第二回参加作品
本物に。
『不気味の谷現象』という現象を聞いた記憶がある。
確かロボットが人間に近づきすぎると嫌悪感を抱くようになる、みたいな感じだった。この言葉を聞いたとき、ギリシャ神話のイカロスの話を思い出した。彼は蝋で固めた羽根で太陽を目指し、そして、墜落した。
色んな解釈が出来るとは思うけど、この二つは僕には本物に近付きすぎると、ろくでもない目に遭うという教訓に思えてならない。
前置きが長くなったが、僕の名前はPA6524。
人間によって人間らしくあれと開発されたロボットだ。姿形はもちろん、人間に近い忘却機能やはっきりと物事を思い出せない機能もついている。
気がつくと僕は棄てられていた。四辺を壁で囲われた機械の処分場に。しばらくは呆然としたものの、色々思考を巡らせた結果、一つの答えに思い至った。
本物にーーーー人間になる、という答え。本物に近づいてろくでもない目に遭ったとしても、本物になれば僕の棄てられた意味を、そして、生まれた意味を見いだせるのではないだろうか?
ならば、ここで腐れている暇などない。
まずはここ脱出しなくてはならない。
そう決意して、僕は壁を登り始めたーーーー。
END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます