巫女さん

今日も普通に学校が終わった。

学校の帰り道に見つけた神社に寄る。最近のお気に入りの写生スポットである。

 住宅地や繁華街から少し離れた、周りを木々に囲まれた社は何処か神聖な雰囲気を漂わせており、惹かれるものがあり時々通っている。僕にとって幸いなことに参拝客がほとんどいないのも、絵に集中できて良かった。

 鎮守の森の入り口である鳥居を潜り、手水舎で手を清め、参道を通る。絵を描く場所を借りるお礼として、心ばかりではあるがお賽銭も持ってきている。いつも通り参拝を済ませ、本殿の裏手の木々が深く生い茂っているところに、ビニールシートを敷き腰掛ける。


「こんばんは」

 黄昏時になり、絵も完成に近づいた頃だった。

「はひっ」

 突然、声を掛けられ変な声が出る。驚いて声のした方を向くと、そこには可憐な巫女さんが僕を覗き込むように立っていた。

「絵がとてもお上手なのですね」

「あ、いえ、ど、どうも」

 巫女さんと少し話した。

「すみません。ご参拝の方がいらっしゃったので戻りますね」

「あ、はい」


 黒いもやもやした気配を感じた。

 気配のした方をこっそりと見てみると、巫女さんと話している参拝客の男性に黒い動物霊のようなものが取り憑いていた。

「……スキ……スキ……、コッチヲムイテ……」

 男性の肩に乗ったタヌキのような動物霊の声が聞こえた。取り憑いている男性に恋心を抱いているようだ。

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