだけなんだけど」
「そう言って皆私に攻撃してきた。信じられない」
「じゃあ、どうやったら信じてくれる?」
「無駄よ。何をやっても信じない」
「そうか、なら服従させるだけだな。”おしおき開始だ”」
すると、陽炎の足元から無数の鎖が伸びてきた。鎖はドリューアスを拘束すると周りの景色が塗り替えられた。
「な、何?ちょっと外してよ!」
ドリューアスは怒って木をはやそうとした。しかし、何も起こらなかった。
「無駄だよ。ここは俺の領域テリトリーだから」
ドリューアスは驚いた顔でこちらを見るとすぐに睨みを利かした。
「とりあえずこれをつけてもらう。まずは俺の話を聞け」
そう言って陽炎はドリューアスにボールのようなものを加えさせた。
「ん〜!ん〜!」
「はぁ、やっと話ができるよ。・・・単刀直入に言うね。俺の仲間になってくれないか?」
「んむっ!?むむんむっむんむ!?」
「すまん、何言ってるかわからん。だが、なんとなく分かるぞ。なぜ、仲間にするのかだろ。理由は3つある。1つは、ドリューアスの力が役に立つから。2つ目は、ドリューアスが可愛いから。3つ目は、君が悲しい顔をしていたから」
そういうとドリューアスは驚いた。しかし、やはりこちらを睨んできた。
「むむむむんむむっむむんむんむむ!」
「だからわかんないって。ま、でも君が人間を信じないのはよく分かるよ。俺も同じだから」
「む?」
「気になるか?俺のことが」
ドリューアスは軽くうなづいた。それを見て陽炎は静かに語り出した。
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