第十五回参加作品
月が綺麗ですね
理性を失い、全てを壊そうとした彼女を僕の手で終わらせた光無き十五夜は昨日、静かに幕を閉じた。
あの夜までは普段通りの彼女だったように思う。
彼女とは同級生で、同じ図書委員だった。
連絡先を訊くと、彼女は苦笑いして「メッセージアプリが苦手なんだよね」と言って、メールアドレスを教えてくれた。それをきっかけに仲良くなった。
あの日、理性を失っているだろう彼女に、たった一文、想いを込めメールを送った。
返信は来ない、なのに、返信を期待する、矛盾した気持ちで何度も受信フォルダを開いてしまう。
ふと、スマホの画面に【未受信のメールがあります】と、メールのアイコンが表示された。
心臓が激しく鼓動する。スマホを握る手が少し震える。更新ボタンを押すと、スマホが振動した。そして、そこには彼女の名前が差出人として表示されていた。
期待と恐怖が入り混じり、心臓が一瞬止まるような感覚に襲われた。手の震えがさらに大きくなる。
待ち続けたはずなのに、彼女からの返信を目にするのがこんなにも怖いとは思わなかった。
彼女の言葉が、静かに映し出される。
僕のメールを引用という形で。
「私、死んでもいいわ。
〉月が綺麗ですね」
END
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