死なずの魂、家に縛って最強魂

side out


 紅い月が空に揺蕩う。

 時間は夕方。遍く全てを照らす太陽の残照が降り注ぐ下で人々はそれを見上げる。


「これは……」


 何かが起きる予兆だ、と土御門 晴明は考えた。

 陰陽庁長官として様々な怪異を見て祓ってきた土御門は、この手の嫌な予感が的中することを知っている。


「太陽と紅い球体。いや、アレは月か? となると、まさか空亡か?」


 百鬼夜行の終わりのソレ。陰陽師なら誰でも知っている知識だが、百鬼夜行が最後に確認されたのは今からおよそ百年前の話だ。

 ――彼の勘は遠からず当たっていた。

 しかし、これは百鬼夜行ではない。この世界でしか生きた事のない人々は知らないが、あの紅い月は異世界の孔だ。当然流れでるのは見た事のないバケモノである。


「何だアレは!?」


 土御門の人並外れた見鬼が捉えたのは呪力とはまた別のチカラを宿したナニカだ。それと同じチカラを宿したバケモノが突然街中に現れ、人々を襲っている。

 鬼、巨人、悪魔、果ては竜まで……。

 響き渡る絶叫と倒壊するビル群。

 ――今、ここに地獄が顕現した。

 何のチカラもない人間は踏み潰されあっさりと死していく。その魂を糧にバケモノはさらなるチカラを得るのだ。よって魂は輪廻に還らず死しても救いはない。


「マズイぞ、コレは……っ!」


 すでに陰陽庁から陰陽師を派遣している。引きっきりなしに鳴り響く通知音はお偉い方の回線と部下からのソレだ。前者は無視で後者を取った。


「加茂か、そちらの状況はどうだ?」


『京都はご先祖様達の結界があるんで大丈夫ですわ。ただ外に出たらバケモノがうじゃうじゃいて手が足らんですね。怪異でもないアレらは何なんですかね?』


「わからん」


『さいですか。紅い月も妙ですし、東京の方はどうですか?』


「凄まじい数だ。推定だが、鬼や竜、他にも未知のバケモノが暴れ回っている」


『竜? こっちは鬼と化け狐ばっかりですね。――となると場所によって種類はまちまちか……。他の地方はどうです?』


「少し待て」


 通知を確認する。


「ああ、クソッタレ。全国各地同じ状況だそうだ」


 つけ加えれば、と土御門は続け言う。


「海外でもこの百鬼夜行もどきは起きているようだ」


『マジかー』


 軽い言葉とは裏腹に、加茂は絶望感に膝をつきそうになる。


「仮の名として百鬼夜行だ。お前も人々を守る事に専念しろ。私もこれから戦場に出る」


『気をつけてくださいよ。呪術は問題なく通じますが近代兵器の効きは微妙みたいなので』


「私は陰陽師だ。近代兵器は使わん」


 頑固っすね、とおちゃらけた声が電話口から聞こえた。

 しかし、すぐに真剣な声音に変わる。


『長官、ご武運を』


「ああ。お前も」


 そうして土御門は庁舎を出て部下を引き連れ戦場に出る。

 人々の悲鳴とバケモノの奇声。荒れた街中に火の海と黒い煙。不愉快だ、と土御門は暴れ回るバケモノを遠目に顔を顰める。


「私は貴様らを祓いに来た」


 別段宣言する必要はないが久しぶりの戦場だけに、自然と口から出た。それに意味を持たせるのなら、自らと仲間を鼓舞する為の言霊としてだろう。

 

「ふんっ、人外どもめ」


 当然バケモノに伝わるはずもなく、赤鬼が巨体を揺らして迫ってくる。土御門は部下を下がら練り上げた呪力を解放する。


「――臨兵闘者皆陣列在前。今は亡き護国の英霊よ、人々を守護せよ!」


 土御門秘伝の特式。その効果は数多の式神にして、かつての土御門家の長達である。当然彼らは意志を持って各々陰陽術を使える。対価は莫大な呪力だが、土御門 晴明にとって問題なく支払えるものだ。


『『『それは陰陽五行のうちの水。火を消し生命を育むモノ――急急如律令。清流よ、闇を禊祓!』』』


 常勝不敗。陰陽庁長官にして誉ある十二天将が一人――いや、歴代十二天将の郡。

 ゆえに、この場において負ける事はあり得ない。

 


____________________________

DATA

土御門 晴明(はるあき)

白髪の似合う初老の男性。

陰陽師としての最高位である十二天将の一人。陰陽庁長官。

特式 英霊召喚。効果は読んで字の如く。

呪力量オバケ


加茂

胡散臭い茶髪の男性。

陰陽師としての最高位である十二天将の一人。

晴明の懐刀でもある。



呪力量MAX比較

一般人0

並陰陽師30

そこそこ陰陽師50

すげぇ陰陽師75←蔵之介ここ。

規格外陰陽師100←オバケlevel。


注意 呪力量=最強ではない。


陰陽庁舎

ぱっと見ただの豪邸。人避けの結界が張られているため一般人は何の違和感も持てない。


特式

特別固有術式の略称。

個人によって詠唱も能力も異なるが、基本的に親族は大体同じモノ。


簡式

簡易通常術式の略称。

かつて特式を持たないモノと陰陽師の神にあたる人物が編み出した誰でも使える術式。

必要なモノは、呪力と定められた道具と詠唱。

基盤的なモノは彼らが作ったので、呪具制作の天才なら簡式を新たに作れる。


世界観

陰陽師の仕事は怪異を祓うこと。表に取り上げられる事はない。国のお偉い方や一部の富裕層と提携している。


御三家

土御門。

蘆屋。

草薙。

式神の土御門、呪の蘆屋、剣の草薙。


暗黒事変

紅い月と魔物の出現。


紅い月

異世界の孔。


魔物

異世界の生物。


スキル

異世界の特式みたいなモノ。暗黒事変1日目を乗り越えると女神様がプレゼントしてくれる。


ゲーム主人公

異世界転生帰還者。十六歳。

逆境でこそ光り輝く。性質がドM。成長率∞だが、今はlevel1。

武器は剣。


ゲームメインヒロイン

犬神 ミコノ。

十六歳。

目の前の負傷者絶対治してやるウーマン。結界と治癒術の使い手。


主人公

蔵敷 蔵之介

転生者。

二十歳。

特式 アイテムボックス=蔵闇。

呪力バカ。

転生特典 空亡。

手持ち式神一体。


犬神 有栖

メインヒロインの姉。

十七歳。

特式無し。呪力無し。陰陽師の家系では珍しい。

ゲーム死亡キャラ

ゲームスキル ゾンビ。超再生。感染。


魔王。

異世界の魔王。


女神

イシュタル。

人類の希望。人類の救世神。チカラのない人類にスキルを配布した神さま。


実際は、汚れきった人類に失望した系神様。

闘争こそヒトの魂が磨かれると信じている。異世界から人間と魔王を招待した。

ゲームのリセット感覚で世界を何周もさせている。本神は洗濯だと言ってる模様。

テコ入れで蔵之介を招待した。


to be continued

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紅い月に揺蕩う王で死なずの稀人 サボり蟻 @Orca596

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