第4話 イロトリドリ

「彩、この花、鮮やかな黄色で可愛い!」


「ここ、オレンジだ」


「今、めっちゃ青って感じ!」


 明季は自分の世界の見え方を彩に打ち明けてからは、積極的に彩に見えた色を伝えるようにしていた。それが物であっても、景色であっても、感情であっても、彩の見ている世界に少しでも色を差したかったからだ。




 明季と彩は買い物などを終え、帰路についていた。


「雨、降ったみたいだけど丁度建物の中にいる時でよかった」


「そうだね! あ! 向こうに虹が!」


 明季が指さした空に彩は何も見つけられなかった。


「どんな感じ? 綺麗?」


「うん、綺麗だよ。こんな感じで架かってる」


 明季は彩の後ろに回り、自分の右手で彩の右手を持ち、彩の人差し指で虹をなぞった。


「虹色って不思議だといつも思うんだ」


「どうして?」


「だって色々な色が連続しているのを虹色って言うでしょ? それは虹色っていう一つの色じゃない」


「そうね。色は沢山混ぜると黒になるもの」


「そう考えたら黒って一番鮮やかな色なのかもね」


「それなら私は幸せね」


「……一度だけ虹色を見たことがあるんだ。多分、あれが本当の虹色。上手く言葉に表せないけど、何よりも悲しそうで、何よりも綺麗だった」


「へぇー。いつ?」


「……秘密! いつか彩の世界に色が着いて、彩が虹色だと思うものを教えてくれたら俺も教えるよ」


「望み薄ね。……けど明季が色を教えてくれるなら、いつか私の世界に色が広がるかも」


「俺は信じているよ」

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