ふたつのキーホルダー

僕と彼女しかいない高校の校舎裏。

天気は曇り。カエルの大合唱が遠くから聞こえてくる。僕にとって一世一代の博打の最中だった。

彼女はスクールカーストのトップに所属するいわゆる美少女と言っても良い人種。一方僕はカースト最下層にあたる部分にいる人種(だと認識している)。

もちろんつり合わないと認識はしているだが、勇気を振り絞って想いを伝えたかった。きっかけは色々あるのだけれど、決め手は彼女がペンギンのキーホルダーをつけていた事だった。

小学生の低学年の頃転校した子とキーホルダーの交換をした。僕はペンギンのをあげ、その子からは左手を上げた招き猫をもらった。彼女がつけていたのがそれにそっくりだったのだ。

「好きです」

付き合ってください、を言えなくて、声が震えてズボンの太もも辺りを掴む。スボンがクシャとなり、招き猫のストラップが揺れる。

彼女を見ることが出来なくて、怖くて目を瞑る。それまでうるさかったカエルの大合唱がいつの間にか聞こえなくなっていた。

突然身体に重さがかかる。かちっと音がした。それはふたつのストラップが大きく揺れぶつかった音のような気がした。

END

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