可愛くて、ごめん

俺の家は神社だ。

 そして、俺は巫女をやっている。

 女装は嫌いじゃない。

 似合い過ぎて困る。そういう才能があるんじゃないのか、とさえ思う。


 男が巫女をやることについて、うちの神社の神様は、どう思っているのだろう。

 まあ可愛いし、祟られるなんてことはないだろう。

 親も女装については何も言わない。母親の化粧品をもらって使った。

 メイクや女らしい所作も、動画や周りの人を観察して、身に着けた。



 ある日、よく神社に通ってくる男性からラブレター的なものをもらった。

「いつも、あなたの笑顔に救われています。良かったら連絡下さい」

 ラインのIDも書かれていた。

「どうすっかなー」

 悩む。


 ひと悩みして、あるアイデアが思い付いた。

「これで行くか」


男の姿で彼氏のフリ作戦。

 いつも通りの時間に男性は現れた。

 巫女の俺を探してるようだ。

「千鶴なら今日はいないぜ」

「へ? 誰ですか、あなたは?」

「千鶴の彼氏」

「か、彼氏がいたなんて⁉」

「だから千鶴はお前とは付き合えない」

「分かりました、残念です」

「ストーカーとかになるなよ」

「はい」

 とりあえずは、これで大丈夫か。

 これも俺の巫女が可愛過ぎるせいか。

 可愛くて、ごめんな。



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彼方のキャンパス 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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