第3話 勝手にペットにされた…

はい、猫です‼︎


 元々は29歳の冴えない社畜男(人間)が、転生してファンタジー世界(だったらいいな)で猫になったんだけど、転生後数分間で3回死んで、死に戻りして4回目です(えっ?もうそのくだりは要らないって?まぁ挨拶みたいなもんだと思って流してくださいよ、あはは)


 つい先程、魔法で木の上から吹っ飛ばされて気絶し、美女冒険者(たぶん)に治療されて、今目覚めるところです。さあ目を開けますぞ‼︎(ワクワク)


 「あああ‼︎ 目開けたよ‼︎ おめめもかわいぃぃぃ‼︎」


…。


 「あわわわ、こっちみてるぅ‼︎ 目が合っちゃった‼︎ パチクリおめめがかわゆいぃ」


 …。想像してたのと違いますね、はい。


 「ちょっと、ユリィさん。邪魔です。まだ治療途中なんで、あっち言っててください」


 あ、こちらの方も想像してたのと違います、はい。


 「ちょっと、邪魔ってなによ〜‼︎‼︎ 私は今日1番の功績者よ〜‼︎‼︎ もっと敬ってよ〜‼︎‼︎ てか、この子ほんとに超かわいいわぁぁ‼︎‼︎ かわゆいかわゆい‼︎‼︎」


 「うるさくて気が散るんです‼︎ 治療速度が落ちるんですってっ‼︎ もぉぉぉ‼︎ リーダーお願いします。ユリィさんをしばらくどっかにやってください‼︎」


 「うむ、承知した」


 あ、もう1人いた…。うっ…チラッとしか見えなかったけど、これまたイメージと違うと…。

 あ、あのうるさい子は連れていかれました、はい。


 「いい子だから、まだ動かないでくださいね。もう少しで治療が終わるからね」


 あ、はい。じっとしてます。そしてその間は再び目をつむり、状況をあなたにお伝えします。あ、そこの『あなた』です。

 え…っと、まず、美女冒険者じゃなかったです。いや、『じゃなかった』と断言していいのか分からない。俺の基準じゃあ彼女達が美女かどうか判別出来んので…。だって人間じゃないもん。よし、順番に解説(分析)しよう。


 まず、かわいいを連呼する女。ん?異星人?顔が緑なんですけど。まじデカルチャー。あ、でもちょっと薄めの緑かな。植物系?あ、顔立ちは整ってる。肌の色が人間色なら俺がいた元の世界ではアイドルになれそうな感じ。あ、でも耳はちょいトンがってるな。


 そして2人目。ルビィと呼ばれてた、今俺を治療してくれてる子は…。うん、これは分かる。ファンタジーによく出てくるやつ『リザードマン』だと思う。色は緑と青の中間…いやちょい青味が強いか、ちゃんと服は着てる。


 そして、リーダーと呼ばれていた子は…チラッとしか見えなかったけど…チラッとで充分に分かる人外感。だってツノ生えてたもん。あれかな…鬼ッポい感じ…えっと『オーガ』ってやつか?あの『ユリィ』ってウザい子…もとい、俺を可愛いと言ってくれた子を軽々と持ち上げてどっか連れて行ったし、めっちゃ力持ちっぽい…前衛かな?


 と、こんな感じでした。あと俺の設置場所、膝枕じゃなくて岩の上。ま、いいけどね、はい。


「おまたせしました。もう大丈夫、よく頑張りましたね。治癒の間、じっとしてくれててありがとうです」


 ▷「にゃぁん(治療してくれてありがとう)」


 俺は起き上がってリザードマンのルビィさんを見上げてお礼を伝えた。ま、『にゃぁ』しか言ってないから伝わってないだろうが。


 「あ‼︎ 治療終わったんだ‼︎ さすがルビィちゃん、早いね‼︎」


 「あなたが邪魔しなければもっと早かったんですよ…」


 緑女が戻ってきた。その後ろにリーダーと呼ばれていたオーガ(たぶん)さんがいる。


 「それにしても、見たことのない生き物だな、ビックボアに襲われていたところを見ると、戦闘能力はそう高くは無いのだろうが…」


 「私の、水式治癒魔法で治療が出来ましたから少なくともアンデットや闇の属性に位置するものではありません」


「ちょっとぉ‼︎ 2人とも分からないの⁈ もぅ〜っ‼︎ こんなに可愛らしい生き者に私たちを攻撃してくるような凶暴性があるわけないじゃない‼︎ 」


 俺の頭上で3人(人っていっていいのかわからんが)が俺を覗き込んで俺の事で討議している…。

 てかこの世界には『猫』が存在しないのか…てっきり全世界共通のアイドル的生き物だと思ってたのに…まあとにかく、木の下にいた俺を3回も食った野獣(あ、ビックボアって言ってたな)を倒してくれたのは、彼女たちで間違いないようだし(俺も巻き込まれて吹っ飛ばされたが)とにかくお礼を言わないとな。


 ▷「にゃ〜ん(助けてくれてありがとう)」


 「ぎゃわわわわわわわわ‼︎‼︎ ちょっと聞いた‼︎ 今のかわいい声‼︎ きっと私たちに『助けてくれてありがとうございます‼︎ このご恩は一生忘れません。私をあなた方の仲間に加えてください』って言ってるに違いないわ‼︎ 仲間にしましょう‼︎‼︎」


 …。何を言ってるんだ?このウザ緑女…。


 「いや、どう考えてもそこまで言ってないだろう。あの短い一声じゃあ…」


 うむ、リーダーさん。その通りです。


 「はぁ…。こんなのがうちのエースでA等級冒険者なんて…」


 お、やっぱり冒険者なんだ‼︎ よっしゃ来たファンタジー‼︎ てかA等級ってレベル高そうだな。


 「ルビィ〜ッ干し肉団子出して‼︎‼︎」


 「団子じゃないですけど…はい、出しましたよ」


 緑女は白い巾着袋を受け取ると、その中から1センチ角の茶色い干し肉を数個、手の平に取り出して俺に差し出した。


「さぁ、これを食べて私たちの仲間に加わりなさい‼︎」


 …。何これ? きびだんごの代わりっすか?


 「さあ、早く‼︎ 」


…。まあお腹は空いてるし、食べ物もらえるのはありがたいから、食べようか…。


 ▷パクッ…モグモグ。


 あ、うん。見た目そのまま。干し肉ブロック、保存食かな?何の肉だろ?ちょっとクセがあるけど、結構美味いな。


 ▷「にゃん(ありがとう、美味しいよ)」(いちをお礼は言わないとな)


 「よし‼︎ これで君は私たちの仲間よ‼︎ んじゃ仲間になった証にこれをあげるわ…。あ、ねぇ、リーダー、チームプレートの予備ありましたよね?出してくださいな‼︎」


 「リーダー…またユリィさんが勝手な行動を取ってますよ…」


 「あぁ…。…まあ害のある生き物ではなさそうだし、未登録種か、外から持ち込まれたか…なんにせよこのままここに残していく訳にはいかんだろう」


 「リーダー早くぅ‼︎ あ、プレートはこのリボンに通してください‼︎」


 緑女は、自分の髪を束ねていた赤いリボンをリーダーに差し出した。受け取ったリーダーは、腰袋から取り出した銀色の三角形プレートの、穴が空いてる部分にリボンを通して、俺の首にくくりつけた。


 「さぁ、これを首に付けたら私たちの仲間だよっ…と。うわわぁぁぁ超似合う‼︎ かわゆい‼︎‼︎」


 …。首輪された。何これ…俺、この子達のペットになったの?


 「あの、リーダー…この子、明らかに嫌そうな顔してませんか?」


「うむ…まあ、魔法で木から吹っ飛ばされて目が覚めたら巨大生物に囲まれて、首にリボンを巻き付けられて…困惑するだろうな…まあ、とにかくそろそろ動こう。換金所が閉まる前に街に着きたい」


 「そうですね、今日はビックボアを8体も倒しましたしね」


 「よし‼︎ じゃあ早く街に帰ろう〜‼︎ さ、おいで、抱っこしてあげるぅ〜‼︎」


 お、おおっ…‼︎

うほっ…これはいいかも…。


 俺は、緑女に抱きかかえられて森を抜け、街まで行くことになった。へへへ…柔らかい。幸せにゃ…。


◇◆◇◆


 と、まあこういう感じで俺の異世界での生活が始まりました。てか最初の3回死亡って…必要?って感じですよね⁈


*********


名前: 西島勇気

種族: 猫(たぶん)

特殊能力: 死に戻り(たぶん)

その他: なんか勝手にペットにされた

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