第4話 自己紹介-2
思い起こせば、今日は1日中頭がまともに働いていない気がする。いや、今となっては頭が冴渡って
「──今回は初回講義となるので、それではまず、一人ずつ前に出て簡単に自己紹介を──」
一体あれは何だったんだ。彼女は何を言いかけていたんだ。
「──ありがとうございました。それでは次に──」
そもそも彼女について僕は何も知らないし、見たこともないはずだ、よな?
「──最後に、
「否己くん!」
「否己くん、呼ばれてるよ……?」
どうやら
「今、みんな軽く自己紹介をしてて、否己くんが最後の番だから。」
そう今僕の心を惑わせている張本人である彼女に伝えられた。
「あ、ありがと、ございます。」
少し
──というのも、僕には外見上のコンプレックスがいくつかある。顔面の出来がどうとか、そんなことはどうにもならないことだし、何より僕を産んでくれた両親に対して失礼な感じがしてあまり言い訳にしたくはないが、
それよりも気にしているのは、僕の170cmにも満たない身長である。それこそどうしようもないことだし、なるべく気にしないように生きてきたつもりだ。しかし、数少ない高校時代の友達からも身長の低さをからかわれることはあったし、世間はことあるごとに何かと身長を話題にして僕に忘れる機会を与えてはくれない。おかげですっかり人前にでて
などと脳内でいつものような
「皆さんはじめまして。法学部環境法学科2年生の
──
サッカーについても、僕は3歳のころから父親の
そもそも、何かミスする度に怒鳴り散らされる体育会系の人間関係があまり得意ではなかったというのも一因だ。やはりスポーツ選手として大成する人というのはああいう重圧に耐えるガッツを備えているものなのだろう。そこまでの熱量はなく、それでも
──皆さんと仲良くなれればいいなと思っています。この言葉にも
形式上の拍手喝采と共に、僕は誰とも目を合わせないように自分の元居た席へと戻ろうとする。直前で顔を上げると先程僕に声をかけてくれた彼女と目が合う。──忘れていた。自己紹介の緊張で彼女の存在を関心の
「へぇー、知らなかったな。否己くんって結構多趣味なんだね。」
そう小声で僕にだけ聞こえるように自己紹介の感想を述べてくる彼女に対して、僕は「はぁ、そうですね……」としか返せなかった。
全員分の自己紹介が終わったということで、教授がゼミの今後の予定などについて説明を進める。どうやら初回講義ということで、今日は本格的な授業をする気はないようだ。そして彼女は、何事もなかったかのように教授の話に耳を傾けている。
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