第5編 歌

歌うことが好きだった

今ではそれすら本当かわからない


もう歌うことが苦しくて

歌っても歌っても

絶え間なく流れてくる音符に

息を止められて

苦しいと言う間もなく

流れる音符


歌うことが苦しくて

やめてしまえばいいのだけど

なんだか死んでしまいそうな気がして

それでもやっぱり苦しくて

やめることが恐怖でしかなくて


歌い続けて

喉が枯れそうになるけれど

もうわたしには歌うことしかできなくて

歌を失くすと何も残らない気がして


涙が溢れて何も見えなくても

乾燥して喉がからからになっても

やめられない

甘くて苦い毒を飲んで

犯されながら今日も歌う

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