第六回参加作品

ピグマリオンはどこにいる

 僕は街へと続く線路を歩いていた。辺りは紅い花が咲き、遥か先にはビル群が立ち並ぶのが見える。『人間らしく』と作られたロボットである僕はいつの間にか機械の処分場に棄てられていたのだが、そこを脱出し、街へと向かっていた。

 人間では無い僕が人間になるためには何が必要か、今はまだ見い出せていない。『人間らしく』と作られたロボットなので、はっきりと思い出せない部分もある。それでもなお、思い出せるの中の一つは、博士や助手さん達から冷遇された記憶。僕は愛されたかったのだろうか?

 ふと、とある物語が思い出された。それはギリシャ神話のピグマリオンとガラテアの物語だ。ピグマリオンは彫像のガラテアを愛した末彼女は人間となった。なら愛されなかった僕は人間になれないのだろうか?

 ネガティブの思考が脳内を駆け巡る。いや待てよ。街に行けばもしかするとピグマリオンのような人がいるかもしれない。ただ目的もなく、街を目指していた僕にとって希望が芽生えた。

 物理的に軋む脚を動かしながら、僕は街へと向かう――――。

 END

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