バスケ

次の日、学校にて。

体育の授業は苦手だ。

 運動神経も悪く、クラスに仲の良い人もいないので今まで全く楽しめた記憶がない。同じチームやペアを組まされた相手には「お前がいると邪魔なんだよな」と思われているに違いない。なるべく目立たないようにしたいのだが、自分の鈍さのせいで好奇の視線に晒されるのは本当に居たたまれなくなる。

 今日の授業はバスケットボールだった。チームは5人おり、野球などと違い必ずボールを触れなければならないという訳ではないので、まだマシな方だった。ボールを追いかけず適当に走ったり止まったりしていればいい。同じチームの人も僕なんかにパスを回す訳がないだろうと思っていた。

 試合時間も終盤になった頃だった。僕はいつも通りボールを目で追いつつ適当に足を進めていた。

「東雲!」

 突然、自分の名前が呼ばれ面食らってしまった僕は、自分に向かって飛んできたボールに反応できなかった。

 ゴン、と頭に強い衝撃が走る。

「っ、痛っ!」

 誰かが投げたボールは僕の頭に当たり、コートの外に出て行った。

「ちょっと、タイム! ……東雲、ごめんな。大丈夫か?」

 ボールを投げたであろう者が駆け寄ってきて僕の顔を覗き込む。ボールが頭にぶつかりはしたが倒れるほどでもなく大丈夫そうだったので、コクリと頷く。

「そうか。念のため後で保健室行って冷やしてもらってこいよ」

「……うん」

 僕の返事を聞くと、彼はまだ心配そうな顔をしていたが試合に戻っていった。

 そういえば、彼の名前は何だったか。同じクラスになって数か月、話したことはないと思う。今回のバスケの試合で同じチームに振り分けられ、ようやく接点ができたような関係だった。


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