第2戒 俺のスキルはかっこよくなかった

 陽炎達は街から出て、森の近くまで来ていた。


「あの、本当にどうしたんですか?」


「恥ずかしいからやめてください!あのようなことは!」


「え?どんなことですか?」


 すると女の子は嘘でしょと言わんばかりに驚いた。


「自覚ないんですか?」


「え?」


 女の子は残念そうに地面に四つん這いに倒れた。直ぐに起き上がると話を始めた。


「では、まず魔法を使ってみましょう」


「魔法?」


「そうです。”オープン”・・・これを見てください。このスキルのところに書かれてあるものが魔法やスキルです。ここに書いてあるものが使えます。ただし、魔力が残っている間だけです」


「へぇ〜、そうなんですね〜。それにしてもテムって言うんですね。あなたの名前」


「そっちは見ないでください!個人情報が書かれてあるんですよ!それに敬語も使わなくていいです!」


 確かに名前の下に18歳とか、体重とか書かれていた。


「てか、なんで敬語ダメなんです・・・ダメなんだ?」


「カッコがつかないかららしいです」


「なんだそれ・・・。俺好みじゃないか」


 テムはなんにもなかったかのように軽く流して話を進めた。


「では、陽炎さんのスキルを見せてください」


「良いけど、そっちも敬語はやめてよ」


「ダメです。わたしは冒険者じゃないんで」


「じゃあ、一緒に冒険者やるか?」


「それもいいです!ていうか早く見せてください!」


 陽炎はテムの勢いに気圧されながら見せた。


「なんなんですか?見たことないスキルしかないですよ。まぁいいです。1つずつ試しましょう」


「おーけー!」


(死刑はやめておこう。まずはこのいちばん安全そうなおしおきから行くか)


「えーと”おしおき”」


 しかし、何も起こらなかった。


「何か条件があるのかもしれないです。次のやつ試しましょう」


 ━━それから全部のスキルを試したが発動したのは生成、加工、ランダム救済、天罰だけだった。天罰に至っては威力が強すぎて少し焼け野原にしてしまった。


「こんなところですね。今はつかてえないものもいつか使えるようになりますよ。それに、レベルが上がれば違う魔法も覚えられます」


「そうならいいが・・・。これほんとに大丈夫なのか?」


「大丈夫です!のちのち条件とか探せばいいですから!」


 テムは力強く言った。だが、陽炎が言いたかったのはそういうことではなかった。


「いやそうじゃなくてだな、さっきのテムの魔法で森が大火事だぞ。いいのか?」


「え?・・・あ〜〜〜!やばいです!やばいです!”ウォーターボール”」


 テムは慌てながらも魔法を発動して鎮火を試みた。するとすぐに鎮火した。


「はぁはぁ、危ないところでした・・・」


 テムが疲れて座っているのを見ていると急に頭になにかが流れ込んできた。


(ん?おしおき・・・使用可能?なんだ、急に頭に流れ込んできたぞ。とにかく使えるなら使ってみよう。しかし、英称まで流れ込んできたな)


 そうして陽炎は頭に流れ込んできた詠唱を唱えた。


「えっと・・・”おしおき開始だ”」


 すると地面から複数の鎖と稼が出てきた。それは、すごい速さでテムを縛り手足を釣り上げてしまった。そして、周りの景色がなんだか青くくらい色に塗り替えられた。


(なんだ?何が起きているんだ?)


 陽炎が困っているとテムが話しかけてきた。


「ちょっと陽炎さん!何ですか、これ?」


「いや、俺にもわからん・・・」


「す、ステータスのところに書いてあります読んでみてください」


「わ、わ、わ、分かった」


 <おしおき>━━━━━━━━━━━━━━━

 ・対象が悪事を働いた時、詠唱することで自分の領域テリトリーに相手を閉じ込め拘束する。これは、おしおきが完了するまで外れない。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「・・・なんかこれ外れんらしい」


「えっ!?なにか方法は無いのですか?」


「ないこともないんだが・・・おしおきが完了したら外れるみたい・・・」


 陽炎が気まづい空気を受けながら小さく言った。するとテムは目が点になって動かなくなった。近づいて手を振ると、小さく何か言っていた。


「それじゃあ・・・私、おしおきされるの?痛いのやだよ・・・助けて・・・」


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!!」


 陽炎が何度も謝っていると、テムは目を覚ました。そして泣きながら陽炎にお願いしてきた。


「い、痛く・・・しない・・・で・・・ください・・・」


「う、うん・・・」


 陽炎は小さくそう答えた。だが、すぐに陽炎は気づいた。


(てかこれ、どうすんの?おしおきってどうやるの?あの時みたいに・・・。いや、あれがこの世界で受け入れてもらえるのか分からない・・・。また、日本にいたあの時みたいになりたくない・・・)


 陽炎が考え込んでいると、テムがか細い声で震えながら言ってきた。


「は、早く・・・して・・・ください。こ、怖いです」


(・・・そうだな、やってみないとわかんないよな)


「よし!やるぞ!」


 陽炎は勢いよく言ったが、手には何も無かったので手でやることにしたら、すっごく地味になった。そして、1発だけおしりを叩いた。


「いだっ!」


 それだけでテムが泣き出した。だが、まだ拘束具は外れない。さらにもう一発叩いた。


「いぎっ!」


 やはり何も起こらない。それから10発程度叩いた。


「いだだだっ!いぎっ!ふぐっ!いらいれす!やめれくらひゃい!」


 何をやっても何も起こらない。あるのはテムの悲鳴だけだ。そこでふと疑問に思った。


「おい、もしかして反省してないだろ。実は前にも1回森を焼いちゃいました的なことしただろ」


 陽炎は適当にノリで言ってみた。だが、テムはそっぽ向いて口笛を吹き出した。・・・こいつ図星か!


「反省しないと出られないんじゃないのか?ここは。出たいなら反省しろよ。じゃないと反省するまで叩くぞ。てか、痛くないだろ。俺の筋力パラメーター100だぞ」


 しかし、テムは泣きながら反論してきた。


「違い・・・ますよ。陽炎・・・さん。0を1つ見忘れてます」


 よく見ると筋力は100ではなく1000だった。


(あ、やっちまったな)


「ま、それとこれとは関係ないでしょ。ほら早く反省しなさい」


 ━━それからさらに100発叩いた。しかし、テムが反省することはなかった。


「うぇぇぇぇん!うぇぇぇぇん!」


「いや、泣くくらいなら反省しろよ!」


「だって、だって、反省したら自分が悪いことになるじゃん!」


 陽炎はそれを聞いて一瞬呆然とした。


「・・・おい、あと1000回は叩くぞ」


「ひぃっ!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!私が悪かったです!許してください!」


 するとテムの拘束具は外れ元の森に帰ってきた。そして、森の方を見て驚愕した。なんと、森が元に戻っていたのだ。


「これが・・・俺の力・・・。なんか、もっとかっこいいのが良かったな」


「十分強烈れしゅ・・・」


 陽炎の呟きにテムが泣きながら答えた。

 ━━それからまた、ギルドへと戻ってきた。


「いいですか、陽炎さん。あの技は試験では絶対に使わないでくださいね。魔物には効果がないみたいなので」


「わかったよ。ほかのスキルで頑張ることにするよ」


「では、今日は宿を取っておきました。この国ではギルドカードを見せると、タダで泊まれるのでお金の心配はしなくていいですよ。では、また明日ですね」


「そうだな、また明日」


 2人はそう言って別れた。宿につきひと休みすると陽炎は小さく呟いた。


「明日・・・か」

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