異変
第13話 自己暗示
「できました! こんな感じですが、いかがでしょうか。」
「ありがとうございます。意識して髪型を変えてみるなんて初めてで……。なんだか生まれ変わったような気分です……!」
「それは良かった! 次来るときは、彼女さんとのお話の続き、是非お聞かせくださいね!」
「ですから、まだ彼女じゃありませんよ……。でも、次はもしかしたら良い報告ができるかもしれません。」
「それは楽しみです! ご予約の際にご指名いただければ、また今日みたいな感じでカットさせていただくことも、新しい髪型に挑戦するのをお手伝いさせていただくこともできますから、今後とも
──帰り際まで丁寧に接客していただいて、ありがたい限りだ。次回からもこの方に定期的にカットをお願いしようと思い、改めて名前を確認するため、彼女の胸ポケット付近にある名札に目をやる。
店を出て、雲一つない夏空の下で伸びをする。長時間座りっぱなしだったので、身体の節々が音を立てて
◆◇◆
──午後の講義も全て終了し、大学を離れ家路についた僕は、駅構内に設置された緑色の時計を確認すると時刻は20時30分を指していた。自宅の最寄り駅の改札に向かう階段に一番近い車両を逆算して、いつも通り先頭から3番目の車両に乗り込み、座席の一番端っこに腰かけて電車の揺れに身を任せ、お気に入りのワイヤレスイヤホンを鞄から取り出そうとすることもなく、ただ心地良い疲労感と共に物思いに耽る。
月曜日から立て続けに巻き起こった自身と、それを取り巻く環境の変化について振り返りながら、激動の1週間を過ごしたものだと僕は
──
僕は帰宅した後、一通り寝支度を調え、
◆◇◆
土日を跨いで8月二度目の月曜日が訪れる。普段なら
僕は洗顔も兼ねて軽くシャワーを浴び、歯を磨くついでにブラシで
出発前に、これまた先日購入したばかりの香水を2プッシュ身に
その後、通学中はもちろんのこと、大学に到着してからでさえ僕は許斐さんのことばかり考えていたため、正直言って1限の内容は全く頭に入っていなかった。というか、もはや僕の頭には、彼女へどのように思いを伝えるべきかということだけがこびりついて離れなかった。もしかしたら最悪の結果もあり得る。彼女は地元の高校でさえ、
一度悪い考えが過ると、途端に際限なくマイナス感情が脳内を
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