第7話 自己陶酔-3
すっかり冷めてしまったミートソースパスタを一口食べてから改めて切り出す。
「どういう意味ですか?」
僕は高校の入学式で在校生代表として演説を行った
「どういう意味も何も、私は
「でも、あの時許斐さんは確かにごめんなさいって……。」
「あぁ、あれはどのみち私はもう少しで卒業しちゃうし、都内の大学へ入学が決まっていたから少し疎遠になって、いろいろと不便をかけることになるかもってことを伝えるための
──そうだったのか。僕は元々良い返事など期待していなかったからか「ごめんなさい」の一言を聞いた瞬間に勝手に諦めをつけて、思考が停止した状態でその先の言葉を勝手に想像し、これ以上聞きたくないと現実から目を
「それにしても驚いたよ。私たちの母校からは結構距離がある場所だからね。まさか同じ大学で、同じゼミで再会できるとは夢にも思わなかったよ。」
「否己くんはあの後そうですか、って一言つぶやいて帰っちゃうもんだから、遠距離になるのは嫌だから逆にお断りされちゃったのかなって勝手に
「やっぱり否己くんはちゃんと話聞いてくれてなかったんだ……。確かに今思い返すと、どこか上の空だったなーとは思ったんだよね。」
「本当に、申し訳ありませんでした!!」
──もはや全面的に、100%僕が悪い。弁解の余地もない。なんて情けないことだろう。
「いやいや! いいんだよ! でもまさか否己くんも同じ大学を志望してたとはね。」
──世間的にはそこそこ名の知れた私立大学だ。確かに偶然だが、在り得なくもない話だろう。
「やっぱり頭いいんだね! いや、私も通っている大学だから、その言い方だとなんか自慢っぽくなっちゃうか。」
「僕は一般入試ではなく推薦入試で合格しました。あんまり頭の良さは関係なかったかもしれません。」
「推薦入試の方がレベルが低いなんて言うのは時代錯誤な考え方だと思うよ?小論文とかはある程度の基礎知識と文章構成の上手さが求められるし、面接とかでもきっと
──地方の三流高校から都内の有名大学へ推薦入試を経て合格した時には、運だのまぐれだのと
それにしても、いろいろと誤解が解け、お互いに抱えていた多年の疑問が氷解するうちにようやく味がはっきりと分かるようになったが、このミートソースパスタはなかなかに美味い。惜しげもなく盛られた合挽肉がトマトベースのソースと見事なハーモニーを奏で、アルデンテのパスタとよく絡んでいる。
「ありがとうございます。それにしてもこれ、美味しいですね。」
「そうでしょ! 私はここに来るときはいつもこれを頼むんだけど、全く飽きずに食べられるんだよね!」
セットのピザトーストも食べ応えがあって具沢山だ。
「やっぱり、5年ぶりに再会したけど、否己くんの口下手だけど誠実な感じとか、あの時から変わってなくて安心した。」
──そんな風に思ってくれていたなんて。僕は許斐さんの言葉に
「もし許斐さんさえよろしければ、あの日の埋め合わせ、させてくれませんか……?」
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