追憶

 やっと完成した。ここまで来るのにとてつもない時間がかかった。

 僕は机の上に飾ってあるフォトフレームに目を向ける。

 それは夕焼けの中に談笑する三人の女の子が映っている写真。

 彼女達は小学校の同級生だった。だからといって今もなお交流があるかといえばそうではない。写真が撮られたあと間もなく死んでしまったのだ。当時は殺されたんじゃないかと話題にもなったが、結局未解決のまま時は流れていた。

 少なからず交流があった僕はその死を惜しみ、タイムマシンを開発することを決意し、そして、たった今紆余曲折を経てようやく完成した。

 長かったと大きくため息をつくとともに、心臓が高鳴っていた事に気付く。不謹慎ながらも少しワクワクする。

 フォトフレームの隣には刃渡り一五センチほどのナイフ。歯の部分の先端が赤黒く変色していた。

 それを眺め僕はにやりと笑う。

 ――――ああ、またこの手で。

 END

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