友達追加
僕はスケッチのために時々、動物園に出かける。
人物画は苦手だが、動物を描くのは好きだった。最近は学校にも比較的しっかり通えているから動物園に行く回数は減ったが、中学の頃は本当に学校に馴染めなくて、よく動物園に逃げていた。周りにしてみればサボりにしか見えなかっただろう。授業に少し出ては気分が悪くなり早退というのを繰り返し、勉強もあまり出来る方でもなかったので、芹沢さんには迷惑をかけてばかりだった。何度か転校もしたし、その度に手続きやら引っ越しの手配を芹沢さんにやってもらった。
最初、芹沢さんが目を付けてくれた絵も動物を描いたものだった。
何を描いたのかは忘れてしまったが。
いつもの神社に寄る。
今日は葉桜を描こうと思う。
「こんにちは」
「こんにちは」
巫女さんと挨拶をし、描き始める。
「やっぱり上手ですねえ」
「あ、いえ、ありがとうございます」
「で、私達、妖怪バスターズの今後の活動ですが」
「へ?」
「妖怪バスターズの今後の活動」
「何ですか、それ」
「私達のコンビ名です。たった今、考えました」
「バスターってどういうことですか?」
「退治するって意味です」
「そ、それはあまり良くないかと」
「お優しいのですね」
「そうでしょうか……」
「で、どうします?」
「そうですね……、僕に出来ることなら協力しますが」
「ありがとうございます。また幽霊やら妖怪やらが現れたら連絡しますね」
「はい」
「ということで、はい」
巫女さんがスマホを差し出している。
「?」
「あの連絡先交換ですが」
「ああ」
僕もスマホを取り出し、くっつける。
「?」
「?」
「もしかして、連絡先交換の仕方をご存じでない?」
「ええと……」
「ふふ、あなたらしくて面白いですね。……このQRコードを読み取っていただいて、そうラインカメラを起動して……、そうです。友達追加で」
「ちづる」と表示される。巫女さんは、ちづるさんという名前なのか。
「何か送ってください」
「よ、ろ、し、く、お、ね、が、い、し、ま、す」
「はい、よろしくお願いします」
ちづるさんと友達になった。最近は、こんな風に友達を作るんだな。
「では、私はこれで仕事に戻りますね。ごゆっくり」
「は、はい」
書き上げた葉桜の絵は、何だか、いつもより華やかに見えた。
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